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シンカガク  作者: 荻海
2章:レジスタンス
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12.両親

 部屋の中は至って普通のホテルと変わらない。ベッドが一つ、部屋を狭くしない程度の小さなテーブルと椅子、開けばベランダへと続く窓、ここに泊まった全ての者が利用したであろう壁に付けられた液晶テレビ(今は画面が割れていて使うことはできないだろう)。


「とりあえず座れ」


 ジュンは椅子に座り、信也はベッドに座る。


「先に謝っておく。学校にいたやつらを巻き込んで悪かった」


「学校でのことならかまわない。別に誰かが怪我したわけでも、ましてや、死んだわけでもないんだから」


 実際のところ、信也としては学校でのことは本当にどうでもいいことになっている。彼らは最初から日向たちに対しては何も危害を加えるつもりがなかったことは、明らかだったからだ。


「それよりも、教えてくれ。PTEって一体何だよ。美也も最初は自分のことをPTEって名乗った。そう呼ばれてたって」


「PTEというのは奴が言った通り自身の名前を指している。だが、あくまでも呼ばれてただけであって、本当に奴の名前だというわけではない」


 ジュンが言うには、PTEとは、ある組織が発見し、保護し、識別するために付けられた名前なのだという。


 ある組織。


 ある少女のクローンを記憶操作機として作り、PTEと名付けた組織。

 先ほど日向から聞いた話と繋がる内容に、信也はある確信を得る。


「その組織の名前は…」


「中央研究所…?」


「そうだ」


 中央研究所はPTEを使い、様々な実験を行った。

 中央研究所が作り出した発明品や、発見した新種の生物、鉱石、薬品、その全てが、PTEを使って得られた物なのだという。


「それと、外にいたあいつらを見たか?」


 脳裏には異形な人間たちの姿。

 腕が獣のように毛や鋭い爪を生やしていたり、魚のような鱗を持っている者、中には目が明らかに人間以外の生物の者もいた。


「彼らは何があったんだ」


「PTEと似たようなものだ。勝手に連れて行って、勝手に身体を弄び…人間の更なる進化を妄想したやつらの被害者だ」


 中央研究所は牙を知恵にし、爪を道具に変えた人間に、他の生物の持つ特性を埋め込もうとしたのだという。

 だが、結局それは全てが失敗に終わった。多くの者が命を落とし、死ぬことはなかったものの、異形な人間となった僅かな者たちは、人間としての社会復帰は不可能だと判断され、学園都市の誰も入れない郊外のごみ処理場へ廃棄された。


「だが、生きたまま穴へと落とされたため、ほとんどが生き残っていた。生き残った者たちは手を取り合い、中央研究所への復讐を誓った」


「それが、お前たちなのか」


 ジュンは頷き、話を続ける。


「俺もその内の一人だ。そして、ここからがお前にとって重要な内容になる」


 信也の両親は中央研究所に所属していた。ジュンは信也の両親と何らかの接点、関わりがある。それはPTEと呼ばれる美也も同じである可能性が高い。

 信也の両親が中央研究所で携わっていた研究。その答えはすでに出ていた。


「まさか、父さんと母さんは…」


「俺たちやPTEの身体を弄んだやつらの一員だった」

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