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恋の花し  作者: 犬犬太
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いつもの飲み屋でテーブルに向かい合わせに座り、二人でメニューを覗き込む。俺の夕飯になりそうで、なおかつ花屋のつまみになりそうな物を二人して注文していく。もちろん花屋は芋焼酎も頼んでいる。

正月三が日の間はさすがにいないだろうと思われた常連客たちも勢揃いで、料理が届くまでの間、突き出しをつまみつつ新年の挨拶を交わす。ビールのグラスを進められるも、俺はアルコールに弱いので酒を断りお茶で乾杯するが、花屋は嬉しそうにグラスを受け取り、さらに焼酎を返盃して実に楽しそうである。

しばらくして料理がテーブルに並び初め、二人揃って席に着く。手を合わせ、頂きます、と言い俺は白飯片手に食事を、花屋は芋焼酎片手に飲みが始まった。

相変わらず、二人で話すことは研究の話に花の話、時たま休みの事なんかを話した。いつも似たようなことを話している気もするのに、会話が途切れることがない。合間に、飲み屋の常連や大将、店員たちも話に混ざり時間が過ぎて行く。人見知りの激しい俺が、こんなにたくさんの人とこんなにリラックスして話すなんて。花屋と出会わなければ有り得なかったことだろう。

いつの間にやら飲みの輪は広がり、店中の客全てで飲んでいる状態になり、あちらこちらで献盃と返盃が繰り返される。へべれけ状態の常連客に囲まれながら、一番多く飲まされているだろう花屋が相変わらずのペースでグラスを傾ける。一滴も飲んでいないはずの俺でさえも、辺に満ちた酒気で酔いそうなほどなのに。本当に酒に強い。こういうのをザル、いや、ワクと言うのだろうな。何も知らない人が見たら水を飲んでいるようにしか見えないくらいの飲みっぷりだ。俺もいい加減食事を終えて、烏龍茶片手に飲みに混ざる。以前の俺ならばシラフで酔っ払い相手は到底出来ないことだっただろうに、今はそれが楽しいと思ってさえいる。意味のあることからないことまで、話し、笑いあう。人との交わりがこんなに楽しいものだと教えてくれたのも花屋だ。

花屋は俺の生き方そのものを変えてしまうほどの存在になってしまっている。恋は人を変えると言うけれど、それは本当のことだったのだと、俺は烏龍茶のグラスを傾けながらしみじみと考えた。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

楽しんで頂いていると幸いです。


次回もよろしくお願いします。

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