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恋の花し  作者: 犬犬太
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どうしたらあの花屋に行く時間を増やせるだろうか。どうしたらあの店員と会話出来るだろうか。

自分の研究に必要な資料を探そうと、図書館内を歩く。研究内容を考えているその合間にもあの花屋の事、店員のことを考えてしまう。研究以外でここまで一つの事を考えているなんて、生まれて初めてかもしれない。しかも、他人のことをだ。学生時代に付き合っていた彼女相手でも、ここまで考えなかった気がする。

貸出カウンターへと向かう途中、ふと目に付いた園芸の棚を何とはなしに眺めると花言葉という単語がいくつか目に留まる。

手に取り、ぱらぱらと菊のページを探す。菊単体だけでもいくつか有るのに、さらに色別にもあるらしい。赤い菊は「あなたを愛しています」。白い菊は「真実」。黄色い菊は「破れた恋」。菊だけでも愛や恋についての言葉が並ぶ。ほかの花のページも適当にめくるだけでもたくさんの愛や恋が溢れていた。

これを取っ掛りに何とか出来ないだろうか。買う度に花言葉を訊ねるにしても、基本的に菊と榊しか買っていない。それだけでは良くて二、三回しか持たない。それじゃあだめだ。もっと何度も使えないと。それに、これだけ愛や恋が有るんだ、どうせならほんの少しでいいから、俺の好意も伝えたい。あの花屋で花を買って花を贈るのも変だ。かといってほかの花屋で買うのも有り得ない。あの花屋で花を買って、俺の気持ちをほんの少し伝えたい。

だったらこれはどうだろう。花言葉を事前に調べ、愛や恋を謳う花を敢えて店員に花言葉を訊ねて一輪だけ買っていく。そうすれば気持ちを伝えつつ、俺はあの店員から花を手渡して貰える。つまり、自家発電。いささか悲しくもあるが、とりあえずは話す機会を得られる。まずはそれからだ。とりあえず今までの様に決まったタイミングで店に行く、そうすれば記憶に残る。ではペースはどうするか。大体、毎週火曜日と金曜日に市場で花を仕入れていると言っていた。それならば火曜日が良いだろう。回数は。週一では多過ぎるし、そもそもせっかく渡してもらう花なのだから枯れるまで大切にしたい。それならば二週に一回がベストだろう。その位だったら多過ぎず、少過ぎず、月に二回店に行く回数が増える。一週目にすると榊を買うのとかぶる可能性がある。二週目と四週目の火曜日、その二回だ。切りもいい、来月から実行しよう。

俺はやっと当初の目的の資料を抱え貸出カウンターへと脚を向けた。そして、帰り道に花言葉が沢山載った本を本屋で買おう。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

感想など書いていただけると有難いです。

これからもよろしくお願いします。

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