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転生して優しい世界を創る  作者: MASK
第5章:光の勇者風の精霊編
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第五十九話:鍵を握る少女

少女との出会いが鍵を握ります

翌朝、アレンたちはバルドの露店を手伝いながら、

風の民たちに少しずつ話しかけて情報を集めようとする。

しかし、風の民たちは人間に警戒心が強く、

返事もそっけなく、なかなか会話にならない。


昼過ぎ、疲れて肩を落とすリサが

「……どうしよう、全然話を聞いてくれない」

と呟くと、カイルがにやりと笑い、

「なら、少し空気を変えてみるか」

と背負っていたリュートを取り出す。


露店の隅に座り、軽やかな旋律を奏で始めると、

最初は通りすがりの者がちらりと足を止め、

やがて数人が近くに座って聞き始める。


ブラムが驚いたように

「……人が集まってきたぞ」

と小声で言うと、アレンも頷き、

「音楽に惹かれてるのかもしれない。

カイル、続けてくれ」

と声をかける。


曲が終わると、拍手がぱらぱらと起こり、

集まった風の民の一人が

「人間にこんな演奏ができるとは思わなかった」

と笑顔を見せる。

そこから少しずつ打ち解け、

「最近、門の向こうはどうなってる?」

と自然に会話が始まる。


人々が集まり始めたとき、笑い声や小さな歓声が

街路に広がり、久々に明るい空気が流れた。

しかし、それも長くは続かなかった。

鎧の音を響かせ、兵士たちが駆けつける。


「何の騒ぎだ!」

低い声で怒鳴ると、集まった人々は一斉に散ってしまった。


カイルは一歩前に出て、落ち着いた声で答えた。

「旅人として、ただ音楽を奏でていただけです。

悪意はありません。」


兵士は眉をひそめ、しばしカイルを睨みつけた後、

「この街では無用な集まりは禁じられている。

次は牢に放り込むぞ。」

とだけ言い残して立ち去った。


人々が去った後、残されたのは重苦しい沈黙だった。

リサがぽつりと呟いた。

「ここまで警戒心が強いなんて……

やっぱり何か起きてるのね。」


その夜、皆が宿で反省会をしていると、

窓からコツコツと小石を投げる音がした。

外を見ると、まだ幼い風の民の女の子が立っていた。


「昼間の音楽……すごくきれいだった」

彼女はそう言うと、小さな声で続けた。

「お話、聞かせてあげる。こっそりついてきて。」


仲間たちは顔を見合わせる。

ここから何か情報が得られるかもしれない。


少女の後をついて、街外れの細い路地を抜けると、

月明かりに照らされた小さな教会が現れた。

壁は崩れ、屋根もところどころ穴が空いていて、

かつては人々が祈りを捧げたであろう

場所が今や荒れ果てていた。


「ここ……?」

リサが思わず声をひそめると、

少女は振り返り、にっこり笑った。


「そう、ここがあたしの家。入って。」


中に入ると、中央の祭壇に小さな像が置かれていた。

驚くことに、それは目の前の少女と

そっくりの姿をしていた。


「……まるで君みたいだ。」

カイルがつぶやくと、少女は

一歩前に出て深く息を吸った。


「そう。だって、あれは“あたし”だから。」


少女の身体から淡い光がふわりとあふれ出し、

空気が澄んでいく。

その瞬間、全員は彼女がただの少女ではないと悟った。


「あたしの名前はフロウ。風の精霊。」


その言葉に、場の空気が張りつめる。


「今、この街では風が乱れているの。

 シルフィードは弱っていて、風の民たちも恐れてる。

 だから兵士たちは人々を集めさせないようにしてるの。

 “あの人”に見つかると、また風が奪われちゃうから……」


フロウの声はかすかに震えていた。

彼女は続ける。


「もしこのままなら、シルフィードは完全に眠っちゃう。

 風は止まり、この街は枯れてしまう……」


フロウは少し俯き、言いにくそうに口を開いた。


「……本当は、わたしだけじゃ止められないの。

 風の精霊と一番強く繋がれる“風の巫女”がいれば、まだやれることがあったけど……」


「巫女?」

リサが身を乗り出す。


フロウは静かにうなずいた。


「巫女は、シルフィードの心を映す存在。

 でも今は……幽閉されてるの。

 この街を支配してる王に。」


アレンの眉がわずかに動いた。


「支配してる王……って、普通の王じゃないのか?」


フロウの顔が強張る。


「もう“普通”じゃない。

 彼は……穢れに呑まれた。

 街の風を重くして、民を支配してる。

 もし誰かが逆らえば、翼をもがれて……

 二度と飛べなくされる。」


フロウは唇をかみしめ、肩を震わせた。


「だから……わたしも、民を巻き込むわけにはいかなくて。

 ずっと、何もできなかった。」


重苦しい沈黙が落ちた。

だがアレンは静かに口を開いた。

「……俺たちは水の巫女を助けたことがある。」


その言葉に、フロウの瞳が見開かれた。


「え……?」


「アクアレイアの地で、水の精霊シエラ様を解放して、

 精霊珠を託されたわ。」

リサが言葉を継いで杖を見せる。


すると、フロウの表情がぱっと明るくなる。

まるで凍った湖面に光が差し込むように。


「シエラが……力を取り戻したの? 本当に!?」


カイルがうなずくと、フロウの目に光が宿った。


「……よかった……!

 じゃあ、まだ間に合うかもしれない。

 シルフィードだって、きっと……!」


フロウは小さな手を握りしめ、

希望に満ちた笑顔を浮かべた。

次回、解決に向かって動き出します。

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