第二十一話
終業式兼パーティーは、少し問題もありましたが、無事に終わりました。今は夏季休暇ですが、休む暇はないです。課題を出されていますし、長期休暇ですから、大がかりな魔法研究もできますから。
「第二皇女殿下、これは」
「それはこの数式を当てはめるとできますよ」
現在はいつもの四人で課題を片付けているところです。とは言え、シグニは教える側なので捗っているか分かりませんけど。
お父様がくださった温室に植えてある花々がちょうど見頃だったので、今日はいつもの部屋ではなくこちらです。草花の甘い香りがいいんですよね。開けてある扉から入る風が揺らす音も素敵です。
紙の上をペンが走る音が聞こえて、時折質問する声が聞こえてきます。出されている課題も多いとは言えない量ですし、これなら明日には終わりそうです。
「……そういえば、みなさんは課外学習どうするんですか?」
……そんなものも、ありましたね。主に長子ではない方や研究職希望者のためのもの。いわゆる職場体験というやつです。やるやらないは自由ですが、ある程度加点にはなります。まぁ、やる必要がないのですね。十分成績は良いですから。
……ただ、魔法の研究を好きなだけやれると言うのはとても貴重です。けれど、国の研究機関だと皇女という立場上、あまり研究できないです。
「シグニはどうするのよ。去年、確か魔塔に行ってたでしょ?」
「今年もその予定だよ。友人も連れておいでって言われてるから、行く?」
いつかによって少し予定が……。学院に入ってから中断してた研究を進めないといけないですし、論文も書かないとです。そろそろ論文の提出期限が迫ってきているので。それき、知り合いの方々に連絡しないといけないです。今までずっとうるさいからと連絡を取っていなかったので……。それに、別の魔法研究の手伝いも頼まれていますし、私は一緒に行けそうにありません。
「……一年生で、論文?」
「毎年書いてますよ?」
「え、普通なんですか?」
「ルシアが少し変わってるかな」
なんですか。その言い方は。まるで私が変だと言いたいみたいじゃないですか。【時詠み】様は十歳のときにはロンフリ書いていたと言っていましたし、普通です。一般常識ですよ。……たぶん。
「……それはそうと、溜め込むクセ、治しなさい?」
「わ、分かってはいるんですよ……?」
分かってるんです。けど、その……。ま、魔法は楽しいですし、やりたくてやってますから。気がついたら、やるべきことが山積みになってるだけなんです。い、いつもはもっとちゃんと処理できてるんですよ? まだ学院生活に慣れてませんでしたし、次の学期からは大丈夫です。ほ、本当ですよ? だからその絶対無理だと言わんばかりの目をやめてください!
「第二皇女殿下はどんな研究をしてるんですか?」
「えと、主に天体についてです。それと、人によって扱える魔法が異なる理由についてですかね。親子でも魔法属性が違うこともありますから」
天体に関しては、完全に私の趣味なんです。星が好きなので、それについて研究しています。天体の運行と魔力濃度の関係性や、魔法に関係なく、何故一つの天体を中心に回っているのかなどですね。
魔法属性に関しては、とある人から聞いて興味が沸いたからですね。一卵性双生児であるルーチェと私でも魔法属性は異なりますからね。昔は血縁ならばその系統の属性を受け継ぐと信じられてきましたから。これは調べるしかない、と研究者としての血が騒いでしまいまして。
「……生き生きしてる」
「好きなもののことになると、ルシアは止まらないからね」
「ルシア。研究に精を出すのはいいけれど、ちゃんと食事と睡眠も取りなさいよ?」
「……わ、分かってますよ」
前にそれで研究室を封じられたの、結構根に持ってるんですからね。ちょっと集中しすぎて食事や睡眠を忘れてしまっただけなのにです。酷いと思いませんか。ちゃんと魔法で体調管理しているから倒れることはないというのにですよ?
「いつの間にか研究室で干からびていたりしそうで怖いのよ」
「さすがにそんなことは……」
ないはず、です。……たぶん、きっと。自信はありません。【時詠み】様に昔、研究に没頭しすぎて栄養失調で亡くなった魔塔所属者がいると聞いたことがあります。私を脅すためについた嘘なのか、本当にあったのかは分かりませんが……。
「無理はなさらないでくださいね」
「無理をしないことが無理よ。いつも約束しているのにいつの間にか餓死の一歩手前にいるんだもの」
……あのときは、はい……。ごめんなさい。研究に没頭しすぎていました。……で、でもですよ? まさか研究室に篭って一週間も経っているとは思ってなかったんです。あれ以来、お母様が心配して一時間に一回見回りを寄越すようになりまして……。さすがに心配かけすぎました。反省はしているんです。反省は。それを直せないだけなんです。




