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第二十六話




 だらしなく服を着崩した男の人。ノックもなしに入ってきたけど、いいのか……? 魔術師たちが何も言わないってことは、まさかこの人も魔術師?


「てか、表は片付けないの? 星が降ってたよ」

「あ、降ったんだ」


 星が降った? まだお昼だから、星が出てるはずないよね? 星が降ったって、誰かが魔法の実験で降らせていたとかなら、その「星降りちゃん」という人がやったのかな。名前的にも。

 それにこの人、魔力は淀んでるって言えばいいのかな。普通なら、魔力が身体の中を循環する。なのにこの人の魔力はずっとその場に留まってる感じなんだよな。雨が降った翌日に、道路の端に雨水が溜まっているような、そんな感じ。第二魔術師とは少し違う、どこか暗い、纏わりつくような魔力。


「で、【星降り】ちゃんは?」

「植物の水やりで城に戻ったわよ」


 「星降りちゃん」って、第二皇女殿下のことなのか。なんで星降りなんだろうか。第二皇女殿下の魔法に関係でもあるのかな。魔法は何度か見せてもらったけど、第一皇女殿下と同じ【水】の魔法を使っていたはずだけど。

 それに、第二皇女殿下がその「星降りちゃん」だとしたら、星が降るのはおかしくない? また別の人なのかな。


「……あれ、なんかいる」

「ルシアの友人だ」

「……【星降り】ちゃん、友だちいたんだ。てっきりボッチだと」


 第二皇女殿下、コミュ障すぎて友だちいないって思われてたのか。いやまぁ、初対面のときがあれだったし、分からなくもない。本当に驚いたもん。顔は真っ青になるし泣きそうになるしで。


「あ、第六魔術師のテータだよ。よろしく」


 第六魔術師……。なんか、今日だけで魔術師全員に会えそうな勢いなんですけど。というか、第二皇女殿下じゃないからまた私たち話に入れないのでは……? もういっそのこと本題に移りたいんですけど。しばらくまた内装でも見てるか。もうそれしかやれることがないし。

 第六魔術師が来てからさらに十分ほど経ってようやく第二皇女殿下が戻ってきた。戻ってきたけどさ……。これ、第二皇女殿下まで魔術師たちと話し始めたら私たちずっと放置だよね。


「すみません。行きましょう」

「え、挨拶なし? 悲し~」

「朝会いましたよね? シグニたちは遊びに来たワケじゃないんですから」


 うん、とりあえずようやく動ける。ずっと何も話せないしツラかった。まぁ、第二皇女殿下が戻らずに先に案内してくれてればこうもならなかったってのはあるんだけどね。


「手伝いが三人もいるなら論文も終わるわよね」

「……ぜ、全力で終わらせます」


 第五魔術師の圧が……。論文は面倒でもしっかりとやらないとだからな。特に魔術師ってなると魔法関係の論文しっかりやらないとだし、第二皇女殿下は他のこともありそうだしね。一つずつ終わらせないと後々大変だよ。


「あれほど計画的に進めなって言ったのに」

「【時詠み】様みたいに全員が年がら年中不眠不休で活動できるワケじゃないんです!」

「あなたはもっと要領よくやりなさいよ」


 何事も計画的にやらないとですからね。頑張りましょう。私たちも手伝いますから。元々私たちは魔塔の手伝いに来てるんだし、知り合いなら気持ちも楽ですから。

 応接室、でいいのかな。部屋を出てすぐにある異世界版エレベーターに乗ると三階に着いた。すぐそばにある扉を開いて中を見るとあら不思議。確実に一つの部屋の広さじゃない。

 部屋に入るとまず感じたのは紙とインクの匂いだった。図書館とかのたくさんの本が貯蔵されている場所特有の匂い。その匂いの理由は一目瞭然で、壁という壁が本棚になっていた。天井まで届く本棚にぎっしりと本が詰め込まれていて、隙間が見えない。それでもスペースが足りなかったからなのか、数十冊の本が部屋のあちこちでふわりと浮いている。まるで意思があるかのようにゆっくりと動いており、時折ページが勝手にめくれ、ペラリと乾いた音を立てている。

 テーブルの上には溢れんばかりのものが散らかっている。書きかけの論文や走り書きのメモ、開きっぱなしの資料が無造作に置かれている。インク瓶も空のものがいくつかあり、第二皇女殿下がどれだけ真剣に論文に取り組んでいたのかがうかがえる。奥の方にあるテーブルには地図が広げられていて、重石の代わりなのか、端には分厚い本が置かれている。

 一番奥の方には唯一の窓があり、本棚と同じ高さのためか、部屋を太陽が明るく照らしている。窓のすぐそばには望遠鏡や星の早見表のようなものがある。


 とてもではないが生活感は感じられない。研究者の部屋というよりも、研究者を閉じ込めるための部屋のように感じられる。きっとそれは、この部屋から感じられる微弱な魔力のせいなのだろう。

 

「一応、片付けを【深淵】様と定期的にしてはいるんですがね……」

「深淵様って言うのは?」

「第二魔術師様のことよ。魔術師に送られる【称号】って言うものらしいわ。コードネームみたいなものよ」


 なるほど。だから「星降りちゃん」とか「時詠み様」とか言ってたのか。研究してるもので付けられるのかな。それともその人の魔法属性とか? 今の魔塔主は時間を操るって聞いたことあるし、魔法属性っぽいな。けど、深淵ってなんだ。深淵って。確か海とかの深い場所って意味だよね。アニメとかだと光が届かない地下世界のことを言うこともあったはず。


「それで、私たちは何をすればいいの?」

「えっと、私が集めたデータがあるので、それの写しをお願いしてもいいですか?」

「いいけど、その前に片付けだよ」

「論文に必要なもの以外は一回片付けましょうか」


 空中に浮いてるこの本たちはどうするんだろ。絶対しまえる場所ないよね。一回全部別の場所に置いておくでいいのかな。そもそも浮いてる本も片付けるのか疑問だけども。

 …………あれ、というかさ。


「【星降り】って、第二皇女殿下のコードネームなんですよね」

「そうですよ?」

「あの、第六魔術師が星が降ったって言ってたんですけど、それって……」


 ……あ、これダメだな。めっちゃ笑顔を向けられた。怖いです。聞かない。もう聞かないから。絶対聞いたらダメなやつだ。






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