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無敗の軍神は愛しき夫の子を孕む  作者: 天田 れおぽん @初書籍発売中


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第24話 メロメロ

 大騒ぎの出産も終わってみれば夢のよう。


 ラファーガは、激しい痛みと出産の喜びに体や精神が忙しく動いて、ベッドの上でグッタリと寝そべっていた。

 エタンセルは他の使用人を部屋へ入れないようにしながら、必要な物を用意したり片付けたりしている。

 赤子は無事に生まれて元気な声を上げていた。

 一仕事終えた老医師も、まなじりを下げながら自分の仕事を遂行している。


「ああ、元気な赤子だ。あー、よしよし。悪いところがないか、ちょっと医師(せんせい)に診せておくれ」


 賑やかな光景を横目にしながら、イーリスがラファーガの黒い髪を労わるように撫でながら聞く。


「お疲れさま。調子はどう?」

「魔王を倒したときよりも、しんどかった」


 溜息混じりに言うラファーガの額にイーリスはキスを落とした。

 くすぐったい温もりを感じながら、ラファーガは笑う。


「だけど、魔王を倒したときよりも嬉しいし、未来への希望を感じてる。無事に産めてホッとしたよ」

「そうか。それはよかった」


 イーリスは嬉しそうに笑うと、沢山のキスをラファーガの髪や額に落とした。

 そこに老医師が小さな体を宝物のように抱えてやってきた。


「さぁ、赤ちゃんですよ。健康な男の子です」


 老医師からおくるみに包まれた小さな体を受け取って、ラファーガは微笑む。


「私の子、か。出すのは壮絶に痛かったのに、軽いし小さいな?」

「そうだな」


 イーリスはラファーガの横から我が子を覗き込む。

 小さな命はしわくちゃで、肌の色は真っ赤で、人間とは別の生き物のように見えた。


「髪は黒いな。ラファーガ似か?」

「肌は血色良すぎてよくわからないが、血の色が透けるってことは白いってことだな? だとしたらイーリスに似ている」


 夫夫は赤子を覗き込みながら、それぞれに感想を口にした。

 老医師は笑いながら若い夫夫を見下ろしながら言う。


「ふふ。赤子の顔はどんどん変わりますからな。どちらにも似た所が見つけられることでしょう。お楽しみに」

「そうか。そうなのだな」


 ラファーガは腕の中の赤子をまじまじと見ながら考える。


(どんな顔になるのか正直、想像つかないな?)


 イーリスは赤子の顔を指先で軽く触りながら笑う。


「ん、オレはどっちに似ていても構わないが。楽しみだな」


 じっと赤子を見ていたイーリスは、パッとラファーガのほうへ顔を向けると、かねてより聞きたかった疑問を口にした。


「で、ラファーガ。オッパイとか出るのか?」

「……」


 ラファーガは無言でイーリスの腹に一発食らわせた。


「うっ……」


 馬鹿な夫はベッドサイドに沈みこんだ。

 そこに笑いながらストーム侯爵がやってきた。


「ハハハ。出産おめでとうございます。ラファーガさまは、それだけ元気があれば大丈夫そうですね」

「ありがとうございます、ストーム侯爵さま」


 軽口をたたくストーム侯爵に、ラファーガは機嫌よく笑顔を向けた。


「水臭いなぁ。父と呼んでくださいよ、ラファーガさま」

「では私のことはラファーガと呼び捨てでお呼びください」

「ふふ。ではラファーガ。私の初孫を抱かせてもらってもいいかな?」


 イーリスはラファーガに拳を入れられた腹を抱えて悶えていたが、ストーム侯爵はそんなもの目に入らないといった様子で赤子を見ている。


「いいですよ、義父上。ぜひ、抱いてやってください」

「いいのかい?」

「はい」

「えぇー! オレはまだ抱いてないのに⁉」


 イーリスはラファーガの横でギャーギャー騒いだが、ラファーガはさっさとストーム侯爵に赤子を渡してしまった。

 こうしてストーム侯爵が母親の次に赤子を抱くという幸運を得て、父親はその次に回された。

 一同が赤子を囲んでワイワイしていると、聞き覚えのある声が響いた。


「おー、ラファーガ。赤ちゃん生まれたって?」


 ドカドカと足音も賑やかに、国王がやってきたのだ。

 ラファーガはニヤッと笑うと、両手を差し出して我が子を抱くイーリスを示した。


「ああ、オラノス。生まれたぞ」

「見ていいか?」

「いいぞ」


 ラファーガの許可をもらったオラノスは、イーリスの腕の中にいる赤子を覗き込んだ。


「うわっ、小さいなぁ」

「抱いてみるか?」


 ラファーガに聞かれて、オラノスはラファーガとイーリスを見比べながら聞く。


「いいのか?」

「ああ」


 ラファーガが答え、イーリスは頷いた。


「じゃ……」


 そう言って腕を伸ばすオラノスの腕を、老医師が安全に抱ける状態に整え、そのなかにイーリスが赤子をそっと置く。


「あぁ、ちっこくて、あったかくて……うわぁ、可愛いなぁ」


 目を潤ませながら我が子を抱いている国王を眺めながら、ラファーガとイーリスは呆れたような表情を浮かべて目を合わ、そして2人して笑った。


 老医師はそんな様子を温かな眼差しで見守っていたが、ラファーガの様子をチラリと確認してから口を開いた。


「さぁさ。そろそろ母体を休ませないと。赤子も連れていきますので、ラファーガさまはゆっくりお休みください」

「ああ、分かった」


 ラファーガは賑やかに部屋を出ていく一同を眺めながら、幸せな気持ちで目を閉じた。

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