こちら株式会社ムソウです。要件は化物退治ですね
リハビリ短編です
楽しんで頂けたら幸いです。途中で貼ってるイラストは主人公とヒロインのイラストになります。イメージする手助けになれば幸いです
株式会社ムソウ。昨今発生する化物退治に特化した株式会社。
西暦2500年。世界は最先端テクノロジーに溢れていた。
しかし人間が繁栄するのに比例し、人間を好んで攻撃するゾンビにも似た化物が現れるようになった。
これはそんな化物のたちから人々を守るヒーローが集う……そんな会社での物がt
ドガーン!!
「おはよーございます!」
「こらぁ!橘!お前自動ドアを枠ごと破壊して出社するな!今月で何回目だ!」
「えーっと…多分2〜3回くらい」
「バカモン!毎日だろうが!15回目だぞ!」
「よかったっすね。今日は華金じゃないっすか」
「アホ!」
ガチン!
「痛いわこの石頭!」
全長300メートルを超える大手の会社。そこの自動ドアを待てないという理由で破壊したのが本作の主人公、橘 刀氣。22歳である。
おわかりの通りバカである。
そしてパワハラ(※未来でもパワハラは禁止です。パワハラ、ダメ、絶対)で返答したのが彼の直属の上司であり、この会社の代表取締役専務。
この会社の社長の息子にして会長の孫。次期社長、伊ノ植 庸之。35歳である。
「ハッハッハ。刀氣くんは相変わらず元気だね」
発言したのはこの会社の会長、伊ノ植 立之。庸之の祖父である。
庸之も刀氣をこのように叱り付けるが彼の才能を見抜きスカウトしてきたのも庸之本人であり、スカウトの一件には会長である立之も関わっており、刀氣と面識があった。
「じいちゃん…あんま刀氣を甘やかないでくれ」
「こら。会社内ではわしの事は会長と呼べといつも言っておるだろ」
「すみません会長」
立之。恩人たる刀氣には甘いが孫には厳しい模様。
「やーい、専務〜会長に怒られてやんの〜」
「やかましい!」
会長たる立之が毎朝来るのは立之が会長職に就いた時から変わらない。
「じゃあ俺オフィス行ってきまーす!とう!」
「とう!じゃないわエレベーターを使え!」
刀氣。エレベーターは遅いという理由で会社の壁をよじ登る。というか駆け上がる。
「ハッハッハ。あの子も元気に笑うようになった……であった頃は死んだ目をしていたというのに」
「会長…」
「ほら、お前も仕事しろ。朝礼がもうすぐだぞ」
「はい、会長」
にこやかに会話する会長と専務。これが伊ノ植の祖父と孫の毎朝のスタイルであった。
毎朝これと似たやりとりをする刀氣は本当にバカである。
ところかわってオフィス内。
「おはよーございまーす」
会社のベランダ口から出勤する刀氣。
「おはよう刀氣。お前……また専務怒らしただろ?」
「え?なんで分かったんすか?多葉等部長ってエスパーでしたっけ?」
「ちゃうわ!お前がそこから出社したら基本的に専務がブチギレしてるときだろ……お前のやらかしで」
「へへっ」
「一応言っとくが褒めてないぞ」
刀氣に声をかけたのは株式会社ムソウの第一戦闘部の部長、多葉等 結城。54歳。この会社の利益の5割を賄う部署の部長である。
最近の悩みは可愛い娘が絶賛反抗期継続中な点である。
「おはよう刀氣。今日も元気だね」
「あ、おはようございます尾川さん!」
優しく話かけたのは尾川 万博。52歳。部長を支え、刀氣の手綱を握れる人間の1人。最近の悩みは抜け毛が増えた事である。
「お前…尾川には挨拶して部長であるオレには挨拶しないのな…」
「……父さん、細かいよウザ」
「ぐっ……!」
ガタイがよく「無敵の防壁」と渾名が付く多葉等部長にダメージを与えた女性。
多葉等 ソフィア。18歳。ハーフで長い銀髪碧眼の少女から女性へと変貌中であり、高校卒業と同時に入社し絶賛反抗期継続中の多葉等部長の愛娘にして少しツンデレ気質な刀氣のバディにしてエースであり、刀氣に好意を寄せ、多葉等部長に素直になれない為、嫌悪を寄せるこの作品のヒロインである。
「なんか暴露された気がする」
と、ソフィアが。
「なんか別のダメージが……」
と、多葉等部長が。
「……ストレスでまた抜け毛が増えそう」
と、尾川が溢す。
「みんな、どったの?」
「お前は気にするな」
と言われても、のほほんとする刀氣。それは刀氣が大物かバカか……バカである。
