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...恋ノ詩...  作者:
11/16

vol.11 痛いココロと紅い空。

「あ、そうだ。肝心な事言うの忘れてた」

「?何?」

「今日な?悠用事あって、迎えに行けねぇらしい。だから、家にも…」

「行けないって事か…」

「ごめんな?」


何故か、聖君が申し訳無さそうな顔をした。

何で?

何で聖君が謝るの?


「姫…楽しみにしてたんだろ?」

「ぇ…いや、そんな事は…」

「嘘吐け。好きなんだろ?悠の事」

「……………っっ………好きだけど……聖君が謝る事無いじゃん…」

「悠は…謝れねぇからな。代わりに俺が謝る」

「ぇ…」

「今日、どうする?」


聖君は、さっきとはがらりと様子を変えて、元の聖君に戻った。

…や、そこまで聖君の事理解ってる訳じゃないけど。

けど…普通の…最初の聖君だ…。


「今日?」

「今日」

「んー…そぉだな…。ハルカ先輩のトコには行けないし…何しよぅ…」

「悠の事、『先輩』って言ってんの?」

「ん?あー…先輩の前では『ハルカ』だけど」

「何で俺の前では『先輩』?」

「や…先輩だし…一応…」

「アイツ、敬語使うなって言わなかった?」

「言ったよ?だから、先輩の前じゃ使ってないもん」

「ふーん…。あ、予定無いんだったら、遊び行かねぇ?」

「遊びに?」

「遊びに」

「誰と?」

「俺と」

「聖君と…………………えぇ!?」

「いやいやいやいや、反応遅いし」


聖君は、声を上げて笑った。

よっぽど面白かったのか、瞳からは涙が出ている。

え…酷いし。

何でハルカ先輩も聖君も笑うのかなー…っ。


「あ〜…ごめんごめん。可っ笑しかったーっ」

「聖君…酷い」

「や、だからごめんて。お詫びに何か奢るわ」

「え?ホント?」

「ほんと。俺に二言は無い!!」

「んー…じゃあ、パフェね」

「パフェ!?」

「『俺に二言は無い!!』んじゃ無かった?」

「や…別に良いんだけどな…」

「じゃあ、良いじゃんっ」

「けど、俺とそんな店行って良いの?」


聖君の言葉が、ハルカ先輩を映した心に刺さった。

針のように、細く、鋭く…。


「…じゃあ、遊ぼーとか言わないでよ」


私は苦笑した。

聖君、矛盾してるよ…?


「俺は良いのっ。悠に了解取ってるしぃ」


また、聖君の言葉が刺さった。

違う場所じゃなくて、同じ場所。

血が、滲んできた。


「……っじゃあ、良いじゃん?行こうよ?」

「…あ……ごめん…」


聖君は、私を疵付けたと思ったのだろうか、申し訳無さそうに謝って来た。

だから、聖君のせいじゃないのに…。

何でこんなに優しいんだろう…。


「止めよっか。どっかで、こうやって話しよう?」

「だなっ。んじゃ、俺んち来いよ」

「え?」

「そしたら、悠と少しでも逢えるだろ?」


ニコッと笑って、聖君は私を覗き込んだ。


「ダメ…?」

「…ううん、ありがとう…」

「じゃ、決まりなっ。終わったら迎えに行くわ」


長くて綺麗な指でVサインを作って、聖君は私の眼の前に突き出した。

優しいな…聖君は…。


「判った。待ってるね」

「おぅっ。んじゃ、そろそろ教室戻る?」

「そうだね」


私達は、視聴覚室をそっと抜け出して、それぞれの教室へと向かった。


放課後。

私は、聖君が来るのを待っていた。

クラスメイトの殆どが、まだ教室に残っていた。

まぁ、女子ばっかだけど。

何でかって?

“ハルカ先輩が来るから”でしょ。

毎日毎日、ハルカ先輩が教室まで来るから、その先輩の姿を見ようと健気にも残ってる訳。

…私は健気だとは思えないんだけど。


「姫ーっ!!」

「聖君」


そんな事を考えていると、聖君がやって来た。

案の定、教室には波紋が広がる。

そりゃそうだよね。

いつもは、ハルカ先輩が来てたんだもん。

先輩と帰るようになってから、私も先輩達についての噂は仕入れたんだよ?

どうやら、聖君はハルカ先輩よりも評判が悪いみたい。

不特定多数の女が居るとか、他校の後輩を妊娠させたとか。

聴いてて良い気分にはなんない噂も多かった。

ハルカ先輩は、女関係はそんなに無かったけど。

実は性格が悪いとか、実は切れると怖いとか。

性格は判んないけど、どう見たって、切れたら怖そうじゃん。


「姫?」

「…え?あぁ、ごめんっ」

「姫が異界へ旅立ったぁ〜」

「いやいや、別に何処にも行ってないから」


聖君が大袈裟に反応するのが面白くて、私は笑った。

教室で笑うなんて、久しぶりだ。


「帰る準備出来た?」

「うん。ばっちり」

「じゃ、帰るかー」


聖君は、廻りの雑音は一切気にしていなかった。

私は、さっきからクラスメイトの視線が痛い。

別に良いけどさ。

そっちが思ってるような事なんか、1つも無いし。


私は聖君と一緒に教室を出た。

ハルカ先輩と初めて帰った時のように、空は真っ赤だった。

ハルカ先輩と一緒だった時は、思わなかったけど…。

何か、この空怖い…。

嫌な予感がする…。


「姫?どした?」

「ん?…や、ちょっと…空が…怖いなって…」

「空が怖いぃ?」


聖君は、空を見上げた。

オレンジの光が金糸の髪の毛に映えて、凄い綺麗。

けど、その“美しさ”が怖い…。


「別にキレーな夕焼けじゃん?」

「ん…そうだね…」

「そんなに嫌だったら、急ぐかっ」


聖君はスピードを上げた。


「姫、早く来い?」

「うん」


私も聖君に置いていかれないように、歩くスピードを早めながら、血のように紅い空の下、聖君の家へ急いだ。



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