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...恋ノ詩...  作者:
14/16

vol.14 あっけないすれ違い。

「聖…?」


その声の主は、私達の光景を見て喋るのを止めた。

私は、その人を見れなかった。

誰だかなんて、聴いただけで判るよ………。


「悠。遅かったな」


聖君の声には、動揺は感じられなかった。

(ムシ)ろ普通。

到って普通。

私は、顔が紅くなるのを感じた。

同時に、ハルカ先輩に対する罪悪感が体中を襲った。

別に、付き合ってる訳でもないのに…。


「………っへぇー…。お前ら、そういう関係だったんだ…?」

「ハルカ、違う、これは…」

「何が違うんだよ?良かったじゃん、マナ。聖だぜ?絶対幸せにしてくれるから」


自分の過ちが招いた事だけど、私の心は悲鳴を上げた。

違う…違うのっ。

私が好きなのは――………っっ。


「じゃ、邪魔者は出ていくわ。ごゆっくり」

「待って、ハル…ッ」


ドアが閉まる音に、私の声は飲み込まれた。


「ハルカ…」

「…愛、賭けしようか?」

「え?」

「多分、アイツ、俺らの話聴いてた筈だよ。あんなタイミング良く入って来る訳無いし。第一、声に動揺が無かったからな」


聖君、あの状況でよくそこまで冷静に見てるよね…。


「もしかしたら、悠嫉妬してんのかも。俺に」

「え?」

「好きなんだろ?悠の事」

「好き………っめちゃくちゃ好きだよ…っ。けど、無理だよ…。ごめんっ、聖君。私、帰るね」

「は?ちょ、愛!?」


聖君の声が、小さくドアの向こうで聴こえた。

ごめん、聖君…。

けど、あんな言い方されたら………。


私は逃げるようにして聖君の部屋を後にした。


「あーっ!!!愛のバカ!!」


愛が悠の家の玄関を出た頃、聖は部屋で叫んでいた。

しかし、今は、そんな事よりしなきゃいけない事がある。

聖は自分の部屋を出ると、廊下からでも音楽が漏れて聴こえる、アイツの部屋に向かった。


「悠、入んぞ」


聴こえていないだろうが、一応マナーはマナーだ。

聖は、そう声を掛けてからドアを開けた。

コンポのボリュームをマックスにして、悠はベッドに寝転がっていた。


「悠、言っとくけどな…」

「っさい!!出て行け!!!」

「はぁ?お前のが煩いし。つーか、音楽止めろ」

「嫌だね。早く出て行けっ!!!!」

「はぁ!?意味判んねぇ」


聖は、煩く鼓膜に響く音を止める為、コンポの電源を切った。


「これで少しは静かんなる」

「………っ!!何だよ、お前!!」

「こっちの台詞だっつーの」

「はぁ!?意味判んねぇよ!!何々だよ!?」

「お前、愛の事好きだろ?」

「あぁ!?好きじゃねぇよ、あんな女っ」

「じゃあ、何で俺と愛の会話、立ち聴きしてたんだよ?」

「してねぇし。聴こえただけだし」

「だったら、何で部屋入って来んだよ?素通りすれば良いだろ」

「それは…っ」

「お前が愛の事嫌いだったら、俺()るぜ」

「…あんな女、知らねぇよ…っ」

「ふーん…。ほんとに良いんだな?」

「勝手にしろっ。俺には関係無い!!」

「けど、お前、『あんな女』の為に女と別れて来たんじゃん?」


「違…っ」

「何が違うんだよ。だから、今日、愛と一緒に帰らなかったんだろ」

「違う…っ。愛は関係無いっ!!!」

「出たじゃん、本音」

「は?」

「自分の言った言葉、覚えてねぇの?お前、今『愛』って言った」

「言ってねぇよ…っ」

「良い加減認めろよ。好きなんだろ?愛」

「……………………っ好きだよ…。けど、愛は…」

「あれは誤解。愛が泣いてしまったから、俺が慰めてただけ」

「…けどっ」

「あー…愛が言ったの気にしてんの?俺の口からは言いたく無いんだけどなー…」

「俺、ちょっと出て来るっ」

「おぅ。行って来い」


悠は、上着を掴むと部屋から駆け出して行った。

きっと、悠の足なら、すぐに愛を捕まえられるだろう。

聖は、悠のベッドに横たわりながら呟いた。


「…結構、可愛かったんだけどなー…」


聖は、悠が完全に窓から見えなくなるまで悠の部屋で過ごした。

その後、聖も何を思ったか、上着を着込むと濃紺の空の下へ飛び出した。



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