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転生して優しい世界を創る  作者: MASK
第6章:光の勇者ミドガルド編
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第七十二話:王都観光

王都を観光します。

アレンたちは荷物を降ろし、旅の疲れを

癒すために案内された客室で一息ついた。

バルドが笑いながら言う。


「まずは汚れを落とすんだ。汗まみれのまま

 ギルドに顔を出したら笑われるぞ」


ありがたい言葉に甘え、

彼らは商会の浴場を借りることになった。

従業員も使うというその風呂は、男女別に分かれ、

湯気の立ちこめる立派な造りだった。


アレンは肩まで湯に浸かり、思わず息を漏らす。

「……やっぱり、湯ってのは最高だな」


隣の男湯ではカイルがのんびり背を伸ばしていた。

「文明の力だな〜、これは。

 野営の川風呂とは天と地の差だ」


女湯では、リサが湯面に浮かぶ香草の香りを楽しんでいた。

「うわぁ……贅沢だぁ」


湯から上がる頃には、旅の疲れもすっかり抜け、

全員の表情は晴れやかだった。


バルドは、アレン達の王都案内にハンナという

女性職員をつけてくれてギルドまでの道を案内してくれた。

「こちらがハンターギルドです。

 王都のギルドは登録者が多くて、

 常に混んでいるんですよ」


ギルドではハンナの顔が利くおかげで、

報告や報酬の受け取りは驚くほどスムーズに終わった。

無事に任務を終えたアレンたちは、久々に肩の力を抜く。

「……ようやく落ち着いたな」


「せっかくだし、今日はゆっくりしていこうぜ」

カイルの言葉に、リサも嬉しそうに頷いた。


「ねぇ、お腹すかない? 何か食べようよ!」

ハンナが微笑む。


「でしたら、私のおすすめのお店があります。

 ハンターの方々にも人気なんですよ」

ハンナの案内で連れて行かれた場所は、

香ばしい匂いが立ち込める石造りの食堂だった。

厚切りの肉を串焼きにした料理や、

香草をまぶした焼き魚、温かなスープ。

どれも絶品で、店内は冒険者たちの

笑い声でにぎわっている。


「うっまっ!」


「この量でこの値段!? さすが王都だな!」


「ミドガルドに来てよかったねぇ〜!」


出された料理の味に驚くカイル、

値段の安さに驚くブラム、

リサが何よりもはしゃいでいた。

リサが目を輝かせながら肉の串焼きを頬張ると、

店員が奥から巨大な塊肉を運んできた。

表面が香ばしく焼け、肉汁が滴っている。

「……あれ、まさか一人前?」


「ハンター御用達ですからね」

とハンナが笑うと、テーブルは笑いに包まれた。


食後、アレンたちは腹ごなしに

王都の大通りへと繰り出した。


通りでは大道芸が盛んで、

特に魔法を取り入れた芸が人気を集めていた。

火の玉を投げると、空中でそれが花の形に弾ける。

水の精霊が舞台上で形を変え、透明な竜へと姿を変える。

子どもたちが歓声を上げ、大人も思わず

足を止めるほどの華やかさだ。


「すごい……まるで魔術の舞台だ」

「うわ、あの人、杖なしで火を操ってるぞ!」

アレンたちは見入ってしまい、

いつしか拍手の輪に混ざっていた。


ハンナが微笑む。

「大道芸も王都の名物なんです。

 魔法を芸に昇華する人が多いんですよ」


その後、一行は服屋へと立ち寄った。

旅の服はもう擦り切れていたし、

寝間着や下着なども買い替え時だった。


「ふわふわの布だな……これ、

 寝巻きにちょうど良さそうだぞ!」

ブラムが寝巻きの素材の手触りに感動し、

「私、この色のリボン可愛い〜!」

リサが楽しそうに布を当てていると、

カイルが冷やかし気味に言った。


「お、そっちは下着売り場か?

 へぇ〜、リサってこういう……」


バシィッ!


リサの拳がカイルの頭頂部に炸裂した。

「誰が見ていいって言ったのよ!」


「い、いててっ! 冗談だって!」


「冗談で済むかぁっ!!」


店内に響く軽快な音と笑い声。

ハンナは少し困ったように笑いながらも、

どこか楽しそうに二人を見ていた。


そんな穏やかな空気のまま、最後に訪れたのが

ミドガルド資料館だった。


白い大理石で作られたその建物は、

王都の中心に堂々と建っている。

外の喧騒が嘘のように、内部は静まり返っており、

高い天井には過去の英雄や神々の絵が描かれていた。


扉を開くと、一人の女性が待っていた。

銀色の髪を背に流し、透き通るような瞳を

持つその女性は、柔らかく会釈して言った。


「ようこそ、ミドガルド資料館へ。

 私はこの館の案内を任されているセラと申します」


静かで透き通る声に、アレンたちは思わず背筋を伸ばした。

セラは展示物の前に立ち、ゆっくりと語り始めた。


「このミドガルドの地は、

 かつて“人間の理想郷”と呼ばれた都市でした。

 ですがその理想は、他の種族を排除することで

 成り立っていたのです」


展示されている古い絵巻には、

人間たちが獣人を捕らえ、

追放している光景が描かれていた。


「人間は力を求め、他種族を“異形”として迫害しました。

 その傲慢はやがて、神や精霊の怒りを買います」


セラが立ち止まった先には、

巨大な壁画、天から光が降り注ぎ、

都市が崩壊していく様が描かれていた。


「創造神ダイチ様。

 この世界を形づくった神は、人々の心の歪みを見て、

 一度、ミドガルドを“無”へと還そうとしました」


その言葉に、アレンの眉が動いた。

「……ダイチ様?」


リサも小声で呟く。

「この世界を創った神様……そんな存在が本当に?」


セラは静かに頷く。

「その時、神は言いました。

 “心なき理想は、空の城にすぎぬ”と。

 けれど、人々の中にほんのわずか、

 他種族と共に生きようとした者がいました。

 神はその願いを感じ取り、

 ミドガルドを滅ぼすことを思いとどまったのです」


その場の空気がひんやりと張り詰める。

セラの語り口は静かだったが、

どこか“見てきた者”のような確信を帯びていた。


「この出来事の後、人々は誓いました。

 二度と他の種を蔑まぬよう、共に歩むと」


彼女が最後に指差したのは、石碑に刻まれた言葉だった。

そこには、こう刻まれていた。


“神の怒りを忘れるな。神はすべての命を分け隔てなく尊ぶ”


アレンたちは言葉を失い、その石碑を見つめた。

セラは少し微笑んで言った。


「今の王もまた、この誓いを受け継いでおります。

 けれど……心が濁れば、人もまた曇る。

 未だに差別は消える事はありません。

 なのでどうか、この歴史を忘れないでください」


深く一礼したセラの姿は、

まるで風に溶けるように静かだった。

アレンは思わず尋ねた。


「……あなた、まるでその時代を見ていた

 みたいに話すんですね」


セラは淡く微笑んだ。

「ええ“記録”とは、ただの言葉ではなく、

 “記憶”でもあるのです」


その一言が残り、彼女は展示室の奥へと姿を消した。


静寂の中で、リサがぽつりと呟く。

「……不思議な人だったね」

アレンは頷きながら、

「でも、何かを伝えようとしてた気がする」と言った。


そして彼らは、ミドガルドの長い歴史と、

創造神の“怒り”の記憶を胸に刻み、

静かに資料館を後にした。

セラの言葉が引っかかりそれぞれの思いも語ります。

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