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短編まとめ

ヘンテコなあなたが好きですよ

作者: よもぎ

小さなころに決まった婚約者は、変わり者だ。

見た目はキラキラしていて、顔も整っていて、スタイルもよく、長身だ。

性格も大変温厚で人もいいが、かといって貴族らしい腹の探り合いが苦手なわけでもない。

ではどこが。



庶民風に言うなれば、【オネェ】なのだ。



貴族男性として髪を伸ばすのは問題ないのだが、女性的な髪型をするのを好む。

プライベートでは巻きスカートを重ね履きし、使う香水もやや女性的だ。

喋り言葉もプライベートでは女言葉である。プライベートでない時はきちんと男性らしい言葉遣いなのだけど。


しかし好きなのは婚約者――私だと言う。


要するにまあ、異性愛者だということ。

同性愛者ではなかったし、表向きは問題ないので跡継ぎとして認められている、というのが現実で。

私はただありのままの彼、ラインハルトが好きなので、何もかもを否定しないでいる。

今日も今日とて、お互いの趣味に沿う雑貨屋での買い物を目当てに会ってきたところだ。

そこで、お互いが使うことのあるプライベート用便箋と封筒を買ってきたので、部屋で眺めては「ああやっぱりセンスがいい」と感嘆している。


文字を書くのにも読むのにも邪魔にならない程度の薄さで、けれどきちんと存在感を示す百合の透かしが入った便箋と。

緑の若草広がる草原をモチーフにし、片隅に可愛らしい野ウサギが描かれた封筒と。

これは、大事に使おう。




ただ、私にとっては誰よりも素敵で誰よりも大切な婚約者なのだけども。

人によってはなよなよしいだの、異常者だの、酷いことを思っていたりもするらしい。

よりにもよってラインハルトの一つ年下の弟もそのたぐいで、私に対して、



「兄上は異常だ。僕が家督を継ぐことになんとかするから、僕の妻にならないか」



などと言ってくる。

その度にお断りしているのに、何度もしつこくって辟易する。

あちらのご当主様はラインハルトの実力を認めているし、今更揺らぐものもないのにね。

確かに変わり者ではあるけれど、異常というほどではないと思うの。

少なくとも時と場合をわきまえているのだし。

父親になったらそのあとは大変ねぇなどと言っているから、子供の前では男性風でいこうと思っているのかもしれないし。

きちんと考えているのだから、別によくないかしら?と思ってしまうのだ。




さて、私たちはあと一年ほどもすれば結婚する間柄。

次期当主とその婚約者、なんて関係の人たちや、新婚の人たちが集まる夜会や茶会には出来るだけ顔を出しているのだけれど。

そこで、ラインハルトについての悪い話――いえ、実際のところの話を噂として聞くようになったの。

しかも、私はフェイクの、偽物の婚約者で、同性愛者として愛している者がいるとかなんとか。

私がはっきりと全て嘘ですと笑顔で答えて見せているから沈静化に向かってはいるのだけれど。


まあ、親しい友人にさえ見せない姿がなぜ露呈しているかと調査を両家でしてみたのよね。

そうしたら弟君が噂を流していたという結果が出て。

あちらのご当主様はもうカンカン。



だからでしょうね。

弟君はそれから間もなく「病で」亡くなられたわ。

葬儀は家族でのみということになって、どこへ埋葬したのかさえ教えてもらえない始末。

まあ、毒殺よね。



ラインハルトから、察してはいるだろうけれど黙っていてね、と手紙が来たので、よく分からないけれどお悔やみ申し上げます、と返したわ。

私としては鬱陶しかった人が消えたので万々歳。

家を出されてもあんな感じじゃあ、ね。

いつラインハルトの命を狙うか分かったものじゃないんだもの。

もしくは出された分家とかその辺から下剋上を狙うとか。

冗談じゃないわ。


私は別に波乱万丈苦労の連続の人生なんて送りたいわけじゃない。

むしろ、ラインハルトと一緒に穏やかで満ち足りた人生を送りたいと願ってる。

だから、不穏分子がいなくなってくれてせいせいした部分があるのよね。

最近のあの人の視線、粘っこくてねちっこくて本当に嫌だったもの。



ただでさえラインハルトがマリッジブルーで大変なのに、煩わせないで欲しいのよね。

本当に私でいい?こんな、女性みたいに振舞う男で本当によくて?なんて聞いてくるのよ。

それはこっちのセリフのはずなのだけど?と突き放すこともあるわ。

毎度毎度甘い対応していられないし。


でも基本的には構わない、好きよ、って言うのだけどね。

でもでもだってって可愛く拗ねるのだもの。

面倒さ二割、可愛い六割、大好き二割。

人前では僕のような粗忽者に嫁いでくれるなんて最高の婚約者です、なんて笑えるのにね。



私はどんなあなたでも大好きなのだから、もっとしっかりしなさい。



次にめげていたら、こんな言葉でもかけてみようかしら。




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