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第十六話




終業式を兼ねた学院でのパーティー。準備をしている段階で既に帰りたいです。ドレスはシグニが毎度のことながらくれたものです。夜空をイメージした深い青色に、ごちゃごちゃとしていないフリル。目立つ程ではありませんが、小さな宝石を散りばめ、星のようになっています。

 ……まぁ、ルーチェのドレスも似たようなものなのですが。ヴェルメリオ様がドレスを用意するという婚約者として当たり前のこともしないため、ルーチェは基本自分でドレスを用意しています。ですがたまに、シグニがルーチェにもドレスを用意しているんです。婚約者の姉だから。そう考えるのは簡単です。私も少し前まではそう考えていましたから。けど、今はシグニがルーチェにドレスを贈るのは好きだからなのではとか、二人は恋仲なんじゃないかとか、そういう風に思ってしまうのです。


「来たか」

「お兄様?」


 会場の入り口まで今では当たり前となっている四人で行くと、お兄様とオルコス卿、アイト卿がいました。何故? お兄様は毎年忙しいからと新入生歓迎会以外のパーティーは欠席していると聞いたのですが。


「エルピス嬢、パートナーがいないならオルコスにエスコートしてもらうといい。ルーチェは私とだ」

「アイトは?」

「護衛だ。以前より悪質な輩がいるかもしれないからな」


 オルコス卿にはエルピス伯爵令嬢の護衛をしてもらうということですね。私たちと親しくしているためか、上級者から絡まれることが増えているそうです。アイト卿はご令嬢のエスコートをするには、その、少し軽いと言いますか……。いい人なんですけどね。


「セフィド公子は両手に花だったのにな」

「私の可愛い花は両手で持たないと落ちてしまいますから」

「シグニ、あんた最近アイトに似てきたわね」


 確かに、アイト卿が女性を口説くときのセリフと似てますね。前に聞いたことがありますが、そのとき言ってたことと似ている気がします。確かそのときは「可愛い花を両手で支えたい」とかでしたかね?


「ルーチェは分かるけどなんで第二皇女様も知ってるんすか」

「お忍びで街に行ったときに見ました」


 ルーチェに言われて二人で行ったんですよね。そのときに見つけて、ルーチェが面白半分で尾行しようって。なので私も知ってます。ルーチェがお腹を抱えて笑ってた覚えがありますよ。


「俺の話はいいから、入りましょうよ……」

「逃げたわね」


 パーティーもそろそろ始まってしまいますから、入りましょう。話に花を咲かせるのは入ってからでもできますから。 中に入れば好奇と嫌悪の視線を向けられます。分かってはいましたが、居心地が悪いですね。皇族相手にそんなことをすれば、本来ならば不敬だと言われてもおかしくありません。学院内では皆平等、などと言うつもりでしょうか。そんなもの建前。ここは小さな社交場です。ルールに従えない者を置いておく程優しい場所ではありません。学院を出てからもその様子なら、考えなければいけませんね。


「ルシア、大丈夫?」

「少し緊張はしますが、前よりは大丈夫です」


 学院に入学してから早三ヶ月。前までは人前に出ることすら怖かったのに、今では多少なら問題ありません。学院に来てよかったです。このまま少しずつ、苦手意識を克服していけたら、迷惑をかけなくてすみます。それに、学院に来たおかげで、シグニとルーチェのことも知れました。


「……私が、ルーチェだったらな」


 お兄様と一緒に前を歩くルーチェ。いつも堂々としていて、自分の意思をはっきりと伝えられる。私もルーチェみたいだったら、何か変わったんでしょうかね。

 ルーチェの着る深海をイメージした深い青色のドレスには、白波が波打つようにレースが付けられています。深海のイメージのルーチェと夜空のイメージの私。双子なのに、どうしてこうも違うのでしょうか。






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