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とりあえず仕事の邪魔はできないと、クリスマスブッシュを一輪購入し、花屋が閉店する頃また来ることにした。
一旦家に戻った俺はクリスマスブッシュを花器へ生けると、喜びの余り部屋中を転げ回った。じたばたとかつて無いほどにはしゃぎ回り、テーブルに頭をぶつけてようやく痛みに我に返った。そういえば、あの人はクリスマスに一緒に過ごしたい人がいる様子だった。
痛みに涙目になりながら、一緒に過ごすのが俺で良かったのか、あの人が本当に過ごしたかった人はどうしたのだろうかと、頭の中でぐるぐると考える。そして、もしその相手を誘っていたのであれば、断ってくれてありがとう、と思う。我ながら酷いなとも思いながら。
花屋が閉まる時間をまだかまだかと、そわそわしながら家の中をうろついた。洗面台の鏡を覗きヒゲの剃り残しの確認をしてみたり、自室へ入り服装を考え直してみたり、意味も無く襖を開けたり閉めたりと数時間を過ごした。
閉店時間に合わせ家を出ると、寒さで鼻の頭が冷えて痛く感じた。首に巻くマフラーに鼻を埋めて辺りをうかがう。どこの家も灯りが消え、街灯だけが光っている。今頃、各家庭のサンタクロースがプレゼントを配り始めているんだろう。そういえば、せっかくのクリスマスなのにあの人へのプレゼントを用意していなかった。でも、たまたま飲むことになったのにプレゼントを用意しているっていうのも気持ち悪いだろうか。考えていると歓楽街への通り道のコンビニが目に入る。花屋の閉店まではまだ少し時間があるし、コンビニで気持ちだけでも何か用意出来ないだろうか。
コンビニの自動扉をくぐり店内を見回すと、店に入ってすぐの棚にクリスマスプレゼント風の小振りのチョコレートの箱を見つけた。迷わずそれを手に取りレジへと向かう。ラッピングがコンビニ袋と言うのが少々味気ないが、その方があの人も気を使わないだろう。
袋をコートのポケットに入れて花屋へと行くと店内の照明はすでに落とされ、作業台の辺りだけが白熱灯に照らされている。証明の下ではあの人が何やら作っているようで、楽しそうに花束にリボンを掛けている。楽しそうな横顔をぼんやりと外から眺めていると、一通りの作業が終わったのか、満足そうな顔を上げたあの人が俺に気がついた。にこりと笑って手を振ってくれたので振り返すと嬉しそうに、こちらへ歩いてくる。ガラス越しに『 少し待っててください』と小さな声が聞こえる。うなずき返事をすると、店員は俺に背を向け作業台の花束をフラワーキーパーへと移し、明かりを消し裏口へと消えた。
少しして店の裏口からダッフルコートにマフラーを巻いた店員が出てくる。
「お待たせしました」
店員の声を合図にクリスマスデートが始まる。俺達は以前行ったあの居酒屋へと足を向けた。
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