第十五話:人類は歩み始める
各精霊に産みだされた人類が少しずつ文明を築いていきます
精霊たちとダイチが産み出した人類たちは、
それぞれの加護と特性を受け継ぎながら、
独自の文明を築き始めていた。
その文明はまだ原始的でありながらも、
確かに人としての営みが根付き、
文化と生活の萌芽が各地で芽吹きつつあった。
火の精霊エンリオの民たちは、火山の麓に集落を築き、
炎に対する驚異的な耐性を持って生まれてきた。
彼らは火を自在に扱い、武器や防具の製作にも長けており、
戦闘において屈強な戦士としての道を歩んでいた。
その姿は、まさに火竜の末裔のごとく、
猛々しさと誇りを宿していた。
水の精霊シエラの民たちは、
澄んだ海の中にドーム状の村を築き、
水中でも自然に呼吸ができる身体で、
陸の民とはまったく異なる生活様式を発展させていた。
彼らは泳ぎに長け、魚や海藻を利用した
食文化や装飾品を持ち、独自の舞踊と歌を海中で
披露する習わしを持っていた。
風の精霊フロウの民たちは、背に翼を持ち、
大空を自由に飛び回る存在であった。
彼らは風の吹きすさぶ渓谷に定住し、
風の流れを読んで空中での作業や狩猟を行っていた。
風と共に生き、風の音を言語の一部として用いるなど、
まさに空に生きる民だった。
雷の精霊ライゼの民たちは、雷を操る素質を持ち、
頭の回転が早くひらめきに満ちていた。彼らは日々、
雷を動力に変えるべく試行錯誤を重ねており、
失敗と爆発を繰り返しながらも、
新たな道具や構造物の開発に挑戦していた。
文明としての発展は未熟ながらも、
発明への情熱と意欲は他のどの民よりも強かった。
土の精霊グランの民たちは、大地の奥深くに根ざした
暮らしを営んでいた。鉱石や魔石を自在に扱うことに
長けており、地底に整然とした都市を築いていた。
金属の加工や石造りの建築、魔石による照明や
防衛装置の開発など、その技術は精霊たちの中でも
随一であった。
光の精霊ルミナの民たちは、聖域に神殿都市を築き、
最も強く神への信仰心を持って暮らしていた。
彼らはダイチを最高神として敬い、日々の祈りを欠かさず、
教えを文字として記録し始めていた。
文明としての統制力が高く、
儀式や法制度の芽生えも見られた。
闇の精霊ノクスの民たちは、夜の闇に生きる静かな
民であった。暗闇に慣れ、光を必要とせず、
静かに狩りを行い、気配すら悟らせずに糧を得ていた。
音を立てぬ移動や夜目の利く視力、魔力に長けた感覚で、
他の民からは神秘の存在として恐れられることもあったが、
彼ら自身は争いを好まず、静謐な暮らしを重んじていた。
そして最後に、どの属性にも属さぬ“無の民”たちがいた。
彼らは、だだっ広い草原に集落を築き、
他の民のような特別な能力は持たなかったが、
協力したり時に争ったりしながら、
多様な道を模索していた。信仰の対象を持たず、
精霊の存在も知りながらも、どこか一定の距離を置き、
自らの手で道を切り開こうとしていた。
それぞれの民は、自らの創造主である精霊を
神として崇め、加護を受けながら暮らしていた。
その光景に、ダイチは静かに微笑む。
人類は、確かに芽吹きはじめている。
世界は、精霊の加護と人の営みと共に、
ゆっくりと、しかし確かに文明という名の灯を
ともしていくのであった。
次回人口が増え、いろんな人類が出会います