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第八話




 第一皇女殿下が逡巡し、やがてゆっくりと口を開く。


「公開はしていないけれど、ルシアは六歳になってすぐ、誘拐されているのよ」

「…………誘拐。皇族を……?」


 いや、皇族だからなのかもしれない。第二皇女殿下は抑えている様だけれど、魔力が相当ある。人質にすればこの国を裏で操る事もできるだろうし、幼い子どもならば洗脳して、自分たちのために酷使することもできる。


「急いで捜索して、見つけられたのは一週間後。事件について知っている者には箝口令を敷いたわ」


 一週間。第二皇女殿下は、どれ程怖い思いをしたのだろう。たかが一週間と言う人がいるかもしれない。けれど、その一週間で、何をされるか分からない。魔力を奪われるかもしれないし、実験体として薬を飲まされたり、身体を傷付けられたかもしれない。女としての、人としての尊厳を、奪われていたかもしれない。


「大丈夫、だったんですか」

「幸い、ルシア自身は何かされたようには見えなかったわ。けれど、あの子の心に傷を残すには十分だった」


 第二皇女殿下自身は、と言うことはきっと他にも居たのだろう。連れ去られていた人が。惨い姿だったのだろうと、勝手に想像してしまう。もしも第二皇女殿下がその光景を見ていたとしたら、ゲームのように人前に出てこないのは頷ける。


「ゲームではきっと、もっと救出が遅かったのでしょうね」


 それが第二皇女殿下がゲームでも出てこなかった理由……。でも、第二皇女殿下が学院に来ていて、セフィド公子との婚約も続いていてセフィド公爵家と皇家との関係に亀裂が入っているワケではない。つまり、私たちがしないといけないのは、


「もう一人の転生者の排除、ですね」

「話が速くて助かるわ。あのバカとあのバカを誘惑した小娘。この二人の排除を年明けまでにはしたい」


 ゲームであれば、どの攻略対象のルートか確定するのが十一月頃。第一皇女殿下は、この時点でルートが確定しているのものの、もう少し様子を見て判断したいようだ。今後を考えるのなら早くに切り捨てた方がいいけれど、あの令嬢が違法なものを使ってヴェルメリオ侯爵令息を惑わしている可能性もある。


「まずはルシアに会わせないとね。協力するのなら、一緒に行動することが多くなるだろうし、慣れてもらわないと」


 一先ず、第一皇女殿下とは協力できる。第二皇女殿下とも、仲良くなれると嬉しいな。第一皇女殿下と第二皇女殿下が並んだら、良い絵になると思うんだよね。それに、美人は目の保養になるし、あわよくば皇女殿下方と仲良くなって皇族との太いパイプもできる。我が家に何かあったときに助けてもらえるかもしれない、と言う下心もあるけど。


「行くわよ」

「え、今からですか!?」


 思い立ったが吉日とは言うけれど、第一皇女殿下は思ったら即行動の方らしい。第二皇女殿下がいるであろう部室棟近くの中庭に行くけれど見当たらない。いつもはここで第一皇女殿下のことを待っているらしいけれど、どこに行ったんだ?


「あの子が移動するとは思えないけれど」

「誰かに呼ばれた可能性は」

「オルコス卿がいるから、ルシアが呼ばれて動くとしたらお兄様だけれど」


 皇太子殿下……。前世だと全キャラ攻略後の隠しキャラじゃないかって言われてたよね。確か、ヴェルメリオ侯爵子息攻略後に見れるキャラクターエピソードでは、第一皇女殿下のことをヴェルメリオ侯爵子息に頼むとだけ言って終わっていたし、深堀りもあまりされていなかった。隠し攻略対象でもなかったため、謎が多い人。


「となると、生徒会室ですかね」

「お兄様が呼んだのならね」


 生徒会室は部室棟の一番奥にある。中庭からだと、五分弱くらいで着くかな。既に空は茜色に染まっており、部室棟を見上げると、チラホラと明かりが付いている部屋がある。確か、天体観測とかをする部活動もあるんだっけか。夜間にも活動したい部活動はしっかりと申請をすれば学院に寝泊まりもできるらしい。上位貴族の子息令嬢はしようとは思わないだろうけど、研究職に就きたい人とかは研究を止めたくないからとわざわざ申請する部活動もあるらしい。熱心だよね。前世だとそんなことしたらモラルがああだのプライバシーがなんだのとできないと思う。合宿とかではないし。そんなことを考えていれば生徒会室に着き、ノックをすればドアが開く。中には皇太子殿下と第二皇女殿下が対面する形で座っている。


「帝国の小太陽にご挨拶申し上げます」

「良い。楽にしてくれ」


 皇族三人に護衛が二人。そんなところにただの伯爵令嬢が一人……。お門違いもいいところだ。誰かに見られでもしたら、私はどう見られるのだろうか。皇族三人に気に入られている生意気な小娘? それとも、早々に何かやからして、皇族に問い詰められるバカな小娘? どちらにせよ、ここでの発言に気をつけなければならない。第一皇女殿下が許そうとも、皇太子殿下と第二皇女殿下が許してくれるかは分からないのだ。


「ひ、ひひひひ人っ……」

「こちら、エルピス伯爵家のイレミア嬢。今日知り合って、話がとても合ったの。私といることが多くなるのなら、ルシアも会うことになるから、早めにと思ったのよ」


 …………想像以上に、コミュ障だな。第二皇女殿下は誘拐のこともあって極度の人見知りといわれたけれど、想像を越えていた。前世の小説やコミックでもコミュ障のキャラクターが登場していたけれど、人の顔を見て今にも死にそうなくらい顔から血の気が引くのは見たことがない。大丈夫かな。開幕からとても不安だ……。






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