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転生して優しい世界を創る  作者: MASK
第1章:始まり
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第五話:目覚め

ダイチが目覚め、精霊達と顔合わせします。

そしてついに生命誕生です。

静寂の中に、微かな気配が差し込んだ。

意識が、浮かび上がる。

まどろみの中で何度も夢を見た。

星が生まれ、空が巡り、海が波を打ち、

大地が息づく夢。 風が吹き、雷が轟き、

光が照らし、闇が包む夢。

それは、夢だったのか、現実だったのか。

ダイチはゆっくりと目を開けた。


「……ここは……」


身体は変わらず、意識も記憶もある。

だが周囲はまるで別世界だった。

かつて、虚無に広がる空間だったその場所は今や、

まさしく命が芽吹く世界へと変貌していた。


遠くには山々が連なり、雲が流れ、

森が風に揺れている。 海は果てしなく広がり、

太陽が昇るとともに波はきらめき、

星の空は幾重にも色を変えていた。

その圧倒的な変化に、ダイチは立ち尽くす。


「こんなにも……変わったんだ……」


目の前には、自分が創りたかった“理想の世界”が、

確かに存在していた。 涙が、頬を伝った。


「ありがとう……ありがとう皆……」


その言葉に呼応するかのように、

七柱の精霊たちが現れた。

それぞれの属性の力を纏いながら、

静かに、だが確かな存在感をもって。


「……おかえりなさいませ、創造主様」

光の精霊・ルミナが微笑みながら頭を下げた。


「星は……あなた様の創造を受けて、こうして育ちました」

水の精霊・シエラが続く。


「風の道も整えておいたよー!」

風の精霊・フロウが元気に手を振る。


「雷は空気に活を入れたぜ!」

雷の精霊・ライゼが胸を張る。


「我輩の大地は深く、広く、豊かに育ったぞ」

土の精霊・グランがどっしりと構える。


「火も忘れるなよ。内から支えたのは俺だからな」

火の精霊・エンリオが炎のような熱気を纏って笑う。


「……夜の帳も、忘れずに整えておきました」

闇の精霊・ノクスが静かに告げた。


ダイチは彼らを見渡し、深く息を吸い込んだ。


「みんなありがとう……ところで、

俺はどれくらい寝てたんだ?」


その問いに、精霊たちは一斉に顔を見合わせた。


「創造主様が眠りにつかれてから……我々の時の

流れでは、およそ一万と五百年ほどになります」

ルミナが丁寧に頭を下げながら答えた。


「その間、我ら七柱は御命に従い、

星を守り育ててまいりました」

グランが重々しく語る。


「えっへん、オイラもちゃーんと仕事してたんだぞ!

創造主様の星をピカッと磨いてな!」

ライゼが胸を張ると、フロウが


「もう、創造主様の前でその態度はどうなのよ」

と苦笑した。


「ふん、俺は星の核を守ってきただけだ。

創造主様の火を絶やさぬようにな」

エンリオは尊敬の念を込めた口調で言いながらも、

照れ隠しに目を逸らす。


「海も空も、大地も……すべては創造主様の

お力によって始まりました。

我々はその導きを守り続けてきただけにすぎません」

シエラが穏やかな声で続けた。


「夜の帳も欠かさず整えておりました。

創造主様が再び目覚められる時まで、

静かなる調和を保ち続けてまいりました」

ノクスが静かに一礼した。


「ありがとう……みんな、本当にありがとう。

よくここまで星を育ててくれて……」


そして、目を閉じる。


……不思議だった。


星から感じる力——それは、自分が眠る前には

無かった強い“生命の気配”だった。

自然界に充満する膨大なエネルギー。

それはまるで、大地そのものが命を

欲しているような、飢えに近い膨張だった。


「これは……マナ、か?」


自然の力が精霊たちの活動によって星に

循環し続けた“生命の源”が、溜まりすぎて

飽和状態になっているのだ。

それは豊かさの証であると同時に、

バランスを崩せば災厄の種にもなり得る危険な状況。


「このままだと、マナが暴走するかもしれない……」


ダイチは唇を噛みしめた。


創造の根源たるマナ。それは本来、

命によって循環され、自然へと還るものである。


「ならば……命を創る。星に、

生きるものを与えることで、マナを回すんだ」


精霊たちは静かに頷いた。


「それが……次の創造なのですね」


ルミナの言葉に、ダイチは力強く頷いた。


「うん。俺たちの星に、命を与えよう。

……母なる海から」


地球でもそうだった。

生命の始まりは海からだった。

最初の生命は、きっと小さく、弱く、

だが確かに息づいていくだろう。


ダイチは海に手をかざし、目を閉じた。

静かに、深く、祈るように。


「この星に、最初の命が芽吹きますように——」


その言葉と共に、海がさざめき、

静かに波が光を帯びた。

やがて、水中に淡い光が宿り、

そこから小さな“泡”のような存在が浮かび上がってきた。

それは目に見えるか見えないかの微細な生命。

触れればすぐに壊れてしまいそうな、儚い命の粒。


それでも、それは確かに『生きていた』。

自らの力で、わずかに水をかき分け、

漂い、分裂し、また増えていく。

それは、原始の海に芽吹いた最初の微生物たちだった。

静寂が、深く満ちる。


「……すごい……これが、命」

シエラが目を潤ませながら、海を見つめた。


「小さいけれど……確かに生きているんだね」

ルミナの声が、海の光と重なってやさしく響いた。


「ぷかぷか浮いてる感じ、かわいいな~」

フロウが指先で海の上をなぞるように動かすと、

微生物たちはそちらに反応して光を放った。


「ふん、オイラにはまだ頼りないけど、

ここから強くなっていくんだろ?」

ライゼが空を見上げながら笑った。


「我輩の大地にはまだ届かぬが……そのうち

陸を目指すのかもしれんのう」

グランが腕を組んで頷いた。


「熱がなければ命も動けん。火のエネルギーも必要だな!」

エンリオは燃えるような瞳で、波打つ海を見据えていた。


「……命が動けば、やがて夜の静寂の中で眠り、

夢を見るのでしょう」

ノクスが静かに言った。


精霊たちはそれぞれの視点から、

最初の命の誕生を祝福していた。

それはあまりに小さな始まりだったが、

確かな“未来”の兆しだった。

次回命が爆発します

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