脱獄計画
あたいたちは作戦を練り脱獄計画を練った。あたいには脱獄して母ちゃんの目の治療費を稼ぎ亜駆男を一発ぶん殴ってやると言う2つのミッションがある。
最初の計画は定番の穴掘りだ。部屋の壁に古くなっている部分があると言うので食堂から拝借したスプーンでみんなで懸命に掘った。看守に穴がバレないように刑務作業中で部屋を開ける時や看守の見回りの時は猫のポスターを貼っていた。
穴を掘り抜けると配管スペースになっていたのでそれを伝って屋上に出た。屋上に出る時、天井のフタに手が届かなかったので子分2人に協力してもらった。子分2人で肩車をしてもらって、それをハシゴに登れば天井の蓋に届きどうにかあたい1人は外に出られた。
看守の目をあざむくために石鹸、トイレットペーパー、人間の髪の毛(刑務所の理髪店から集めた)で作った精巧な偽の頭部を布団に置いてきた。
屋上から外に出たあたいはハシゴで地上に降りて塀の近くに立ってる木に登った。木から門の外へジャンプする。あたいは見事に横転着地を決めた。これは衝撃を回転や体の各部位に逃がす技術だ。着地の衝撃は体重の10倍以上になるため、膝を曲げ、前方向の慣性を活かして、滑らかに転がる(ローリング)技術が必須なんだ。
勝利を確信して笑みを浮かべた瞬間、まばゆい光があたいを包んだ。目の前に刑務官たちがずらりと並んでいた。あたいは捕まって独居房に入れられた。
失敗した原因はあたいたちがコソコソしているのを他の囚人にチクられたからだ。
次は畳を外してスプーンで床に穴を掘った。交代しながら徹夜で夜通しモグラのように掘り進んで掘り抜けてついに塀の外まで掘った。あばよっと地上に顔を出したところでまたまばゆい光に目がくらんだ。この計画も失敗した。掘った土をポケットに入れて運動場に持ち運んでいたが、運動場の土の色の違いでバレた。
3度目は集団脱走を計画した。子供のいる囚人には「あんたの3歳になった娘そろそろ歩き始めたじゃんないか?」と言って里心がつくように仕向け恋人がいる囚人には「あんたの彼氏うちの妹と浮気してるよ」と吹き込み怒りを植え込み、母親思いの囚人には「あんたのせいでお母ちゃん村でいじめられて村八分だそうだよ」と吹き込み親孝行したい良心を強く呼び起こさせた。
子分どもにも協力してもらって囚人たちの塀の外に出たい気持ちを丁寧に育てた。囚人にたちの外に出たい気持ちがMAXまで強まった時に集団脱走の計画を提案する。運動場のサッカーの試合の時に大乱闘を起こし止めに来た刑務官たちと他の囚人たちがもめてる間に脱獄するのだ。しかし刑務官たちともめる役の囚人たちは脱獄できない。それも計算のうちだ。脱獄意欲の低い囚人にはあたいの影でこっそり上半身ヌードを見せてやることで協力してもらった。脱獄後にはヌード写真集も送ると伝えて取引している。
あたいはぴちぴちのいい体をしていて入浴の時間はみんなの視線が痛い。もっとゆっくり観たいと老若男女思っている。そこで上半身だけ影でこっそり見せて下半身ふくめた全裸は脱獄後にヌード写真集として差し入れると約束した。効果は絶大だった。
決行の日、刑務官ともめる役の囚人たちは見事な活躍を見せた。刑務官たちをみんなで取り押さえて無力化したのだ。あたいは残りの数100人の囚人たちにまぎれて門から堂々と脱走したところでお縄になった。門の前に機動隊がずらりと並んでいてアリ1匹外に出られない陣容だった。サッカーの試合の大乱闘の混乱に乗じて集団脱走する計画も失敗した。計画が失敗した理由は所長が万が一の不測の事態のためにサッカー試合の時の警備を警察に要請していたからだ。刑務所を預かるものとしての第六感が働いたのかもしれない。あたいの脱獄計画はことごとく失敗に終わった。
独房から戻ってきたあたいに仲間たちは冷たかった。
もうあきらめたほうがいいと言うのだ。
「出所しても指名手配されて働けないからお母さんの目の病気の治療費は払えないいんじゃないかな?」
「亜駆男を殴ろうにも居場所がわからないでしょ。海外で遊んでいるかもしれない。どこにいてもボデガードがいて屋敷には警備員もいるから返り討ちに合うの可能性が高い」
子分たちはあたいの反抗心を砕きにくる。しかし、子分たちの言ってることは至極まともな意見だった。あたいはしばらく1人にしてくれ、と伝えた。壁の隅で体育座裏をして落ち込む。脱獄を諦めると言うことは死ぬまで塀の中で暮らすと言うことだ。
人生の終わりを意味する。外で待つ母ちゃんや妹や子分たちのこともあるが、恋だってまだしてない。男の味も知らない。まだ16才だ。諦めると言う決断はあたいにとって死刑判決に等しかった。




