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転生して優しい世界を創る  作者: MASK
第1章:始まり
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第六話:溢れる生命

生命が溢れ、精霊達に相棒が生まれます。

微生物のような最初の命が海に芽吹いたことで、

マナはわずかに流動し始めた。

だがそれだけでは足りなかった。

ダイチは、星を包むマナの総量を感じ取りながら思った。


「このままでは、焼け石に水だ……」


精霊たちの働きによって自然の循環は整えられたが、

マナの飽和は想像以上に深刻だった。

小さな命だけでは、あまりにエネルギーが

余りすぎている。


「もっと、命を……もっと生命を増やさないと」


ダイチは決意し、様々な形態の生命を生み出す。

原始的な多細胞生物、遊泳する生き物、

藻類のように光を糧に増えるもの……

その一つ一つに時間をかけて丁寧に命を宿らせた。


だが、進化にはどうしても“時間”が必要だった。

命はゆっくりと変化し、適応し、強くなっていく。

それを待つには、あまりにも長い年月が必要だった。


「……時を、進めるしかない」


ダイチは己の内なる創造力を使い、

星に流れる時間を一時的に

加速させる仕組みを設けようとする。

だがそれには代償もあった。


「その間、俺はまた眠りに入ることになる……」


創造主としての力を行使し続けるには、

意識の消耗が激しすぎる。再び長い眠りにつき、

その間は星を託さなければならない。


迷いが生じる。


だが、精霊たちはその迷いを包み込むように、

ダイチのもとへ集まった。


「どうか、私たちを信じてください。創造主様」

ルミナがやさしく語りかけた。


「我輩らは、この星をあなたの代わりに守り続けましょう。

命の芽が、森となるその日まで」

グランが重厚な声で誓う。


「えへへ、次起きたときは空いっぱいに生き物が

飛んでるかもよっ!」

フロウが笑う。


「オイラ、また雷の形に進化した生命見られるといいな!」

ライゼも目を輝かせる。


「うむ、火山の中にもきっと耐える命が出てくるぞ」

エンリオは拳を握り締めて語った。


「水面だけじゃないわ、深海にも命は宿るわ。

楽しみにしてて、創造主様」

シエラもまた前を見据える。


「……また、数万年後に」

ノクスが静かに告げる。


ダイチはその言葉に胸が熱くなった。

だが、その胸の奥に、小さな棘のような不安が刺さる。


「……時間を進めるってことは、

自分以外のすべての時間を速めるってことだ。

俺にとってはほんの一瞬でも……君たちにとっては、

また何万年もの時が流れるんだ」


ダイチは拳を握りしめた。


「そんな果てしない時間を、

また……君たちに負わせていいのか……」


精霊たちは一斉に首を横に振った。


「どうか、我々にお任せください。創造主様」

ルミナが静かに微笑んだ。


「この星の流れを護ることこそが、

我輩らが生まれた意味。むしろ……それを成すことが、

我輩の誇りにございます」

グランが力強く言った。


「オイラはむしろ楽しみだぜ? 

次はどんな命が増えるのか、ワクワクしてんだ!」

ライゼが笑う。


「……私たちは、あなたの意志を受けてここに在る。

どうか……信じて」

ノクスが静かに呟くように言った。


ダイチは目を伏せ、そして微笑んだ。


「……ありがとう。みんな、本当にありがとう」


その言葉と共に、彼はふたたび星の時間を

動かす決意を固める。


「じゃあ……時を進める。命が、未来へ

向かって歩めるように」


彼の意識がまた眠りの淵へと落ちていく中、

星は静かに、しかし確かに時間を加速させていった。


「ありがとう……みんな、頼んだよ」


その言葉を最後に、彼は静かに意識を閉じた。


時が、流れる。


何万年もの時が、創造主の眠りと共に、星を駆け巡る。


原始の海は変化し、生命は形を変え、進化を遂げていく。

海藻、軟体動物、甲殻類、魚類。

やがて陸に生命が上がり、植物が森を作り、

虫が飛び、空を泳ぐ生物が現れる。


雨が降り、雷が走り、太陽が昇り、夜が訪れる。

そのすべてが命の循環を支えていた。


ダイチが再び目覚めたとき——そこには、

まさに『命の星』があった。


彼の目に映ったのは、ただ数が増えただけの

生命ではなかった。


進化は想像を遥かに超え、地球の知識すら

凌駕する多種多様な生き物が生まれていた。


羽を持ちながらも泳ぐ魚、地を這いながら火を噴く獣、

雷を纏い空を滑空する昆虫、風と一体となって

漂う透明な獣。まるでファンタジーの

世界に登場するような、

不思議な生物たちが世界に溢れていた。


「……こんな進化、見たことない……!」


驚きと感動に震えながら、ダイチは精霊たちの

気配を探した。 すぐに七柱の精霊たちが、

彼の前に姿を現す。


「創造主様、ようこそ。命は、あなたの意志を受けて、

ここまで育ちました」

ルミナが微笑む。


「そして……この子たち、どうでしょうか?」

シエラが海面から浮かび上がるようにして問いかけた。


ダイチが目を凝らすと、

それぞれの精霊たちに共鳴するかのような、

巨大な龍の姿が傍らにあった。


エンリオの背後には、全身が紅蓮の焔に包まれた

焔帝龍えんていりゅう”。

シエラの周囲を泳ぐように漂っていたのは、

水晶のように透き通る“蒼晶龍そうしょうりゅう”。

フロウの上空を旋回していたのは、

風と共に姿を変える“風翔龍ふうしょうりゅう”。

グランの背後には、大地の鼓動と同調する

巌鎧龍がんがいりゅう”。

ライゼの周囲には、雷を纏い空を裂く

雷閃龍らいせんりゅう”。

ルミナの肩に光を纏い舞う“煌光龍こうこうりゅう”。

ノクスの影から這い出るように現れたのは、

闇に溶ける“幽影龍ゆうえいりゅう”。


「みんな、私たちの力の欠片を受けて、

ここまで進化したのです。少し……似ているでしょう?」

ルミナが微笑んだ。


「まさか……君たちに似るなんて……」


「精霊龍たちは、私達の力と意思を受けて進化した存在。 自然を我々が管理するなら、

命の営みは彼らが導いております」

フロウが照れくさそうに笑う。


「でも、自ら選び進化したのです。

我々は導いただけ」 ノクスが静かに言う。


ダイチは、息を呑んだ。


「この星は……もう、俺一人のものじゃないんだな」

大地には草花が揺れ、木々が天を目指して伸びる。

空には鳥のような存在が舞い、

海には大小さまざまな生き物が躍動する。


無数の命が、星を彩っていた。


ダイチは立ち尽くし、呆然とし、やがて涙をこぼした。


「……これが……俺たちの創った、命の星……」

ついに人類を創ります。

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