『ピンポンパンポ〜ン♪』
『これより朝礼を始めます。専務。どうぞ』
『えー、専務の伊ノ植 庸之だ。本日の朝礼を始める』
朝礼のチャイムがなり、全員が社内のスピーカーに目線を向ける。
真面目に専務の話を聞き、兜の緒を締めるつもりで聞き入っている。それだけ専務である庸之が慕われている証拠でもある。
……あくびしながらぼんやりしてるのは刀氣のみである。
『――であるからして』
『ぶぃーん』
『朝礼中失礼します!政府より緊急入電です!脅威度S判定の集団変質不適応者が発生!直ちに殲滅せよとの依頼です!』
『と、言うわけだみんな!協力して事にあたってくれ!第三戦闘部は住民の避難誘導と護衛!第二戦闘部は分隊に分かれて第一と第三の補助!第一戦闘部は殲滅作業にかかれ!安全第一だ!それを忘れるな!助け合え!』
指示を出し、各員を鼓舞する庸之。
『あと刀氣!窓から出ようとするな!』
「え!?なんでわかったの専務ってエs」
『エスパーではないからな!お前ならやりかねん!街にも被害を出すな!』
「やっぱりエスパーだよなぁ……」
と、言葉を洩らす刀氣。
「お前……また壊すつもりだったんか」
と、引き気味で言う多葉等部長。
「え?なんでわかんの?やっぱり」
「エスパーじゃないからな!」
被せ気味に否定をする多葉等部長。
「さぁ、専務の言葉は聞いたな。情報部と連携して事にあたるぞ!武隈!情報部との連携は任せる!」
「了解です部長」
こう答えたのは武隈 熊太郎。係長を務める42歳。ガタイは多葉等部長と同じだが気が弱いので他部署との連携を任されている。
「尾川!橘・多葉等バディにナビとサポートをしてやれ!」
「了解です」
「刀氣!やりすぎるなよ!」
「うぃーす!今月の活動目標にします」
「絶対嘘だろ!―じゃなかった。次、多葉等、前に出過ぎるなよ!お前に怪我なんてあった日にはオレはもう」
「父さん、ウザい」
と容赦ない一言
「ぐはぁ!」
と血反吐を吐く多葉等部長。
「さ、みんな。恒例行事も終わったよ!急いで準備して。ではみなさん!ご安全に!」
娘に毒を吐かれた多葉等部長に代わり指揮を取る尾川。
「ご安全に!!」
と、声をそろえて応答した第一戦闘部の面々。
みながそれぞれの持ち場へと向かう。
「よし、ソフィア。脱いで」
と言った刀氣。この言葉でソフィアの顔が真っ赤に染まる。
「そ、そんな、みんないるし、で、でも刀氣が望むなら……ここでも…でも嫌、恥ずかしい……」
「何恥ずかしがってんの?スーツ脱いで戦闘スーツに着替えておいでよ。俺もう着替え終わってるし」
「……ですよね、わかってます。こんなオチだって……」
そんなやりとりをしながら準備にかかる二人。
ここで刀氣の装備を紹介する。
シルエットは忍者。額当てが鬼の角を模した物を着用し、両手首に強靭なワイヤーを射出する腕輪をつけており、背中に二本の直刀を背負っている為、まさしく忍者といった風貌。
https://27951.mitemin.net/i1046508/
ソフィアはぴっちりとしたシルエットのパワードスーツを着込む。ちなみに多葉等部長の娘でなければ第一戦闘部の男衆はみなが前屈みになるほどのスタイルの良さである。
https://27951.mitemin.net/i1046509/
ところ変わって都市部。
黒いシルエット。人形の影が立体を持ち、人を積極的に襲う存在。変質不適応者である。目を持たない上、口もないのに人を襲い食らう。
そして集団変質不適応者。これは異形の一言に尽きる。影が人型になった変質不適応者と違い、複数の個体が混ざり一つの塊となり肥大化。球体化した身体の中心に巨大な単眼を持ち、それ以外に複数の目がぎょろりと周囲を睨む。
集団変質不適応者は混ざった変質不適応者の数だけ強く狂暴になる。
「こちら第一部隊。現着しました!殲滅にあたります」
「こちら第二部隊。現着。これより作業に入ります」
続々と各地に現着する株式会社ムソウのメンバーたち。変質不適応者の対処にあたるのはなにも株式会社ムソウだけではない。様々な会社が合同で行う。
「刀氣ペア現着。これよりバディと殲滅に入る」
ふざけた言動が鳴りを潜め、目つきすら鋭くなる刀氣。
「世界記憶に接続。禁書目録を参照。桃太郎侍。起動」
