表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋の花し  作者: 犬犬太
19/33

19

お茶を飲み干した後は、カンパニュラを一輪買って帰った。花言葉は「幸せに感謝します」。鐘型の花が並んで咲いている。

クリスマスを一緒に過してくれて幸せだった。今日も一緒に過ごせて幸せだった。あの人の存在が俺を幸せにしてくれる。そんな気持ちを込めて選んだ花だ。

でも、会計をする時、あの人の顔が少し曇ってしまった。なぜあの人は時折、あんな哀しそうな顔をするのだろうか。それまで普通にしているのに、急に表情が変わる。それでも次に合う時にはそんなこと無かったかのように笑ってくれる。

俺が何かあの人にとって負担になっているのだろうか。そうだとしたら、俺はどうしたらいいのだろう。あの人を好きだというこの気持ちは捨てられない。

・・・もう、一輪挿しの花を買うのを辞めよう。

思えば、あの人が笑ってくれないのは花を一輪だけ買う時だ。初めは喜んでくれたけれど・・・。これからは仏花と榊だけにしよう。会える回数は減るけれど、あの人にあんな哀しそうな顔をさせるのは嫌だ。

そうして俺は、毎月第二、第四火曜日に一輪だけ花を買うのを辞めることにした。


その週の金曜日、大晦日の前日ということもあり俺が花屋に向かう道は正月準備でいつもよりざわついているように思えた。

居酒屋やホストクラブなど、年末年始も営業をする店は特に忙しそうだ。

早い店では正月飾りを出しているところもある。目的地の花屋はもちろん、それの最たる所だ。

外から覗くと他に客はいないようだ。また少し話すことができたらなと、下心を持ちつつ扉を開く。いらっしゃいませの声と店員の笑顔で、気持ちごと体まで温かくなってしまったように感じる。

こんばんは、と言いながら店内へ。二、三歩進むと、同時に近付いて来ていた店員のすぐ側へ行くことが出来た。良く見ると、手があかぎれのようになっている。花の手入れで手が荒れているのだろう。大変な仕事だなと改めて感心した。

「手、大丈夫ですか」

痛そうな手を見て聞いてみる。店員は何でもないような様子で、この時期はいつもこんな感じだから、慣れちゃいました、なんて笑っている。今度、ハンドクリームでもプレゼントしようかと考えた。

それからは火曜日の寂しそうな表情を感じさせる事もなく、楽しそうに接してくれ、客がいないからとまたお茶をご馳走になり、仏花を選んでくれた。

レジでの会計の時、今日は寂しそうな顔はしない。やはり、花を一輪買って行く火曜日に何かあるのだろうか。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

楽しんで頂いていると幸いです。


次回もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