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亜駆男

オレは高級ホテルのナイトプールで美女たちと戯れた後、部屋に戻った。ちょっと休んで高級コールガールを呼んでルームサービス頼んで一緒に飯でも食ってセックスすっかな。オレはテーブルのリモコンを手にとってベッドにダイブしながら電源をつけた。

「北海道の網走にある女子刑務所に面会の行列ができている囚人がいます」

ふーん。どうでもいいな。ケツをぽりぽりかく。

「名前は七瀬さん。大富豪を殺害した16才の少女です」

「なんだと!」

オレは思わず起き上がった。七瀬、オレが殺したじじいの罪をなすりつけた女だ。金の力で終身刑の判決を出させて一生刑務所に閉じ込めてやった。

内通してる刑務官から得た情報では意気消沈してもう死人同然。ゾンビのような囚人生活を送っている、と聞いている。

1年前に嘲笑の手紙を送ったきりもう存在を完全に忘れていたぜ。オレにとってあの女は死んだも同然の虫ケラだからだ。

「彼女に悩みを相談したいという人々が殺到して、七瀬さんへの面会は予約待ちになっています。ここで相談した人たちの感想を聞きましょう」

若い美女が恍惚の表情で手を合わせて七瀬について語る。

「七瀬さんはとっても優しい声をしてるんです。神秘的で包み込むような心に響く包容力のある声なんです。あのかたは絶対に無罪です」

次は中年のおっさんが映し出される。

「美しいんです。まるで天使です。透き通った目をしている。あの目に見つめられるとそれだけで心が温かくなります。相談にも真摯に答えてくれて常に善い方向に導いてくれる。善道ですよ。冤罪に決まってます。不当判決だ」

次はババアだ。

「七瀬ちゃんはなぁ、とーっても思いやりのあるええ子なんじゃ。わしの話に一緒になって悲しんでくれて喜んでくれる。わしゃうれしゅうてうれしゅう涙が止まらんかったわい。わしの話をあんなに真剣に聞いてくれる人は今までこの世におらんかった。七瀬ちゃんにならわしの全財産をくれてやってもええ。冤罪を生み出した裁判官は罰当たりじゃのお。地獄に堕ちんさい!」

今度はガキだ。

「なーたんは笑顔がすごく可愛いの。あの笑顔を見てたら嫌なこと全部吹き飛んで心も体も軽くなっちゃう。悪いことなんかぜったいにしてません!」

どいつもこいつも七瀬の冤罪を主張しやがる。

カメラを向けられた相談者は七瀬への賞賛を繰り返す。やさしい声、透き通った瞳、温かいまなざし、明るい笑顔、同じ立場に立ってくれる、思いやりがある美少女。誰だそいつは?あいつはヤンキーファッションに身を包んだ目つきの悪いクソガキだ。暴力でいじめを解決してきた乱暴者で仲間は暴走族で超貧乏で気品の欠片もない女。それが七瀬だ。

モザイク付きだが同じ雑居房のメスブタもインタビューに答えてやがる

「七瀬ちゃんのおかげで刑務所の空気も変わりました。やわらかくて過ごしやすい空気になったんです。いじめもなくなりました。私が風邪を引いてた時に布団が窓側だったんですけど場所をかわってくれて自分の布団を私にかけてくれました。自分はいいからって。こんな人、外の世界にもいないと思います」

画面がテレビの司会に切り替わる。

「みなさんが口をそろえておっしゃるのは、すばらしい人間性を持ち合わせてるということ。それと彼女は冤罪だと訴えてますね。七瀬さんを解放しろという署名運動やデモが全国で起き始めています。あの事件には大きな闇があるとささやかれています。政府が動くと良いですね」

オレはリモコンをテレビに向けてぶん投げた。最悪な気分だぜ。いったい何がどうなってやがる。あの女、どんな魔法を使いやがった。苛立ちがオサマらねぇ。高級コールガールに電話を繋ぐ。部屋に来た娼婦を乱暴に抱いた。しかし七瀬の件で頭がいっぱいでオレはまったく楽しめなかった。


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