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...恋ノ詩...  作者:
10/16

vol.10 秘密の園にて。

更新が遅れてしまい、すみません。

読んでいただければ嬉しいです。

次の日。

私はいつものように、放課後までの詰まらない時間を適当にやり過ごしていた。

ホント、学校って詰まんない。

皆、何しに来てるんだろ…?


長かった午前の授業も終わり、今は昼休み。

あ、パン買って来なきゃ。

私は鞄から財布を取り出し、席を立った。

その時――………。


「姫っ」

「聖…先輩…?」


教室に黄色い悲鳴が上がる。

煩い。

やって来たのは、昨日貴兄ぃの部屋で逢った、聖先輩だった。


「敬語無しって言ったじゃーん。姫、昼は?」


私は心の中で溜息を吐いた。

はぁ〜…っ。

何か、この人苦手だな…。

けど、貴兄ぃの友達だし…悪い人じゃないよね…。


「今から買いに行くトコ」


私は右手に持った財布を聖せ…君に見せた。

途端に、聖君の顔が輝く。


「マジで!?良かった。俺も今日は購買だから。一緒に行こっ」

「え?何で…」

「良いから良いから〜」


半ば聖君に引き()られるようにして、私は購買へと向かった。


「姫、何食べる?」

「…サンドウィッチ」

「それだけ?」

「うん」

「もっと食えよ〜。()っきくなれないぞ?」


聖君は私の頭をぽんぽんと叩いた。

いや…。

聖君が大きいだけだから。


「お姉さ〜んっ」

「褒めてもまけないよ」

「えー?…ま、良いや。サンドウィッチとチキンカツサンドと焼きソバパンと…あ、おさつ林檎パイ2つっ。後ー…」

「まだ食べるのっ!?」

「サンドウィッチとパイ1つは、姫の。飲み物何が良い?」

「え!?悪いよ、そんなの」

「良いからっ。俺が誘ったんだしぃ。払わせてくださいっ姫」

「聖君も『姫』?」

「え?」

「…ううん、何でもない。ありがと、聖君。じゃあ、カフェオレ頼んで良いかな?」

「?どういたしましてっ。じゃー、カフェオレ2つ追加なっ」

「850円。持てるかい?」

「お任せあれっ。はい、おばちゃん」

「…150円上乗せ」

「あー!!ごめんって!!お姉さん!!じゃ、行くか。姫」

「うん」


私は聖君と並んで歩き出した。

さっきの購買のおばさ…お姉さんとのやり取りで、私は聖君に対する警戒心を殆ど解いていた。

同時に、苦手意識も無くなった。


「聖君、何処行くの?」

「あ、やっと姫から話し掛けてくれたっ。今から行くトコは…俺のお気に入りの場所」

「ふーん………って、だから、何処!?」

「まぁ、黙ってついて来いって」


聖君は秘密基地に向かう子供のように、嬉しそうに歩いていった。


「此処っ」


聖君はある場所の前で立ち止まった。

え…?

此処って………。


「聖君?此処って入れないんじゃ…?」

「姫もそう思ってた?でもですねぇ…」


聖君はニコニコして、私に背を向けて、ドアを(イジ)っている。

私達が今居る所は、特別棟。

音楽室、調理室、化学教室など、特別教室ばかりが入っている棟だ。


「………♪ほら、開いた」

「え?」


聖君を見ると、彼の手はドアの取っ手の上に。

そして、そのドアは………少し(キシ)む音をたてて開いた。


「な?」

「うっそぉ〜…」

「入ろ。此処だったら、誰も来ねぇし。生徒は勿論、教師もなっ」

「何で開けれるの?」

「それは俺の企業秘密ですぅー」

「そうなんだ」


聖君の言い方に笑みを(コボ)しながら、私は教室の中へ足を踏み入れた。

この教室――生徒達の間では、こう呼ばれている。

通称『開かずの間』。

正確な…というか、本来の名前は、『視聴覚室』。

身体障害者の為の教室なんだけど、うちの学校には今現在そうした生徒は居ないので、常に閉められている。

その教室を、聖君は『何か』やって開けた。

凄い事だ。

何せ、この教室は夏休みに肝試しに使われるぐらい、色んな噂のある教室なのだから。


「うわ…すっごーい…」

「だろ?こんな良いトコ、他の奴には教えられねぇからなぁ」


なんと、教室の中は冷暖房完備。

床には絨毯。

所々に置かれた机の上には、パソコン。

この教室が、校内で1番お金かかってそう…。


「さ、食おかー。姫、はい」

「あ、ありがとぉ」

「…何か、初めの時とかなり態度違うな?」

「あ、ごめん…。私、人見知り激しいから…」

「そう?じゃ、俺の事正直引いてたり?」

「うん、実は」

「あはははははっ。マジかー。んじゃ、今は?」

「今は…全然。怖がってたのが、馬鹿みたい」

「そ、か。良かった」


それから暫らく、私達は食べるのに没頭した。


「…あ、これ美味しい」

「おさつ林檎パイ?美味いだろ?これ、俺ん中で今空前のブームなの」

「空前のブームなんだ」

「人気あるから、すぐ売り切れちまってさ?感謝しろよー?」

「そうなんだ?ありがとっ。私、初めて食べた…ってか、初めて名前聴いた」

「クラスの奴とか、食ってない?」

「んー…見た事無い…」

「じゃ、姫が1番じゃーん。やったな」

「あははっ。そうだね」


そのまま、私達は5時限目をサボった。

これだけ男の人と話をするのは、貴兄ぃ以外では初めてだった。



良ければ、ご感想などお願い致します。

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