第18話 平和で幸せな新婚生活
「ようございましたね、旦那さま」
「あ、ああ」
ニコニコしながら言うエタンセルに、ラファーガはどう返せばいいのか戸惑った。
執務室でいつものように椅子に座り作業へ取り掛かかろうと机に向かったラファーガへ、忠実な執事は穏やかな笑みを向ける。
イーリスとの甘い時間で午前中は潰れてしまった。
いつもは午前中に済ませる書類仕事を午後済ませることになり、ラファーガとしては何気に気まずい。
執務室までついて来たイーリスは、執事の言葉に頬を赤く染める夫の様子を応接セットの椅子に座って堪能する。
「ふふ。【軍神】と呼ばれていても、ラファーガは1人の人間だからね。幸せになっていいんだよ」
「イーリス。あなたからそんな風に言われたら、私はどう反応すればいいか分からなくなってしまう」
ラファーガは情けなく眉を下げてイーリスを見た。
エタンセルは2人が呼び捨てで呼び合っていることに気付いて一瞬目を見開いて、次の瞬間優しい笑みを浮かべた。
「エタンセル? 今日はどこまで済ませたらいいかな?」
「そうですね。ココ辺りまで……」
開け放たれた窓から入ってくるのは初夏の風。
穏やかさを取り戻した王国で、シャイン伯爵家も平和な時を刻み始めていた。
そんなシャイン伯爵家に王家主催の夜会の招待状が届いたのは、それから間もなくのことだった。




