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──現実 東京 朝──

 起きた瞬間、吐き気がした。

 シグマはトイレに駆け込み吐いた。

 何も出ない、胃が空っぽだった。


 「……シグマ」

 アイリスの声。

 心配そうな声。

 「大丈夫だ」

 「大丈夫じゃありません」

 「……分かってる」

 シグマは洗面所で顔を洗った、鏡を見る。

 顔色が青白い目が虚ろだ。

 「NULL化率は」



NULL化率:53.7%

 一晩で1.6パーセント上がっていた。

 「……早い」

 「加速しています。このペースだと、三日で60に到達します」

 「三日」

 「はい」

 シグマは水を飲んだ。

 少しだけ、吐き気が収まる。


 「今日、行くぞ」

 「……はい」

 「《白使徒》が待ち伏せしている」

 「はい」

 「ゼクの情報を信じていいか」

 「……信じるしかありません」

 「そうだな」

 シグマは接続シートに横になった。

 「準備はいいか」

 「はい」

 「結晶の解析は」

 「完了しています。いつでも使えます」

 「分かった」


 「シグマ」

 「何だ」

 「……気をつけてください」


 「気をつける」

 「約束してください」

 「約束する」

 「……はい」

 シグマは目を閉じた。

 ログイン。


──ゲーム内 《廃都ヴァニタス》──

 ログインした瞬間、違和感があった。

 空気が重い。

 いつもより、ずっと重い。


 「……何だ」

 「誰かがいます」

 シグマは周囲を見た。

 廃墟の影に、人影があった。

 五人。

 白いローブ。

 《白使徒》だった。


 「……早いな」

 「待ち伏せしていたようです」

 一人が前に出た。

 フードを取った。

 セラだった。


 《白使徒》のリーダー。

 「ERROR BLADE。ようこそ」

 「……待ってたのか」

 「当然だ。あなたが来ることは分かっていた」

 シグマは剣に手をかけた。


 「ゼクの情報か」

 「ゼク?」

 セラが少し首を傾げた。

 「……彼のことは知らない。別のルートで情報を得た」

 シグマは眉をひそめた。

 「アイリス」

 「……ゼクは裏切っていません。セラは別の方法で知ったようです」


 「別の方法?」

 「Void Systemsからの情報かもしれません」

 セラが続けた。

 「無駄な抵抗はやめて、おとなしく来てくれないか」

 「断る」

 「では、力ずくで」

 セラが手を上げた。


 他の《白使徒》が武器を構える。

 その時、もう一人が前に出た。

 カイトだった。

 「待て、セラ」

 「カイト?」


 「まず、話をさせろ」

 セラが少し考えて、頷いた。

 「五分だけだ」

 「それで十分だ」


 カイトがシグマの前に立った。

 「シグマ」

 「……カイト」

 「お前、まだ諦めていないのか」

 「諦める理由がない」

 「お前のNULL化率は53を超えている。もうすぐ60だ。その先は戻れない」


 「戻れる」

 「戻れない」

 カイトが一歩、近づいた。

 「お前は理想論者だ。全員を救えると思っている。でもそれは無理だ」


 「無理じゃない」

 「無理だ」

 カイトの声が少し強くなった。

 「俺は七人を見送った。コウを含めて、七人。全員、NULL化した。全員、コアに囚われた。何もできなかった」


 「……だから、諦めたのか」

 「諦めたんじゃない。別の方法を選んだ」

 「その方法が、管理者に従うことか」

 「従うんじゃない。利用するんだ」

 シグマは一歩、前に出た。


 「コアを完成させて、全員を救う。それがお前の答えか」

 「ああ」

 「でもコアの中の奴らは、今も苦しんでる」

 「それは一時的な苦痛だ」

 「一時的?」

 シグマの声が低くなった。

 「二年だぞ。コウが消えてから、二年だ。その間、ずっと苦しんでる。それが一時的か?」


 カイトが黙った。

 シグマが続けた。

 「コウは帰りたがってる。今すぐ、あの場所から出たがってる。でもお前は、コアが完成するまで待てと言う」


