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Code:0x09

──深度150m──

 構造物に近づいた。

 塔のような形。細長い、黒い建造物。高さが測れない。上が見えない。

 入口がある。

 開いている。

 シグマは中に入った。

 螺旋階段。

 また階段だ。今度は上に続いている。


 「……上るのか」

 「中層は垂直構造です。区画ごとに高さが違う。第一区画は塔の形をしている」

 シグマは階段を見上げた。

 遠い。

 「行くしかないな」

 「はい。ただ──」

 アイリスの声が止まった。


 「ただ?」

 「……何か、います」

 シグマは剣に手をかけた。

 「どこだ」

 「上。階段の途中。大きな反応」

 「敵か」

 「分かりません。でもこの反応は──」

 そのとき、音がした。

 上から。

 足音。

 重い、金属の足音。

 何かが降りてくる。


 現れたのは、騎士だった。

 黒い甲冑。

 だが、管理者ではない。

 背丈が小さい。シグマと同じくらい。武器は槍。片手に盾。

 顔は見えない。兜の奥に、赤い光が二つ。

 表示が出た。


名称:Guardian Alpha

CLASS:門番

HP:350,000 / 350,000

LEVEL:125


 門番。

 シグマは剣を抜いた。

 「門番、か」

 「中層を守る存在です。管理者ではない。でも──」

 Alphaが槍を構えた。


 「──強い」

 アイリスの声が緊張していた。

 Alphaが動いた。

 速い。

 シグマは反射で剣を構えた。槍が来る。弾く。火花が散る。


 重い。

 力がある。

 シグマは後退した。距離を取る。

 「こいつ、倒さないと先に行けないのか」

 「おそらく」

 「……面倒だな」

 Alphaが再び突進してきた。

 槍の連撃。シグマは横に避ける。《NULL DRIVE》で反撃。


 刃が装甲に当たる。

 ダメージが入った。


▶ -8,420

HP: 341,580 / 350,000

 削れる。倒せる。

 だが時間がかかる。

 シグマはスキルゲージを確認した。まだ溜まっていない。


 Alphaが盾を構えた。

 突進。

 シグマは避けられなかった。

 盾が直撃する。

 吹き飛ばされた。

 壁に背中を打ちつける。痛覚フィードバックが走る。

 HPが削れた。


HP: 18,240 / 24,500

 一撃で四分の一削られた。

 

 「……強い」

 「シグマ!」

 アイリスの声が響いた。

 Alphaがまた来る。

 シグマは地面を蹴った。横に転がる。槍が床を砕く。


 立ち上がる。反撃。《NULL DRIVE》を叩き込む。

 二度、三度。

 ダメージが蓄積する。

 だがAlphaは止まらない。

 シグマのHPも削れ続ける。


 五分が経った。

 AlphaのHPは半分を切っていた。

 シグマのHPは三割を切っていた。

 このままでは、負ける。

 「シグマ、一度撤退を」

 「……いや」

 「でも」

 「倒す」

 「根拠は」

 「俺が言ってる」

 アイリスが黙った。

 シグマはスキルゲージを確認した。

 満タンだった。


 「今だ」

 地面を蹴る。

 Alphaの懐に入る。

 《NULL DRIVE:オーバードライブ》

 新しいスキルが発動した。

 刃が黒と白に染まる。空間が歪む。

 一閃。

 Alphaの装甲を貫いた。


▶ -120,480

CRITICAL HIT

HP: 42,100 / 350,000

 大きく削れた。

 だが、まだ倒れない。

 Alphaが槍を振り上げる。


 最後の一撃。

 シグマは避けられなかった。

 槍が来る。

 その瞬間──

 白い光が割り込んだ。

 アイリスだった。

 姿が現れた。白い装甲の少女。

 彼女が槍を受け止めた。素手で。


 「え」

 シグマが声を出した。

 「アイリス、お前」

 「大丈夫」

 アイリスがAlphaを押し返す。

 「今です。シグマ」

 シグマは動いた。

 最後の一撃。

 《NULL DRIVE》を叩き込む。

 Alphaの中心を貫いた。


▶ -42,100

HP: 0 / 350,000

 Guardian Alphaが崩れた。

 光になる。消えていく。

 沈黙。

 シグマはアイリスを見た。


 「……姿を出したのか」

 「必要だったので」

 「管理者に位置がバレるんじゃ」

 「……分かっています」


 「それでも出たのか?」

 「あなたが死ぬよりはいい」

 シグマは何も言わなかった。

 アイリスの姿が、少しずつ薄くなっていく。


 「長くは保てません。すぐに戻ります」

 「分かった」

 「シグマ」

 「何だ」

 「……ありがとう」

 「何が」

 「来てくれて」

 シグマは答えなかった。

 アイリスの姿が消えた。

 声だけが残った。


 「今日は、ここまでです。NULL化率が上がりすぎている。一度戻りましょう」

 シグマはステータスを確認した。


NULL化率:47.8%

深度:155m

状態:疲労

 5パーセント近く上がっていた。

 「……分かった」

 「ログアウトできるか試してみます」

 数秒の沈黙。


 「できます。まだギリギリ外層に近い。ここなら帰れる」

 シグマはログアウトボタンを確認した。

 青かった。

 「また来る」

 「はい」

 「次は、もっと先まで行く」

 「……はい」

 シグマはログアウトした。


 中層の第一区画に、静寂が戻った。

 Guardian Alphaは消えた。

 だが、その先にはまだ敵がいる。


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