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無敗の軍神は愛しき夫の子を孕む  作者: 天田 れおぽん @初書籍発売中


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第4話 ラファーガの初恋 2

 イーリスは頭がよく、魔法も使うことができた。


 ある日。

 ラファーガは、意地悪な同年代の少年たちの企みにより泥だらけにされた。


「なんだ、ラファーガ。真っ黒じゃないか」

「ちょっと転んじゃっただけだよ」


 ラファーガは覗き込んでくるイーリスの視線を避けるようにプイと横を向いた。

 イーリスはそんなラファーガの事情を全て知っているように細かなことは聞かず、悪戯な笑みを浮かべて手招きする。


「フフ。ラファーガ、こっちおいで。ちょっとだけだけどオレは、魔法が使えるんだ」


 イーリスは右手を軽く握って、人差し指をピンと伸ばした。

 形が整っていてスラリとした長い綺麗な指先に、ピョンと水が跳ねる。


「えっ? 何で?」


 ラファーガはびっくりして目を見開き、イーリスの指先で跳ねる水を見つめた。

 イーリスは得意げに胸を張ると指先を踊らせるようにしてラファーガへと向けた。


「フフ。だからこんなことも出来ちゃうんだよ」


 水はイーリスの指先からピョコンと跳ねてラファーガの体へと落ちた。


「わっ⁉」


 水はラファーガの体のうえを上へ下に、右に左にとピョンピョン跳ねていく。


「えっ⁉ イーリス、これなに?」


 ラファーガは驚いてアタフタしながら水から逃げようとジタバタしている。


「ハハハッ。心配いらないから、大人しくしてて」


 イーリスの言う通り、水はラファーガの全身の上を飛び回った後は、地面にびちょんと落ちた。


「ああ、びっくりした」


 心の底から安堵したといった様子で大袈裟に溜息を吐くラファーガを見て、イーリスは笑う。


「フフ。でも綺麗になったでしょ?」

「あっ⁉」

 

 イーリスに言われて自分を見たラファーガは再び驚いた。

 さっきまで泥だらけだった服も、体も、綺麗になっていたのだ。


「えっ⁉ なんで⁉」


 水は肌の上にも服の上にも残っていなくてサラサラだ。


「ふふふ。これが魔法でーす」

「スゲェー」


 ラファーガはイーリスに尊敬の眼差しを向けた。


「ハハハッ。ラファーガは素直で可愛いなぁ」

「きゃあ。イーリス、くすぐったいよぉ~」


 イーリスはラファーガの髪や体をくすぐるように撫でまわす。

 キャッキャウフフとじゃれ合う2人の姿は、もはや鍛錬場の名物だ。


 ラファーガは、綺麗で強くて頼り甲斐のある年上のイーリスへ恋をした。

 

(イーリスは強くて、魔法も使えて、勉強もできちゃうんだ。すごいや。ボクも頑張らなきゃ)


 幼い恋はラファーガのやる気に火をつけた。

 ラファーガに魔法は使えなかったし、勉強もいまひとつだったが、鍛錬の効果はあった。


 効果がありすぎて、イーリスへ追い付こうと必死に鍛錬を頑張った結果、あっという間に彼を追い超してしまったのだ。

 身長も、筋肉量も、イーリスを追い越してしまった頃。

 ある日を境にイーリスは鍛錬場へ来なくなってしまった。


(ボクが、身長も、体重も、イーリスを追い越しちゃったから……嫌われた?)


 年齢は2歳しか違わなかったものの、文官を目指すイーリスと武官を目指すラファーガには接点がほとんどなく、交流は途絶えてしまった。


 その後、イーリスへの恋心を自覚した。


(こんなに体格のよい私が、イーリスさまに愛してもらえるはずがない――――)


 ラファーガは自分で自分の恋心を封印した。

 



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