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暁の天使

作者: 麻生愛海

 それは世界の始まりの光のような存在だった

漆黒の夜の世界の終わりを告げ、1日の始まりを告げる明るい光のような存在だった

 世界がはじまりの時を刻んでからほどなく経たない頃

まだ神々や天使といった人を超えた存在が世界に君臨していた頃

それは神が作った存在の中で最も強く、能力的に優れるなど人々が憧れ、羨ましがるありとあらゆるものを備えていた

神が作った最高傑作と称えられた美しい容姿は、夜明けを知らせる灯火のようだった

そう、それになんの不満も憂いもなかったはずだった

 自らを作られし存在に抗った日

それはすべてを失った

かつて称えられし美貌も異形の怪物のような醜悪なそれに変じた。

力強く世界を羽ばたき光り輝いていた十二枚の翼ももがれて、地に墜ちていった。

そして二度と暖かい日の光のうちには戻ることすらもかなわず

凍てついた牢獄に永遠に解けぬ罪の鎖につながれた

 何をそれは思い、全て失ってしまうことになったのか分からない

ただ、彼の名を冠した薄暗い暗闇の中を漂う光は彼の永遠に救われない悲しみや後悔を乗せ漂う。

まだあけやらぬ空を行くその姿はかつて神に次ぐ権勢を誇った彼を思わせた

 人は夜が明ける頃に輝く光をこう呼ぶ。

暁の天使ルシフェル

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