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巡ル世界  作者: ムラツユ
3/4

友達以上恋人未満

 まず手始めに主人公さんの一番の幼馴染で、とても気の弱い美術部の生徒から始めることにしました。

 お互いに一番気の知れた仲だから簡単だろうという決めつけと、以前の生の中で一番の思い入れの合った美術部の同輩だったからということもあります。

 ちょっとしたおせっかいと、先入観から少年の作戦は始まりました。

 

 しかし、よく考えもせずに始まった作戦はすぐに座礁に乗り上げることになりました。

 それはひとえに付き合いが長すぎたせいで、両者の距離感が鈍く曖昧なものになっていたことと、その少女が自分から輪に混ざろうとはしなかったことが原因でした。

 自分から混ざらなくても、主人公さんは最後には気づいてその少女を心配して様子を見に来るからです。

 それをみて、なんて幼稚な思考なんだと少年は思いました。

 確かに小さい頃はそれでよかったかもしれませんし、それが子供の特権であるということは少年にもわかっています。

 ですが彼女は、子供のころのなれ合いを未だに持ち続けて、幻想を胸に抱き続けているのです。

 これ以上先に進んで、その関係が壊れるのを恐れて躊躇する臆病者、そんな言葉がよくあうようなそんな少女なのでした。

 これには少年もため息を一つ、しかしやることは変わりませんでした。

 ひとまず、少年は少女と同じ美術部へ入ることにしました。

 もう入学してから幾何の時が過ぎてからの入部ということで、周りからは奇異の目で見られましたが、その分注目も得られたおかげで、話題性が出たので半々といったところでしょう。

 部内でも屈指の技術を誇る少女に指南を受けるといった形で彼女と接点を持とうとしますが、周りに妨害される形でどうもうまくいきません。

 どうやら彼らはその見目麗しい少女目当てに近づいているのだと勘違いしているようです。

 いえ、それはある意味勘違いではないのですが、まあそんなことを言っても理解されるはずもなく仕方ないので独学でやっていたもののスランプで上達しなくなったと適当に嘘をつきます。

 少年は仕方ないのでその場で何かしらの絵を描いて見せることで周りを納得させようとしました。

 そのころにはすでに過去の遺物となった自らの技術を丁寧に磨きなおす感じで

 …その間、彼女のことを考えていると、どうも胸が痛んでしょうがありません、まるで自分を削るような、そして何かを重ねてみているような、そんな気持ちを押しとどめて…


 そして、ついに彼らの恋が成就します。

 その姿を見て、少年は心の底から祝福をすることはできませんでした。

 自分の私利私欲のために、人の心をもてあそんだといってもいいほどのことをしたと、そう思っていたからです。

 いえ、もしかしたら、単に彼らがうらやましく妬ましかったからかもしれません、彼らは真に自分を理解してくれる人ができたというのに、自らには同性の友人と言える人間でさえ作らなかったのですから。


 成功したのを見届けて、少年はすぐにその場を去りました。

 今の少年にはまぶしくてとても直視できるものではなかったからです。

 もちろん、その場には野次馬ともいうべき輩が何人もいましたが、彼がいつ去ったのかなんてわかりませんし、わざわざ気にする人もいませんでした。


 -まあでも、もしかしたらこれで終わるかもしれないし、一歩前進であることに違いはないか-


 一つ肩の荷が下りたことにほっとしていたのが悪かったのでしょうか、トン、と軽く背中を押されます。

 一瞬何をされたのかわからなくて体が硬直してしまった少年は、そのまま電車にひかれてそれはそれはとても愉快なオブジェへとなってしまいました。






■o■■oa■in■■




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