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転生して優しい世界を創る  作者: MASK
第1章:始まり
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第八話:水の精霊シエラと蒼の領域

次に訪れるのは水の精霊が管理する海です。

ルミナの領域を巡った後、

次にダイチを待っていたのは

青く果てしない世界だった。


「お待ちしておりました、創造主様」


波の音と共に、透明な水の衣を纏った

水の精霊・シエラが現れる。彼女の気配は静かで、

まるで深海のような落ち着きを帯びていた。


「こちらが私の支配する水の領域……海の世界です」


ダイチの目の前に広がるのは、どこまでも続く青。

彼は波打ち際に足を踏み入れ、

やがて海中へとその身を沈めていった。


創造神としての力により、

彼の身体は水中でも自由に動き、

冷たさも苦しさもない。


「これは……すごい……」


そこはまさに、命の楽園だった。


透明な水の中を、大小さまざまな魚たちが

群れをなして泳ぎ、海底ではカラフルな

珊瑚が命を育んでいる。

クラゲのような発光生物がふわふわと浮かび、

群青の体表に鱗のような硬いものがビッシリ

生えた鯨“蒼鱗鯨そうりんげい”がゆったりと泳ぐ。

その時、彼の視界を巨大な影が横切る。

海の遥か深みから現れたのは、

シエラの眷属である精霊龍、

蒼晶龍そうしょうりゅう”だった。

蒼晶龍はこの海の支配者として、

すべての潮の流れと命の巡りを見守っていた。

その巨大な体が水を切るたび、

海流が生まれ、魚たちは彼の動きに合わせて泳ぎを変える。

まるで彼の存在そのものが、

この海に秩序を与えているようだった。


「彼は私の力の一部を受け継ぎ、

海の支配者として命の循環を見守っているのです」


シエラの声には、深い信頼と誇りが込められていた。

巨大な翼のようなヒレを広げ、

優雅に水を切って進むその姿は、まさに海の守護神。


「彼は私の力の一部を受け継ぎ、

この海を巡って流れの調和を保っています。

嵐が近づけばそれを沈め、

流れが滞ればそれを導くのです」


蒼晶龍は海流と共に舞い、尾ひれ一つで周囲の

水の流れを変える。その動きが珊瑚の森に

優しい波をもたらし、魚たちを導いていた。


「彼がいることで、この海の命たちは迷わず

生きられる。……まるで、大地に風が必要なように、

海には彼が必要なのです」


シエラの説明を受けながらダイチはその

雄大な姿に目を見張り、ただ静かに頷いた。

さらには、まるで恐竜時代を思わせる巨大な

怪獣“海王竜かいおうりゅう”が遠くの水面を跳ね、

空に虹色のしぶきを上げている。


「この世界は、あなた様が与えた水と時間が、

命を紡いだ場所。私たちの領域の中でも、

もっとも多種多様な生き物が住まう海です」


シエラの言葉に、ダイチは静かに頷いた。


「それにしても……この密度……色……命の厚みが違う」


「水はすべてを包み、流し、そして育てます。

だからこそ、最初の命もここで生まれたのです」


シエラは優雅に水中を進み、ダイチもそれに続いた。

二人は蒼き回廊のような海の森を抜け、

光射す海底の草原へとたどり着く。


「この場所は“潮の聖苑しおのせいえん”と

呼ばれています。海の中でも特に豊かな

エネルギーが集う場です」


珊瑚の花が咲き、魚たちが舞い、

潮の流れが風のように吹き抜ける。ダイチはただ、

そのすべてを目に焼きつけるように眺めていた。


「……ありがとう、シエラ。ここもまた、美しい世界だ」


「創造主様の想いが、この命たちを導いたのです。

私たちはただ、それを守っているだけ」


やがて二人は海上へと浮上し、川の流れに沿って遡る。

水源の森に広がる静かな湖、

霧の立ちこめる神秘的な沼地

そこにもまた、命が静かに、しかし確かに息づいていた。


「川は陸と海をつなぐ命の道。湖は静の恵み、

沼は変化と浄化の場。それぞれが異なり、

それでも水は全てをつないでいます」


ダイチは、水の持つ包容力と変化の

力に圧倒されながらも、心の底から癒されていた。


水の領域は広大で、とても一日で見尽くせるものではない。

だが、彼は確かに理解した。


この星の水は、命そのものだった。

そしてそれを見守り、導くシエラの存在があるからこそ、

この青はこれほどまでに尊く輝いているのだと。

次回、風に乗って世界を空から見渡します。

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