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──深度220m──

 階段を降りて十分が経った。

 足が重い。

 一歩ごとに、体力が削られていく。

 「シグマ、少し休みますか」

 「……いや」

 「でも」

 「止まったら、動けなくなる」

 「……分かりました」

 シグマは降り続けた。

 やがて、階段が終わった。


 広い空間に出た。

 円形の部屋。第一区画と同じ構造。

 中央に台座がある。その上に、球体。

 擬似コア。

 だが今回は、色が違う。

 赤い球体。脈動している。


 生きているような動き。

 「……気持ち悪いな」

 「第二区画のコアです。第一区画より、コアに近い」

 シグマは近づいた。球体が反応した。

 脈動が速くなる。

 「……反応してる」

 「あなたのERROR BLADEのデータに反応しています」

 「俺を認識してるのか」

 「はい」

 その時、球体から光が走った。


 赤い光。

 シグマに向かってくる。

 「避けてください」

 シグマは横に飛んだ。光が床を砕く。

 爆発。

 破片が飛ぶ。

 「……攻撃してきた」

 「第二区画の擬似コアは防衛機能を持っています」


 「聞いてない」

 「すみません」

 球体から再び光が走る。シグマは避け続ける。

 反撃できない。近づけない。

 「どうすればいい」


 「門番を倒してください。門番を倒せば、擬似コアの防衛機能が停止します」

 「門番は」

 「もうすぐ来ます」

 その瞬間、部屋の奥から足音が聞こえた。

 重い足音。金属の足音。

 何かが来る。

 現れたのは、騎士だった。


 黒い甲冑。

 だがAlphaやBetaより大きい。

 背丈が三メートル近い。

 武器は片手斧、両手斧、巨大な刃。

 表示が出た。



名称:Guardian Gamma

CLASS:門番

HP:550,000 / 550,000

LEVEL:145

 門番。

 第二区画の、二体目の門番。


 「……また門番か」

 「第二区画には複数の門番がいます」

 「何体いる」

 「分かりません」

 「……面倒だな」

 Gammaが斧を構えた。


 シグマは剣を抜いた。

 《NULL DRIVE》。

 刃が、さらに黒くなっている。

 NULL化が進んだ影響だ。

 「来い」

 Gammaが動いた。

 速い。


 BetaよりGammaの方が体が大きい。

 だが速度は変わらない。斧が振り下ろされる。

 シグマは避けた。

 床が砕ける。衝撃波が走る。

 シグマは吹き飛ばされた。

 壁に背中を打ちつける。

 HPが削れた。



HP: 18,900 / 24,500

 四分の一削られた。

 直撃していないのに。

 「……強い」

 「Gammaは第二区画で最も強い門番です」

 「最も強い、か」


 シグマは立ち上がった。

 Gammaが再び攻撃してくる。

 横薙ぎ。

 シグマは剣で受けた。金属が軋む。

 押される、力が違う。

 後退する、壁まで押し込まれた。

 「シグマ」

 「分かってる」

 シグマは体を捻った。

 Gammaの斧を逸らす。

 反撃。

 《NULL DRIVE》を叩き込む。


▶ -10,230

HP: 539,770 / 550,000

 ダメージが入った。

 だが削りが浅い。Betaより硬い。

 Gammaが距離を詰める。


 連撃。

 シグマは避け続ける。

 だが体が重い。反応が遅れる。

 斧が掠めた。HPが削れる。



HP: 12,400 / 24,500

 半分切った。

 「……まずい」

 「ポーションを使ってください」

 「持ってない」

 「え‥」


 「ソロだから、ポーションは使わない主義だ」

 「今は使ってください」

 「だから持ってない」

 「……どうして」


 「そういう主義だ」

 「主義主張しているの場合じゃありません」

 シグマは少し笑った。

 「……お前、怒ってるか」


 「怒っています」

 「珍しいな」

 「珍しくありません。よく怒っています」

 Gammaがまた攻撃してくる。


 シグマは避けた。

 スキルゲージを確認した。

 半分。まだ溜まっていない。

 「時間を稼ぐぞ」

 「分かりました」


 シグマは部屋を走った。

 Gammaが追ってくる。

 遅い。体が大きい分、小回りが効かない。


 距離を取れる。

 だが、擬似コアがある。

 擬似コアが光を放つ。

 シグマに向かってくる。


 「……両方から攻撃されてる」

 「門番を倒すまで、擬似コアは止まりません」

 「分かってる」

