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恋の花し  作者: 犬犬太
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家に帰る道を一輪の花を手にぼんやりと歩く。結局の所、はぐらかされた様だ。

「チューリップの花言葉は思いやりです」

店員の目線が少し下がっている。

「それだけですか」

客とのやり取りで、「愛の表現」がこの花の花言葉だと知っている。それでも、別の花言葉を教えられた。

それからは形式的な言葉のやり取りだけで店を出た。

店員の表情がどこかぎこちなかったから、もう俺の気持ちに気が付いているのかもしれない。困る、というより気持ち悪いよな、普通。せめて誰もが振り返る様なイケメンだったら良かったかもしれないけど、俺はどこからどう見てもうだつの上がらないおっさんだ。

もう、やめた方が良いのかもしれない。でも、簡単に諦められるものでもない。せめて、花を買う事だけは許してもらいたい。もう、花言葉を訊くのは辞めるから、これからはひっそりと愛とか恋をうたう花を買おう。


金曜日、いつもの様に仏花を求め花屋を訪れた。先日の事もあったのであまり良い顔はされないかと思っていたのに、あのぎこちなさはどこへやら、満面の笑顔が俺を迎えてくれる。接客って、嫌な相手にも笑顔を向けないといけないから大変な仕事だな、なんてぼんやり感じながら、向けられる笑顔にほっとして喜ぶ自分がいる。

「お供え用ですよね」

と、初めから決めていたといわんばかりの手際の良さで花を選んでいく。赤と白と複色のスプレーマム、そしてスターチス。普段なら俺がたまには違う花も入れようかとでも言わなければ菊以外の花を使うことは無かった。不思議そうに眺めていると、スターチスも仏花にはよく使われるんですよ、と言って、手を止めることなく花を組み上げる。お待たせしました、と既に簡易包装まで終えた花を目の前に置かれる。いつものやり取りとは違う流れと、笑顔なのにどこか硬い表情の店員。最初の笑顔はただの反射だったのだろう。あの笑顔も見せてはくれないのかと落胆しつつ支払いを済ませ、店を出る。ふっ、と息を吐き落ち込みながらも自業自得だなと思う。それでも俺はあの場所へと通うだろう。笑顔が見れなくても、姿だけでも、声だけでも聴きたいから。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

二人の話はまだこれからなので応援よろしくお願いします。

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