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無敗の軍神は愛しき夫の子を孕む  作者: 天田 れおぽん @初書籍発売中


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第22話 ラファーガの不安

(イーリスは本当に子どもが生まれることを楽しみにしてくれているし、私も愛されていると感じる)


 ラファーガは、イーリスのキラキラと輝く笑顔を見て愛しさを募らせて、幸せを噛みしめる。

 呪いは解けて、ラファーガは死を避けることができた。

 ギフトなのか、呪いなのか分からない【孕む】体になったことで子も得た。


(好きな人を手に入れて、命を失うこともなくなり、子どもまで手に入れて。魔王は【呪い】と言っていたが、私は不幸になどなっていない。むしろ幸せを手に入れた)

 

 ラファーガは自分を見つめている青い瞳をジッと見る。

 澄んだ青い瞳の前では、心まで裸にされてしまうようだとラファーガは思った。


 (王国を守るため、イーリスを守るためと、殺し続けた。魔族も、魔物も。どれだけの命をこの手で狩った? こんな私が……幸せになれるのか? 幸せになる資格など、あるだろうか?)


 ラファーガは、罰を受けることは怖くない。

 怖いのは――――

 

(私は罰を受けてもいい。だがイーリスを巻き込みたくない)


 なんとなく右手の平で自分の腹を撫でる。


(この子も守りたい。だから、不安になるんだ……)


 ラファーガは、こちらを覗き込んでくるイーリスの目を見て言う。


「私は……不安なんだ」

「ん? お腹の子は順調なんだろう?」

「そうじゃなくて……」


 ラファーガは乾いた唇を舐めながら口を開いた。


「私のお腹にいるのは、魔王によって与えられた。この子が私とイーリスの子であることには違いないが、魔王が関わっている」

「それは……そうだな」


 イーリスはラファーガの腹を見ながら答えた。

 そもそも男であるラファーガが妊娠しているのも変だし、それをすんなり受け入れてしまっている自分も変だという自覚くらいはイーリスにもある。

 イーリスはラファーガを安心させるように言う。


「魔王が魔法を使ったせいで、この子を愛しいと思っている可能性はある。だけどそれがなんだ? 普通なら手に入れることなど絶対にできない幸せがココに詰まっているっていうのに、今さら手放せない」

「ああ、私もだ。私はこの子が愛おしい。奪われるのは嫌だ。この子のためなら何でもするし、どんな痛みでも耐える。命を差し出しても構わない。でも問題ありとされれば、この子は容赦なく奪われるだろう」

「そうだな……そうかもな」


 ラファーガの言葉に、イーリスも眉間にシワを寄せて難しい顔をした。


「そんな事態は避けたい。何があってもこの子を守りたいんだ」

「んっ。分かった」


 イーリスは彼を安心させるために、ラファーガの手をとって軽くポンポンと叩いた。


「今回のことは魔王が子宮を与えた程度の話だろうけど、ラファーガが不安なら鑑定人を探すよ」


 神殿には鑑定人というものがいる。

 鑑定人は、もって生まれた魔力やギフトなどを鑑定できるのだ。

 

 ラファーガは不安げに自分の腹を撫でながら口を開く。


「本来は個人が持っている力を鑑定するが、先祖にエルフやドワーフがいると分かるらしい。だから魔族かどうかの判定もできるだろうな」


 王都の神殿にいた鑑定人が王国では一番腕がよいとされているが、彼は魔王との戦いを避けるために何処かへ逃げてしまい、争いが終わった後も戻っていなかった。


「確かに……鑑定人に見てもらえば、この子が何者か分かるだろう」


(正体が分かれば不安が消えるのか。それとも……)


 ラファーガの表情が曇るのを眺めながら、イーリスは彼の手をポンポンと軽く叩く。


「もちろん、事前の根回しはしっかりやっとくから、結果がどうであれ心配しないで」

「根回し?」


 ラファーガはイーリスの意図がよくわからず、首を傾げた。


「子どもの価値を分かってもらえばいいってこと。幸い、国王であるオラノスさまはラファーガの親友でもあるし。父上は宰相で初孫の誕生にソワソワしている。あの2人を味方につけておけばどうにかなる」

「そうか?」


 イーリスは、まだ不安げなラファーガへにこっと笑ってみせると「いざとなったら【軍神】さま連れて逃げるぞ、って脅すから大丈夫」と軽い調子で言った。


 ラファーガは一瞬驚いたように大きく目を見開くと、イーリスの顔を見ながら笑顔になっていった。


「ありがとう、イーリス」

「ふふ。お礼はいらない。オレもこの子と離されるのは嫌だ」


 イーリスは、だいぶ大きくなったラファーガの腹を軽くポンポンと叩いた。

 するとノックに応えるかのように、内側からポンポンと小さな足がラファーガの腹を蹴った。


「……動いた」

「ちょっと……激しすぎない?」


 確かに感じる命の気配に、2人は顔を見合わせた。

 そして噴き出した。


「ハハハッ。私の心配がおチビさんに伝わってしまったかな? 心配しなくても絶対に守るからな、イーリス・ジュニア」

「ハハハッ。そうだよ、お前は何処にもやらないよ、ラファーガ・ジュニア。お前はずっとオレたちの側にいるんだ」


 ひとしきり笑ったラファーガとイーリスは互いに見つめ合い、2人して子どもの入ったラファーガの腹の上に手を置いたまま、そっと唇を重ねた。

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