 シグマは光を避けながら、Gammaも避ける。

 スキルゲージが溜まっていく。

 七割。

 八割。


 もう少し。

 Gammaが斧を振り上げた。


 大振り。隙がある。

 「今だ」

 シグマは地面を蹴った。

 Gammaの懐に入る。

 スキルゲージ、満タン。


 《NULL DRIVE:オーバードライブ》

 全力の一撃。

 刃が装甲を貫いた。



▶ -142,300

CRITICAL HIT

HP: 397,470 / 550,000

 大きく削れた。だがまだ倒れない。


 Gammaが反撃してくる。

 至近距離。

 避けられない。斧が来る。

 その瞬間──


 白い光が走った。アイリスが姿を現した。

 彼女がGammaの斧を受け止めた。


 素手で。

 「シグマ、下がってください」

 「お前」

 「早く」

 シグマは後退した。アイリスがGammaを押し返す。

 空中に光の筋を描く。

 《SYSTEM OVERRIDE》


 Gammaの動きが止まった。

 「今です。擬似コアを破壊してください」

 シグマは台座に向かって走った。


 擬似コア。赤い球体。

 《NULL DRIVE》を振り抜く。


 刃が球体を貫いた。

 球体が割れた。光が溢れる。


 爆発。

 シグマは吹き飛ばされた。床に叩きつけられる。

 HPが削れた。



HP: 4,120 / 24,500

 瀕死に近い。

 だが、効果はあった。

 擬似コアが消えたことで、Gammaの動きが鈍くなった。


 防衛機能が停止した。


 アイリスの姿が薄くなる。

 「もう保ちません」

 「分かった」

 「Gammaを倒してください」

 「……ああ」


 アイリスの姿が消えた。

 シグマは立ち上がった。

 体が重い。HPがほぼない。


 だがまだ動ける。

 Gammaが動きを取り戻す。


 だが擬似コアがないせいか、動きが遅い。

 シグマは地面を蹴った。

 最後の力を振り絞る。


 《NULL DRIVE》を叩き込む。

 一度、二度、三度。

 ダメージが蓄積する。

 GammaのHPが削れていく。


 残り一割。

 もう一撃。

 シグマは剣を振り抜いた。

 Gammaの中心を貫いた。



▶ -55,030

HP: 0 / 550,000

 Guardian Gammaが崩れた。

 光になって消えていく。

 

 シグマは膝をついた。

 息が上がっている。

 視界が霞んでいる。


 「……終わった、か」

 「はい」

 「……お前、また姿を出した」

 「必要だったので」

 「管理者にバレる」

 「バレます。でも、あなたが死ぬよりはいい」

 シグマは何も言わなかった。


 ログアウトボタンを確認した。

 青かった。

 「帰る」

 「はい」

 「明日、また来る」

 「……無理をしないでください」

 「無理はしない」

 「嘘です」

 「……お前には分かるんだったな」

 「統合しています」

 シグマは少し笑った。

 「……便利だな」

 「便利ではありません。心配です」

 「心配するな」

 「できません」

 ログアウトした。


──現実 夜──

 接続シートから起き上がった瞬間、また倒れた。

 今度は完全に。

 意識が飛びかけた。


 「シグマ!」

 アイリスの声が遠い。

 「……大丈夫」

 「大丈夫じゃありません」

 「大丈夫だ」

 シグマは壁に手をついた。

 這って、ベッドに辿り着いた。


 横になった。体が動かない。

 「……51%でこんなに辛いのか」

 「はい」


 「60%になったら、もっとひどくなるのか‥」

 「……はい」

 「それでも、行く」

 「なぜ」


 「……止まれないから」

 アイリスが黙った。

 「……シグマ」

 「何だ」

 「私、怖いです」

 「何が」

 「あなたが消えることが」

 シグマは目を閉じた。


 「……消えない」

 「根拠は」

 「俺が言ってる」

 「……それだけですか」

 「それだけだ」

 アイリスがまた黙った。


 今度の沈黙は、長かった。

 「……分かりました」

 「何が」

 「信じます」

 「根拠は」

 「あなたが言ってるから」

 シグマは少し笑った。


 「……お前、賢いな」

 「学習しました」

 「何度目だ、それ」

 「何度でも言います」

 シグマは眠りに落ちた。


 その夜、アイリスは一人で考え続けた。

 このままでは、シグマが壊れる。

 でも止められない。

 なら、どうすればいい。

 答えは、まだ見つからなかった。


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