 「……それしか方法がない」

 「ある」

 「どこに?」

 「俺が見つける」

 カイトが笑った。

 乾いた笑い。


 「……本当に、変わらない」

 「ああ」

 「根拠のない自信だけで動く」

 「それが俺だ」

 カイトが息を吐いた。


 「なら、話は終わりだ」

 カイトが後ろに下がった。

 セラが前に出た。

 「時間切れだ。ERROR BLADE、最後のチャンスを与える。来るか、来ないか」


 「来ない」


 「‥残念、では──」

 セラが指を鳴らした。

 《白使徒》が一斉に動いた。

 シグマを囲む。

 五人。


 全員、レベルが高い。

 「アイリス」

 「はい」

 「逃げるぞ」

 「え、えぇ?!」


 「五人相手は無理だ。逃げて、中層に入る」

 「わ、分かりました」

 シグマは地面を蹴った。

 包囲を突破する。


 《NULL DRIVE》を振り抜く。

 一人の《白使徒》が反応する。

 剣で受ける。

 金属が軋む。

 だがシグマは押し切った。

 相手を弾き飛ばし、包囲を抜けた。

 階段に向かって走る。


 コアへの入口。

 「追うな!」

 セラの声が響いた。

 「中層で待ち伏せする。そっちの方が確実だ」

 シグマは階段を降りた。


──深度120m 外層と中層の境界──

 巨大な扉の前。

 シグマは扉を開けた。

 中に入る。


──中層 第一区画──

 無数の光が浮いている空間。

 意識の断片、声が聞こえる。

 いつもより大きい。

 「帰りたい」

 「誰か」

 「助けて」

 シグマは立ち止まらなかった。

 前に進み、塔に向かう。


 だが途中で止る。

 目の前に、人影があった

 白いローブ。

 《白使徒》だった。

 「……先回りされたか」


 「中層には複数の入口があります。彼らは別ルートで入ったようです」

 人影が三人。

 カイトもセラもいた。

 もう一人、見覚えのない《白使徒》。

 セラが言った。

 「逃げても無駄だ。ここから先には行かせない」

 シグマは剣を抜いた。


 《NULL DRIVE》。

 刃が、さらに黒くなっている。

 「行かせないって言われても、行く」

 「力ずくで止める」

 「やってみろ」

 シグマは地面を蹴った。

 三人に向かって突進。

 《NULL DRIVE》を振り抜く。

 だが──カイトが前に出た。


 大盾を構えている。

 シグマの刃が盾に当たる。

 弾かれた。

 「……盾?」

 「お前の攻撃は読めている」

 カイトが盾を構えたまま言った。


 「三年前、何度も組んだ。お前の戦い方は知っている」

 シグマは後退した。

 距離を取るもセラが動いた。

 魔法詠唱、光の矢が飛んでくる。

 シグマは避けた。

 だがもう一人の《白使徒》が動いた。


 弓を構え矢を放つ。

 矢をシグマは剣で弾いた。

 だが次の矢が来る。

 連射、シグマは避け続ける。


 「……三人がかりか」

 「当然だ。お前は強い。一人では勝てない」

 カイトが言った。

 「でも三人なら、勝てる」

 シグマはスキルゲージを確認した。

 まだ半分、溜まっていない。


 「アイリス」

 「はい」

 「時間を稼ぐ」

 「分かりました」

 シグマは走り空間を移動する。


 三人が追ってくる。

 セラの魔法、弓使いの矢。

 カイトの突進を全部避ける。

 スキルゲージが溜まっていく。

 七割、八割。

 もう少し。だが、体が重い。

 息が上がっている。


 NULL化の影響だ。

 「シグマ、無理をしないでください」

 「ハァハァ、分かってる」

 カイトが再び突進してくる。

 盾を構えて。

 シグマは避けた。


 だが疲労で反応が遅れた。

 盾が肩に当たり吹き飛ばされた。

 壁に背中を打ちつけHPが削れた。



HP: 16,200 / 24,500

 三割削られた。

 「……まずい」

 立ち上がる。


 セラの魔法が来る。

 避けられず直撃。

 HPがさらに削れた。

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