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──《廃都ヴァニタス》地下──
階段の前に立った。
コアへの入口。
前回と同じ場所。
だが今日は違う。
「準備はいいか」
「はい」
アイリスの声が、頭の中から聞こえた。
近い。
いつもより、ずっと近い。
シグマは階段を降り始めた。
──深度120m 外層と中層の境界──
巨大な扉の前。
前回開けた扉。
今も開いている。
シグマは中に入った。
──中層 第一区画──
無数の光が浮いている空間。
意識の断片。
声が聞こえる。
「帰りたい」
「誰か」
「出して」
シグマは立ち止まらなかった。
前に進む。
「シグマ」
「何だ」
「《BLANK》の追跡はありません。今のところ」
「油断するな」
「はい」
塔が見える。
Guardian Alphaがいた場所。
入口に入る。
螺旋階段が現れた。
階段を上る。
──深度155m Guardian Alpha撃破地点──
階段の途中。
前回、Alphaと戦った場所。
床に傷が残ってるが敵はいない。
「門番は復活していないようです」
「一度倒せば、もう出てこないのか」
「おそらく。各区画に一体だけの配置かもしれません」
「なら先を急ぐ」
「はい」
階段を上り続けた。
──深度180m 第一区画最上部──
円形の部屋に出た。
中央に台座がある。
その上に、青白く光る球体。
擬似コア。
そして──
球体の前に、人影があった。
黒いローブ、副管理者アルファだ。
「……来たか」
声が響いた。
「ERROR BLADE。また来ると思っていた」
シグマは剣を抜いた。
《NULL DRIVE》。
黒と白が混ざった刃。
「前回は逃がしてやった」
アルファが言った。
「だが今日は違う。お前がここまで来た以上、見逃すわけにはいかない」
「別に見逃してもらう気はない」
「……強気だな。何か変わったか」
シグマは答えなかった。
代わりに、地面を蹴った。
突進。
《NULL DRIVE》を振り抜く。
刃がアルファに届く──
前回と同じように、空間が歪んだ。
目に見えない壁。
だが今回は違う。
壁が割れた。
刃が通った。
アルファが後退した。
「……何だ」
初めて、動揺の色を見せた。
「お前の壁、効かなくなったな」
シグマが言った。
アイリスの声が響く。
「《IRIS PROTOCOL》が機能しています。あなたのデータがアルファの干渉を無効化している」
アルファが右手を上げた。
空中に光の筋が走る。
《SYSTEM OVERRIDE:REVERSE》
前回、シグマの動きを書き換えたスキル。
だが今回は──
シグマの体が止まらなかった。
動ける。
「……これも無効化されている」
アイリスが言った。
「私があなたの中にいる限り、アルファの書き換えは届きません」
アルファが両手を上げた。
《SYSTEM OVERRIDE:MULTI-LAYER》
より複雑な書き換え。
前回、完全にシグマを拘束したスキル。
だが今回も──
シグマは動けた。
一歩、前に出る。
「……バカな」
アルファの声が初めて、乱れた。
「なぜだ。お前はERROR BLADEだが、所詮データだ。書き換えられるはずだ」
「書き換えられない」
「なぜ」
「俺の中に、お前が触れられないものがあるから」
シグマは地面を蹴った。
《NULL DRIVE:オーバードライブ》
刃が黒と白に染まる。
空間が歪む。
一閃。
アルファの防御を貫いた。
▶ -85,240
CRITICAL HIT
ダメージが入った。
アルファが膝をついた。
初めてだった。
「……お前、何をした」
「何もしてない。ただ、一人じゃなくなっただけだ」
アルファが顔を上げた。
フードの奥の赤い光が、シグマを見る。
「……一人じゃない?」
「ああ防衛AI、か」
アルファが立ち上がった。
「なるほど。だからお前のデータが変わった。AIと統合したのか」
「そうだ」
「……愚かな」
「AIと統合すれば、お前のNULL化はAIにも影響する。お前が消えれば、AIも消える」
「分かってる」
「分かっていて、やったのか」
「ああ」
アルファが少し間を置いた。
「……理解できない。お前たち人間は」
「理解しなくていい」
シグマは剣を構え直した。
「お前を倒して、先に進む。それだけだ」




