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...恋ノ詩...  作者:
13/16

vol.13 優しい嘘。

聖君の行動に。

私が驚いた。

けど、聖君の腕の中は、温かくて…優しくて…。

正確に鼓動を刻む心音が、私を安心させた。


「ごめん…っ。俺、愛がそんな思い詰めてるって知らなくて…。すっげぇ、疵付けたよな…?ごめん…ごめんな…」

「ううん…」


聖君の腕の中に居るから?

聖君が優しいから?

それとも、気持ちを吐き出してすっきりしたから?

とにかく、私はさっきよりは落ち着いていた。


「私の方こそごめん…聖君を困らせるつもりじゃなかったんだ…」

「けど、俺が疵付けた事に変わりは無いだろ?」

「『マナ姫』っていうのは…確かに私かもしれない。顔は一緒らしいし。けど、私は『マナ姫』じゃない。『姫』じゃ…『マナ』じゃ無くて私を見て欲しかったの…」

「…俺、な?」


聖君は、まだ私を抱き締めてくれていた。

その上、優しく私の頭を撫でてくれている。

小さい子をあやすように…。


「愛ん事…前から知ってたんだよ」

「え?」


私の事を?

何で?

いつ?

何処で知ったの?


「貴んちに、遊びに行った時にな。見掛けたんだ。愛の事」

「嘘?」

「ホント。遠くからだけどな。貴の家の前で、2人が話してて」

「いつ…?判んない…」

「覚えてなくて、当たり前だって。愛、すぐ家に戻ったんだから」

「そっか…」

「だから、貴の部屋で顔見た時、『愛』って呼ぼうとしたんだけど。初対面だし…」

「馴れ馴れしい?」

「まぁ、そういう事かな。それに愛、悠が好きって言ってたし」

「?ハルカ先輩が好きだと、『姫』なの?」

「んー、ちょっと違うんだけど。名前ってな?好きな奴に呼ばれたいだろ?」


あぁ…うん。

確かに。

何か、漫画か本かで、“名前を呼ばれた分だけ傍に居る気になる”って読んだような、違うような。


「だから、俺が『愛』って呼んでもなぁ…と思ってな」

「そっか…。ありがと」

「や、けど、それで愛疵付けたしな…」

「けど、聖君は名前知っててくれたもん」


私は聖君の胸に顔を埋めた。

ハルカ先輩は居ない。

あの人は…こんなに優しくない…。

今だけ…ごめんね?

聖君に甘えさせて…。


「愛?」

「ハルカ先輩は、私の事1度も名前で呼んだ事が無くて…。多分、知らないんじゃないかなっ」


冗談っぽく、私は笑いながら言った。

ちゃんと笑えてるよね…?


「愛、無理すんなよ…」


聖君は、私を抱き締めている腕に、少し力を入れた。


「辛い時は辛いって言いな?女の子は、もっと甘えるもんなんだからさ」

「聖君に?」

「当たり前じゃん。俺だったら、世界一の愛情で包んでやるよ」

「あははっ。…私、聖君好きになれば良かったな…」

「…なったら良いじゃん?」

「え?」


私は、驚いて聖君の胸から顔を離した。

そして、聖君を見上げた。

その時。

聖君の部屋のドアが開いた。



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