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蟻は、廻る。
蟻は、廻る。
働き者である彼らは足元から発するフェロモンを辿ることで道を外れることなく、迷ってもすぐに戻ることができる。行列が途切れることは無い。
だがフェロモンが偶然、円を描いてしまうとある現象が起きる。
現れる、漆黒の巨大な円。
円を描きながら、蟻達はぐるぐると行進する。
フェロモンの道を外れることなく、ただ、ぐるぐるぐるぐる、と。
一体、自分達は何処へ向かっているのか？
しかし、その答えを知っている者はいない。
その進む先にまさか自分の背があるとは、誰が思うだろうか。
彼らはただ、力尽きるまで歩いていく。
一匹、また一匹と死んでいく蟻達。
だが、仲間達は同胞の死を気にも止めずに行進を続ける。
円はやがて渦へと姿を変える。
黒い死だけが渦巻く、狂気の渦へ。
多くの屍が踏まれ、退かれ、渦の中心へと集まっていく。
力尽きた仲間を踏み越え、押し退け、ひたすら歩いていく蟻達。
骸の山を、自分の末路を傍らに、彼らは廻る。廻り続ける。
それが彼らの――、
死の螺旋