刀氣の纏う雰囲気…雑念が…すべての雰囲気が殺気に変わる。
(やっぱりこの殺気…相変わらず慣れないわね。……でも…これが刀氣の本気)
半年間バディを組んでいるがこの濃密な殺気に慣れない様子のソフィア。
押されながらも好意を持つ刀氣に苦手意識を持ってしまう。
この殺気に満ち溢れた目は庸之たちが死んだ目と称したものと同一である。
背中の二本の直刀を抜刀し、直刀が光を帯びる。
素早く変質不適応者に接近し、一瞬でバラバラにし、素早く移動する。
これだけで20体いた変質不適応者を殲滅する。
「あいつが株式会社ムソウの千鬼か…」
同業他社の人間が思わず立ち止まって見入ってしまうほど、刀氣の活躍は凄まじいの一言である。
左手に持った直刀を投擲し集団変質不適応者の巨大な単眼に突き刺すと懐から円盤状の小型投擲武器、手裏剣弾を投げつける。
手首の腕輪からワイヤーを伸ばし、巧に操作し突き刺さった手裏剣弾に接続し、特殊な電圧を流すと巨大な爆発を起こし複数の集団変質不適応者を焼き払う。
爆発で分裂した変質不適応者も残らず倒す。
圧倒的な戦力を見せつけた刀氣である。
「殲滅完了。これより帰投します」
殲滅し完了の通信で報告し、帰還の準備をする刀氣。
ソフィアも負けず劣らずの成果を出すも集団変質不適応者を単独で倒すことは叶わない。
ところ変わって株式会社ムソウのビル前。ここにも集団変質不適応者がなんの前触れもなく現れた。それも危険性が高い脅威度S判定の個体が100体以上を超えている。
「…っち。戦闘員が少ないときに限って現れやがって」
と悔しさを滲ませる庸之。
帰還中の刀氣たちに本社から尾川の緊急通信が入る。
『本社より全社員へ通達!本社の周囲に大量の集団変質不適応者が出現!討伐を終えた班から急いで戻って来てくれ!』
「…あ?集団変質不適応者が本社の周囲に現れただぁ?ふざけやがって…」
『刀氣。落ち着いて。ここにいる社員もみな君が帰ってくるまでもちこたえられる』
「…尾川さん?任せてよ…早く戻ってぶっ倒すさ」
『…期待して待ってるよ。落ち着いて戻っておいで』
と優しく話す尾川。通信の奥から爆音が響いている。
緊急通信からおよそ15分。刀氣が目にしたのは破壊され、ビルが半壊した株式会社ムソウだった。
刀氣の感情が怒りと殺気に染まる。
「……はぁ…はぁ……刀氣?」
息を整えながら刀氣に問いかけるソフィア。
「ソフィア。おまえは休んでろ。俺がやる」
「っ!なにいってるのよあんた!一人でやる?あんた死ぬつもり?」
「死ぬつもりはねぇ。死ぬのはあいつらだ」
「あんた、ばかぁ!?それが死ぬつもりだって言ってんのがわかんないの!?それアタシたちはバディよ!一緒に――」
「単独で集団変質不適応者を殲滅できねぇやつがわかった口聞いてんじゃねぇぞ!!おまえは足手まといだってわかんねぇのか!!」
刀氣の強い言葉。そして好意を向ける人物からの足手まといと言われたことでソフィアの瞳に涙が滲む。
普段の刀氣ならここまで言わない。そしてソフィアを泣かせる発言もしない。
それだけ刀氣の目は怒りと殺気に曇っていた。ソフィアの涙が映らないほどに。
涙を零すソフィアを無視して駆け出す刀氣。
ビルを脚力とワイヤーを巧に使い昇る刀氣。その後ろ姿を大粒の涙を流し、手にした矛を力いっぱい握りしめるとぽつりと言葉を零す。「……刀氣の………ばかぁ……」と。
荒々しく近付く集団変質不適応者を殲滅していく刀氣。
無類の強さを持つ刀氣も人間。この時の刀氣は大切な会社を壊された怒りでバディの意味と役目を忘れていた。
バディ。背中を任せ、自身と相手を支え信頼する大事な仲間であることを。
自分を拾い上げた庸之が最初に教え、今まで忘れることのなかった恩人の言葉を。
戦闘を繰り広げる刀氣の目に、怒りと殺気に染まった目にも映るほど鮮明に映る。
《この社旗はわしの誇りだ》
と語るほどに大切していた社旗を抱え、血まみれになった立之の姿を。
「会長ォォォォォォォ!!」
すぐさま会長の元へ駆け出すが複数の集団変質不適応者が行く手を阻む。
「そこを退けやクソ共ォォォ!!」
ワイヤーで絡め、捻りを加えて直刀で螺旋状に切り裂く。
「会長!しっかりしてください!会長!会長ォォォ!!」
呼吸をしていない。その事実が刀氣に重くのしかかる。
