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復讐完了

わたしはアクリル板の向こうにいる囚人服の亜駆男に微笑みかけた。

「逃げ回っていましたけど、ついにお縄になりましたね。なかなかに無様でしたよ」

国際指名手配された亜駆男は世界中逃げ回っていたが南米のマフィアグループに匿われてるところを捕まった。マフィアたちは全員死亡して生け捕りは亜駆男だけだ。終身刑の判決を下されたので死んだほうがマシだったかもしれない。

「うるせえブース!」

「あらあら。わたしはみんなから美少女といわれていますのに。悲しいですわ」

「かまととぶりやがって、ヤンキーのくせによぉ」

「いまは身も心も天使ちゃんです」

「うそつけ、信じられるかよ」

わたしは微笑みを浮かべて気になっていたことを問う。

「あなたはなぜおじいさまを殺したのですか?」

「んなこと教えるわけねーだろ。帰れタコ!」

「わかりました。本日のところはこれで失礼します」

わたしは立ち上がる。

「もう2度と来るんじゃねえ!」

「あなたはわたしを冤罪に陥れました。刑務所ではさぞかしいじめられているでしょうね」

「いじめられるかよ。てめえの影響で気持ちの悪い善人ばっかだ。毎日毎日、悔い改めましょうで頭が悪くなるぜ!」

やっぱりそうだった。わたしは微笑みを残して立ち去り1ヶ月後に再び亜駆男を訪ねた。そして同じ質問をした。亜駆男は今度は答えてくれる。

「あいつがお前に遺産10兆円を譲るといったからだ」

やはりあの時、おじいさんがプレゼントと言っていたのは遺産のことだったのだ。すでに遺言書を作成していてわたしに渡すつもりだったのだろう。

「大金ですけど、500兆円のうちの10兆でしょ?べつにくれてやってもよかったのでは?」

「許せなかった。オレは1円でも自分のものが他人の手に渡るのは許せねえ男なんだ。それにじじいはオレよりお前を大事にしていた。じじいはお前を殺さないようにオレに懇願したんだ。お前に10兆円渡せば、オレが怒ってお前を殺すかもしれない。それだけは絶対にしてくれるな。たかが10兆円。残りはぜんぶお前のもにだってな。じじいは孫のオレより他人のお前に1番の愛情を注ぎやがった。それがオレには許せなかった」

「1番の愛情とは限らないのでは?」

「オレにはわかるんだよ。じじいの目と態度でな」

「あの夜のあなたの行動を教えてください。警察でも詳しいことは黙秘してましたね」

「昼間、じじいに呼ばれて部屋に行ったらじじいがてめえに10兆円の遺産を譲るために遺言書を作成していた。オレにてめえを怒って殺すなと懇願しやがった。その場は了解した。夜にてめえがきて遺言書を渡すためにじじいは部屋に戻った。オレはスマホで執事長とメイド長に全員を帰宅させろと命じた。それからじじいを殺して逃亡した。あとは知っての通りだ」

「あなたが素直になったのはだんだん悪の心が消えているからですね。善人ばかりに囲まれた微笑まれ、優しくされたことであなたのかたくなだった心はほぐれて罪悪感を覚えるようになった。つまりやさしくなってしまった」

「どうだかな。よくわかんねぇよ」

亜駆男の目から以前より険が取れている。わたしは1通の手紙を取り出した。

「これは生まれ変わる前のわたしからのあなたへ手紙です。少し長いですが読みますね」

この手紙は無財の七施を実行する直前にわたしがしたためたものである。

「おい亜駆男!あたいはいまの自分を捨ててでもてめえに復讐することに決めた!あたいの脱獄計画は必ずうまくいって、てめえを牢獄にぶち込み一生鎖につなぐだろう。てめえまだ22だろ?ムショは健康的な生活を送らされるから100まで生きるぜ?これからなげーな。一生女も抱けねーしごちそうも食えない。性欲をまだまだ持て余す年頃だろうし、同性愛に転向すっか?閉ざされた監獄の中で自分が今までにしたことを反省して悔い改めやがれ!ムショでじじいになってきれいな心で天に召されろ!竜の国の終身刑は仮釈放なしだから妙な期待はしねえほうがいいぜ!てめえは自殺するようなタマじゃねえし監獄から逃れる唯一の方法も防がれちまって完全に詰んでるな!てめえは善人に生まれ変わるしかねえんだよ!苦しみから逃れるためにはな!あたいはこれから外に出ていい男に抱かれまくって気持ち良くしてもらってごちそうをくらう!てめえの牢獄での苦しみを想像しながらな!メシうまだぜ!じゃあな!あっかんべー」

亜駆男は絶句している。自分がしたことがすべて跳ね返ってきた感覚なのだろうか。この手紙は一応あとで刑務官から渡してもらおう。読み返したいタイプかもしれないし。必要なければ破り捨てるだろう。これから一生、刑務所の中で反省の日々を送る哀れな囚人を慰めておく。

「わたしはあなたに追い詰められたせいで、以前の自分を捨てて善人へと生まれ変わりました。善人も悪くないですよ?」

亜駆男からの返答はない。

「わたしは他人の不幸に優越感を覚えながら快楽にも浸りませんのでご安心を。もうわたしに2度と会いたくはないでしょうからここには来ません。なにかおっしゃりたいことがあれば、お手紙でもください。ではでは」

刑務所を出ると空は晴れ渡っていた。清々しい気分だ。

かっこいいバイクの前で待っているヤンキーファッションの少年がわたしにヘルメット投げよこす。彼はわたしの1番の子分でわたしが収監中は母と妹をすごい気にかけてあれやこれやと世話を焼いてくれていた。わたしのお気にだ。

「七瀬。どこに行きたい?」

「海!」

わたしは彼の背中につかまり風になった。





七瀬が刑務所の囚人たちや自分に面会に来る人たちを仏教の教えでどんどん善人に変えていくことで、塀の外側の世界も善人であふれてしまい悪人の亜駆男のたくらみも海の藻屑と消えるっていうストーリーにしたかった。うまくいってない気がする。力量不足。ちなみに筆者は佛教大学です。

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