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...恋ノ詩...  作者:
1/16

vol.1 儚い夢。

詰まんない。

詰まんない詰まんない詰まんない。


はー…っ。

何で学校ってこんなに退屈なのかな?


とある高校のとある教室。

1番日当たりが良くて、見晴らしの良い席。

私の…教室で唯一落ち着く場所。

前では、教師が何だか訳の判らない物語の説明をしている。


「この源氏物語は光源氏とその廻りを取り巻く美しい女性の物語で………」


眠い。

何で、古典の授業ってこうも眠気を誘うのかな。

射し込んでくる日光も手伝って、私は眠りの世界へ意識を手放した。


「ま…待って下さい」

「もう…夜が明けます。宿直に戻らなければ…」

「いつ…今度はいついらして下さるのですか……?」

「貴女の涙が乾かぬうちに…。きっと…」


何だ、これ。

夢…?

私の目の前で、重そうな着物を着た男が去って行く。

淡い、グリーンの着物。

知らない間に、頬を涙が伝っていた。


「………ぃ、……ぁ………ぃっ……………ぃってば!!」

「ん…」


友達の声で眼が醒めた。

あれ…?

私、何の夢見てたんだっけ…?


「もー…っ。いつまで寝てんの!!もうホーム終わったよっ」

「嘘。マジ?」


廻りを見渡すと、明らかに生徒の人数が少ない。

教室に居るのは、5〜6人だった。


けど…何か、変な感じ。

淋しい…?辛い…?哀しい…?

何ともいえない感情が、私の胸を締め付ける。


「愛、怖い夢でも見てたんじゃないの〜?」


悪戯っぽい笑顔を浮かべて、友達は私を覗き込んだ。


「憶えてない…。何の夢見てたんだろ…」


まだ眠気から醒めない身体を動かして、私は鞄を持った。

確か、今日はこのコとカラオケ行く約束して…。


「絶対怖い夢だよー」

「何で」

「だって、愛泣いてるもん」


え………?

私は自分の頬を指でなぞった。

確かに指につく、生暖かい水滴。


「珍しいね、愛が泣くなんて」

「こんなの、泣いた内に入んないでしょ。行こ。カラオケ行くんでしょ?」

「そうっ。今日は歌いまくるぞー!!」

「…良いけど、声潰さないでね」


一瞬、頭を掠めたあの着物の人を振り払って、私は教室を出た。

オレンジの優しい色が、教室を包んでいた。


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