ついには直刀を手放し慟哭を上げるも集団変質不適応者の魔の手が刀氣に迫る。
不可視の牙が刀氣に食らいつこうとしたとき。
「刀氣!!」
ドンと突き飛ばされ転がると一瞬の困惑から瞬時に意識を切り替え辺りを見渡す。
「……ソフィア……?……なんで……だ…?」
そこには突き飛ばした態勢のまま脇腹に痛々しく食いちぎられた痕跡の残る姿で横たわるソフィア。
そこにアサルトライフルを持った尾川が現れた。
「ソフィア!刀氣!なにがあった!」
普段の温厚さが消えるほど尾川は焦っていた。どちらも自身の可愛い後輩たち。そして自身が慕い尊敬している人物の変わり果てた姿。
アサルトライフルを撃ち牽制しながらソフィアの様子を伺う。息はあった。そして尊敬する人物の最後を。
「刀氣!しっかりしろ!なにがあったんだい!?」
「……俺のせいだ……俺の……せいだ」
「刀氣!」
刀氣に呼びかけるも「俺のせい」としか言わず茫然自失とする刀氣を尻目に集団変質不適応者が襲い掛かる。
「……俺の……俺が…いらナイ……イラない……おレも……なにモ……カも……」
ドクンと鼓動が脈打つ。その音は世界に轟いた。
その鼓動が世界の動きそのものを止めたと錯覚するほどに。
いち早くその錯覚から立ち直った尾川が叫ぶ。
「ダメだ刀氣!そちら側に行ったら!戻れないぞ!」
尾川には心当たりがあった。科学で作られた異能は時としてその感情を食らう。
暴走。
これが尾川の心当たりであり、現状の刀氣の状態であった。
「世界記憶ニ再接続。禁書目録ヲ参照。桃太郎侍。再起動」
濃密な気配がこの場を支配した。
捕食と殺戮に本能を支配された集団変質不適応者ですら恐怖する。
そんな捕食者が非捕食者に成り代わる気配に。
「大嶽丸ォォォォォォォ!!」
天に吠える刀氣の身体に変化があった。体格が大きくガタイがよく筋骨隆々に。
額から鬼の角が生える、額当ての角の装飾を破り飲み込んでいく。
肩甲骨から翼が生える、血を含んだ刃が如く腕を呑み込んでいく。
尾骶骨から尾が生える、全て貫くほどに鋭く刃よりもしなやかに。
足の横から脚が生える、獣のように曲がる骨の装甲となるように。
「イケ」
刀氣の声とは全く別の声が唱える。低く地の底から……いや地獄の底からこの世に怨嗟を含んだ声質で。
その声が響くと空間が割れる三体の獣が現れる。
棍棒を握る岩の体躯を持つ大猩々が。地獄を守る三つ首の番犬が。死と再生を司る炎纏いし大酉が。
「狂乱ノ宴ダ!ギャハハハハハ!」
狂い嗤いながら刀氣だったものが暴れる。その翼椀で切り裂き、その尾で貫き、その獣脚で粉砕する。
呼び出した獣たちも集団変質不適応者を食らい、砕き、燃やす。
その狂った宴もすぐに終わりを迎える。
刀氣だったものが最後の集団変質不適応者を翼椀で貫き裂いた刻だった。
「ハハハハハハ!ハハァ~……ハァ??……ツマラン」
死と再生を司る炎纏いし大酉の気まぐれかなにかの因果か……ソフィアの傷が癒され復活を果たし、腰に抱きしめて止めたのだった。
「戻ってきて……!いつもの刀氣に戻って……!」
この言葉をきっかけに身体がひび割れ、刀氣が解き放たれた。
6年後。
刀氣とソフィアは結ばれた。いわゆるデキ婚である。4歳になる双子の娘と息子がいる。
1年掛けて復興を果たした株式会社ムソウは代替わりをし、今は庸之が社長を継いだ。会長だった立之の葬儀は早急に行われた。遺言でなにか騒乱が起きた時にそこで亡くなった人間と一緒に葬儀をしてほしいとのことで、みんなで葬儀を行ったのであった。
あの一件以来、変質不適応者の被害は減少傾向にある。
現在、刀氣は現場職と専務の職を行っている。
しかし少なからず被害は出ており、その被害を減らすため夫婦で会社を支えている。
今日も刀氣は愛する家族と会社を守るため奮闘する。
愛する妻ので仕事と人生のバディであるソフィア、娘で双子の姉、刀氣譲りの黒髪と直刀をおもちゃのように扱うやんちゃな天華。
そして息子で弟の方の无創。母親譲りの銀髪と素直になれなさを継いだ
そして株式会社ムソウの代表取締役専務、橘 刀氣。
「株式会社ムソウ」はなくならない。次世代を担う天華无創いるのだから。
「こちら株式会社ムソウです。要件は化物退治ですね」
~Fin~
短編って……難しいんですね……。
頑張りました。




