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第2章 君の音が、聴こえた気がした
ある日、学校の音楽室からタップのような足音が聴こえてきた。
覗いてみると、別のクラスの少女・紬が、足で床を軽く打っていた。
リズムはまだ不安定だけれど、確かに“楽しんでいる”のがわかる。
「それ……タップ?」
勇気を出して話しかけると、紬はふわっと笑った。
「うん。動画で見て、やってみたくなったの」
「……返ってくる音、気持ちいいよね」
「うん、まるで誰かと喋ってるみたいな感じ」
陽は驚いた。
自分がいつも感じていた“世界との対話”を、紬も感じていたのだ。
それから、放課後の音楽室はふたりの“音の遊び場”になった。
足音と、笑い声と、リズム。
そして、伝えなくても伝わる“何か”。