vol.6 恋に落ちる空模様。
外は濃紺を通り越して、夜の海の色になっていた。
先輩の部屋の窓から眺める空の色は、今まで見た空とは凄く違って見えた。
………私、古の少女漫画の主人公してない?
って、こんな事考えてる自分が居るって事は、私、先輩好きなのっっ!?
え?だって、初対面だよ!?(厳密に言うと違うけど)
全然知らない人だよ!?(本当が学校の先輩だけど)
えー…有り得ない………。
「うわ、外真っ暗じゃん。送ってくわ。マナ、家何処?」
先輩は立ち上がって、制服の上にジャケットを羽織った。
うわ…かっけぇ…。
ヤバいなー…これは惚れたな。
「マナ?戻って来ーい?」
「………えっ?」
「あははっ。お前、ほんと面白ぇなぁ。どっか旅立ってたぞ?」
「ち…違いますよっ!!!」
「そんなに否定しなくても良いじゃん。怪しいな〜?」
「別に何でもないですってば!!」
「…何かあるなんて、思ってないけど?」
ぅ〜…。
しまったぁ…。
墓穴掘ったぁ…。
先輩に見惚れてた………何て、口が裂けても言える訳無いでしょうがっ!!
「マナー?そろそろ帰るぞ?」
「あ、はいっ」
「あぁ、敬語使わなくて良いよ。これからずっと一緒に居るしな」
「はい…じゃなくて、うん」
「マナ、天然?可愛いな〜っ。食いたくなる」
笑いながら、先輩は私を部屋の外へ出した。
…てか、先輩んちって広いんだよね。
3階建てだし、エレベーターついてるし…。
金持ちだ…。
「食うの!?」
「そうそう!!その反応!!俺に食って欲しいの?」
「そ……っんな訳無いじゃないですか!!!!」
「また敬語になってるし〜。冗談だって。食わねぇよ。俺、そんな軽く見える?」
「うん」
やっばぁい…。
即答しちゃったよ…。
先輩の足が止まっている。
瞳は、大きく見開かれて私を見つめていた。
「即答っすか…」
「ぁ…ごめんなさぃ…」
「あ〜あ〜、マナは俺ん事そういう風に思ってんだ?疵付いたー」
「ごめんなさい…っ」
私から視線を外していた先輩が、私と瞳を合わせた。
優しい瞳。
その表情からは、“怒り”の色は見えなかった。
「…冗談。そんな気にしてないから。ごめんな?からかったりして」
「ぁ…いえっ。私こそ…」
「俺も言われ慣れてるし。別になぁ、見た目で何言われても良いけど?中身見ない奴は嫌い」
「そうなんですか…」
「また敬語だし…。マナ!!俺の名前は?」
「え?ハルカ…」
「これから、俺の事は悠って呼ぶ事。敬語使ったら………マナの事食うから」
「え…」
「約束なー」
先輩は笑って、私の手を握った。
「遅いし、単車で送るわ。ちゃんと掴まっとけよ?」
「判…った」