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...恋ノ詩...  作者:
12/16

vol.12 突然。

「此処だよ。俺の部屋」


ハルカ先輩の部屋の少し手前に、聖君の部屋はあった。


「お邪魔します…」

「お邪魔されますぅー」


ハルカ先輩の部屋と同じドアを開けて、私は聖君の部屋へと入った。

ハルカ先輩とは違う、男の部屋…。

貴兄ぃとも違う…。


「適当に座りな。俺、飲み物取ってくるわ」

「あ、ありがとう」

「どーいたしましてー」


私は、壁際のベッドに持たれるようにして座った。


「ん」

「ありがと」


聖君は、カップにココアを淹れて持って来てくれた。

ってか、聖君がココア!?


「聖君も同じの?」

「そうだけど?」

「嘘ぉ!?」

「いやいや、驚き過ぎだしっ」


軽く私の頭を叩いて、聖君は笑った。

それに釣られて私も笑う。

私、聖君と一緒に居るとよく笑うよねー…。


「んで?」

「『で』?」

「悠とはどぉ?」

「ハルカ先輩……………別に、何も」

「マジ?何か無ぇの?」

「無い無い。なぁ〜んにも無いよ」

「一緒に寝てるのに?」

「一緒に寝てるのに」

「毎日一緒に帰ってるのに?」

「毎日一緒に帰ってるのに。あ…でも、手は繋ぐかなぁ…」

「何だ。何かあるんじゃん」

「けど、別に先輩は何とも思ってないと思うなー。普通なんだもん」

「や、判んねぇよ?隠してんのかもしれないし」

「何を?」

「照れを!!」

「テレ?」

「照れ」

「っはぁ〜!?有り得無いっ」

「や、判んねぇじゃん」

「いや、判るっ」

「判んねぇって」

「判るよっ」

「何で、姫はそう思うんだよ?」


聖君の言葉は、私の言葉を咽喉の奥へ押し戻した。

『何で、そう思う』かって?

決まってるじゃん…。

そんなの、判りきってるよ…。


「聖君、私の名前知ってる?」

「はぁ?」


突然の私の質問に、聖君は眉間に皺を寄せた。

聖君にとっては、どうでも良い事なのかもしれない。

けど、私は――………。


「知ってるし。『愛』だろ?『恋愛』の『愛』」

「そう。『愛』。『愛』だよ?私は…」


ヤバ…泣きそう…。

此処で泣いても、聖君困らせるだけなのに…。

必死で涙を抑えようとしたけど、無駄だった。

一粒涙が溢れると、もう止まらない。

私は必死に涙を指で(スク)った。


「え…?姫…?どした?何で泣くんだよ…?」


聖君が心配そうな顔をして、私の顔を覗き込んだ。

その大きな瞳には、“心配”と“当惑”と“戸惑い”の色が浮かんでいる。

ごめん…っ。

困らせるつもりじゃなかったんだよ…?

けど、1度暴走し始めた気持ちは止まらない。

私は、涙と一緒に抱えていた言葉を一気に吐き出した。


「私は…っ私は『愛』なの!!『マナ』でも『姫』でも無いっ!!私は、『愛』なの…」

「ひ…」


多分、聖君の『ひ』の後には『め』が続く筈だ。

しかし、聖君はそこで言葉を切った。


「ごめん…愛…」


そっと。

壊れそうなガラス細工を扱うように、聖君は私を抱き締めた。



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