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【第三十一話】

「はいはーい。そこまでかな。小泉さん、いつまでそこに立ってるの。木下君も」

 そう言われて振り向くと手を握り締めた涼香が下を向いて僕に背中を見せて立っていた。「涼香?」

 そして大きく息の吐く音が聞こえてから涼香は背中を向けたまま話し始めた。

「知ってた。全部知ってた。きーちゃんと血の繋がりがないって。きーちゃんが私のことを好きだって」

「じゃあ、なんで僕の前から姿を消したんだよ」

「だって。私の好きは憧れだったから。憧れは恋じゃないって」

 確か昔、春日部さんに同じことを言われたな。憧れは恋じゃない。

「どんな憧れだったんだよ」

「きーちゃんのお嫁さんになること」

「また子供じみた憧れだったんだな」

「だって……。女の子の憧れだもん」

「それで憧れは恋じゃないって言ってるのか。その憧れは恋だよ。僕が春日部さんに抱いた憧れはそういうものじゃなかったよ。もっと単純に付き合えたら素敵だな、程度のものだったよ」

「あら、そうなの?ずいぶん軽いものだったのね。あの時の返事は間違ってなかったのね。それで?小泉さんはその憧れをどうしたいの?」

 春日部さんが涼香に尋ねると、涼香はこう答えた。

「……。諦めたくない。絶対に諦めたくない!」

「だったらなんで」

 なんでさっきの僕の申し出を断ったのか。

「涼香。憧れだって構わないんだぞ。もう一度僕にチャンスをくれないか?」

 僕は涼香の背中を見つめながらそう言った。表情は見えなかったけども、多分目を閉じて考えているのだろう。

「あー、もう!小泉先輩!これ!」

 碧ちゃんは涼香に何か手渡してから涼香をくるりと回して背中を押した。そして涼香は渡されたそれを確認してから僕の方にゆっくりと歩いてきた。

「きーちゃん」

「なんだ涼香」

「なんだはないでしょ?」

「そうだな。それじゃ、涼香がやりたいことってなんだ?」

 涼香は大きく息を吸ってから息を止めて。そして僕にこう言った。

 

「きーちゃん。私と結婚してください」

 

 僕はその言葉を噛み締めて黙ってしまった 

 

「きーちゃん?」

「ああ、すまん。嬉しくてついな。返事だったな」

「木下先輩!ここはちゃんと返事してくださいよ!頷くだけとかナシですからね!」

 碧ちゃんから檄が飛んできた。そして僕はこう答えたんだ。

 

「涼香。愛してる。僕と結婚してください」

「……はい!」

 

「あー。本当にこんな事になるなら呼ばないほうが良かったかなぁ」

「そうだ。碧ちゃんは涼香の居場所って知ってたのか?」

「知ってるも何も。ずっと私の家に住んでましたよ」

「はぁ⁉︎日本にいたのかよ!」

「いましたよ。ずっと」

「なんてこった……」

「いいんですよ。私がした事なので。先手を打って私が木下先輩を捕まえただけですから。こうなるのだって薄々気が付いていたんですよ。でもワンチャン狙ってここまで来て。でもやっぱり禍根は残したくないなって思いまして。そしたら見事に玉砕したんですけどね。だから木下先輩は絶対に小泉先輩のことを幸せにして下さい。もし変なことをしたら化けて出ますからね」

「なんで死んでるんだよ」

「この後、寂しさのあまりに死んでしまうかも知れないじゃないですか」

「碧ちゃんはそんな事しないでしょ」

「もう!木下先輩の中での私ってどんな感じなんですか!」

「冗談はこのくらいにして。絶対に幸せにしてみせるよ。碧ちゃんが後悔しないくらいに」

「そうですね。たくさん好きって言ってあげて下さい。言わないと伝わらないことって沢山あると思いますよ」

「そうだな。そうするよ。碧ちゃん、ありがとな」

「お礼はやめて下さい。なるようになっただけですから」

「そう言ってもらえると気持ちが少しだけ軽くなるよ」

「そうですか。それじゃ。一生恨んでやる!その代わりに絶対に、ぜーったいに小泉先輩のこと幸せにして下さいね!それじゃ、私はこれで!あ、式場のことは私がやっておくので!あー、招待した人になんて言えば良いんだろ。あ、これも私からやっておきますから!」

 本当は僕がやるべき事なんだろうけど、そう申し出ても碧ちゃんは邪魔!って言うんだろうな。そして碧ちゃんは式場の出口を出て見えなくなった。

 

「きーちゃん、ちょっといい?」

「ん?なんだ?」

「さっきのこれなんだけど……」

「ああ、サイズが違うだろうから作り直さないと」

「違うの。これ、私のサイズなの」

「え?」

 あいつ、最初から分かってたんだな。覚悟が足りなかったのは僕の方だ。僕はその覚悟に恥じない人生を送らなくてはならない。だから。

 

「涼香、それ、貸して」

 僕は涼香からその箱を受け取ってから改めてこう言った。

 

「小泉涼香さん、僕はあなたの事を愛しています。僕と結婚して下さい」

 

「はい……!」

 

 僕らはこの日のことを忘れないだろう。いや、忘れてはならない。この日の覚悟を未来永劫、忘れてはならない。だから僕たちは進み続ける。

 

 永遠の愛を誓って 

【あとがき】

 

 どうも。作者です。まずは十万文字もの作品にお付き合い頂き、ありがとうございます。一般的な人の読速で約三時間だそうです。そんなにも長いお時間を頂きまして、本当にありがとうございます。

 さて、このお話は幼馴染の話ですが、実は私にも幼馴染がいまして。幼い時に作中と同じような約束をしたのですが、高校卒業時に私がフラれてしまいまして。それでなんかハッピーエンドだったらどうなるかなー、なんて思いながら書いていたんですけど、自分が碧ちゃんの立場だったら大変ですねぇ。ずっと独り身を貫くのが正解なのかも知れませんけど、人間そんなに強くないと思うんですよね。その点、碧ちゃんは強い人物なんだと思います。プロット時点で流れは書いてましたけども、実際どんな立ち回りにするかは、書き進めながら、この性格はきっとこうするだろう、とか考えながら書きました。そして作中のような振る舞いかな、と。

 私は物語を書く前に登場人物の世界をなんとなく作って、実際の性格は書きながら確定させるような感じにしてるんです。だから、作中でプロットにはない、この性格はこうするだろう、みたいな感じで脱線することもままあるのですが、この作品は比較的そのようなことはありませんでした。いつもは跳ね回って納めるのに苦労するんですけどね。

 なんにしても無事に完結させることができて良かったです。次回作もなんとなくプロットを描き始めてますので、またお付き合い頂けますと幸いです。それでは!

 

 あ、そうそう。細かい感想を貰えたら嬉しいけど、カンタンに一言だけ「いいね!」って書いてくれると嬉しいかなぁ。この作品が誰かに響けば嬉しい限りです

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