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...恋ノ詩...  作者:
2/16

vol.2 『再会』という名の出逢い。

オレンジから濃紺に変わる空の下。

いつものカラオケ屋に到着。


「お時間は?」

「時間…愛、何時間ー?」

「そっちが決めなよ。言い出しっぺじゃ〜ん」

「ん〜…じゃあ、フリータイムで」

「畏まりました。21号室にどうぞ」


マイクの入った籠を受け取り、私達はエレベーターで4階へ向かった。


「愛、何歌うー?」

「何で私が最初?」

「…ま、良いから良いから」

「はぁー…」


適当にリモコンを触りながら、新曲を入れた。


…てかさ、何で皆私とカラオケ来たら、私を1番に歌わせる訳?

意味判んないし。


そうこうする内に、私の入れた曲のイントロが流れ始めた。


「次、絶対曲入れてよっ」

「判ってるって〜」

「私、歌い終わったらトイレ行くから」

「えっ………」

「『えっ』じゃないから」


宣言通り、私は1曲目を歌い終わると席を立った。


「すぐ戻ってきてよー。1人で歌ってるの空しいんだからっ」

「…じゃ、私以外にも誘えば良かったのに」

「誘ったけど、都合つかなかったの!!とにかく、早くねっ」

「はーい」


私は部屋の外に出た。

外では、私がさっき歌った曲が掛かっていた。


「うわ、偶然…」


しかし、この後起こる偶然を、私は知らない。


カラオケかー…。

今日、もしかしなくてもオール?

…ま、明日休みだし。

てか、休みじゃなくても、学校なんか行ってらんないし。

詰まんない。学校って。

高校って、何の為に行くの?


トイレから出て、私の眼に飛び込んだ光景に、私はこの世の全てを疑った。

………は大袈裟か。

けど、それぐらい驚いた。

私の眼の前には、何故か記憶に残ってる男の人。

さっき、どんな夢を見てたのかは憶えてないけど、1つだけ憶えてる。

淡い、グリーンの着物を着た、男の人。

その人が、今。

私の眼の前に居る。

………流石に、着物は着てないけど。


「ぁの――………っ」

「あ?」


思わず声を掛けた。

………けど、後悔した。

怖っ。

すっごい、怖い。

もしかしなくても、私、睨まれてる…?


「お前…」


声も怖いよー……。

呼ばれた瞬間、私は踵を返して、部屋に戻っていた。


「あいつ…」


その男の人が、私の後を追っているとも知らないで………。




バンッ。


勢いよく扉を開けたせいで、中に居た友達の肩が、少し震えたのが判った。

TVから視線を外し、私に向き直る。


「び…っくりしたぁ。驚かさないでよ」

「あ、ごめん。ちょっと…」

「何?補導員にでも見つかった?」

「や、違うけど」


補導員て。

まだ深夜徘徊の時間でもないのに、驚くかっつーの。

てか、もし今が夜中で、補導員に見つかっても、あんなに驚かないし。


私はリモコンの画面を見つめた。

歌おう。

それで、忘れてしまえば良い。


私は知っている曲を適当に5〜6曲入れた。

当然、友達から文句が出る。


「ちょっと〜。愛、曲入れ過ぎ。続けて歌うと声潰れるよ」

「割り込み予約してくれて良いから」

「ねぇ。マジで何かあったの?」

「いや、別に…」


私はそれから帰るまで、入り口の扉を極力見ないようにした。

この部屋があの人にバレてるとは…思わないけど。

やっぱ、怖い。

扉を見て、あの人の姿があったら…。


私が部屋に戻ってすぐ、その部屋の外にさっきの男の人が立っているなんて、私は思いもしなかった。

………いや、思いたくなかった。


「おい、(ハルカ)っ」

「あ?…んだよ、(ヒジリ)か」

「『あ?…んだよ、聖か』…じゃねぇよ、バカ。トイレ行くって言って、中々戻って来ねぇと思ったら…。何やってんだよ」

「…似てんな、俺の物真似」

「バカ言ってる場合かよ」

「あのな、お前が俺の事バカって言ったんだろ?」

「そういう意味じゃねぇっつーの…。良いわ、戻るぞ。(タカシ)、1人にして来ちまった」

「貴、1人で歌ってんの?うわ、可哀想ー。今頃泣いてるかもなー」

「…お前、自分のせいって思ってないだろ」

「貴が本気で泣く前に戻るぞ」

「…結局、お前は何なんだよっ」

「意味判んねぇー」


アイツ…。

どっかで見た気がする…。

あの声も…聴いた気がする…。

何処でだった…?

俺は、何処でアイツを見た…?

アイツも、俺の事知ってるみたいだった。

けど、断言しても良い。

俺は、アイツを知らない。

名前も、歳も、何もかも。

只…あの、声と顔は知ってる。

何で、俺はアイツを知ってんだ……?


外は、白く輝く星が見えていた。

傍には、天使と弓をそのまま空へ置いてきたような、上弦の月。

冬の、澄んだ冷たい空気が、月と星をより一層輝かせていた。



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