正義マンズ
困っちゃうー。
ピラミッドの奥には、誰にも知られていない秘密の部屋があった。
その扉がバゴンと開いたとき、わたしたちは思わず声を上げた。
「うわぁ……なにこれ、めっちゃ映え……!」
そこはまるで、古代と未来が融合したような——巨大なコスプレ更衣室だった。
天井まで届くラックには、あらゆる時代と次元の衣装たちがずらり。
ギラギラのアーマー、セクシーなチャイナドレス、修道服、戦闘用ビキニ……。
武器の棚には、鞭、三節混、魔導ライフル、金色の算盤……。
それはまさに、聖女たちの魂をお色直しするための、異界のドレッサールームだった。
「やっば……これ、ぜったい着るしかないやつじゃん……」
先に飛びついたのは郁子だった。彼女は迷わず、
あの伝説のくのいち「不知火舞」の衣装を手に取った。
深紅の紐を胸の谷間にからませながら、彼女は言った。
「ふふっ。わたし、いまから“鬼丸秘密子”だから。」ボヨーン☆
その目は、完全に“目覚めた”女子のそれだった。
「ま、郁子がそれなら……わたしはこれ、いくわ」
薬子はすっと棚から、白いタンクトップと黒のミニスカ。
FF7が誇る伝説の格闘娘の衣装。そしてゴツい三節混を引き抜いた。
「ティファよ、ティファ。……いや、いまのわたしは
“京極理趣子”ってことでよろしく。」バイーン♥
たしかに、そのむっちりボディはティファを超えていた。
まさに“戦う理趣経”そのものだった。
そして最後に現れたのが、紅葉先生。
「わたしは……これでいこうかな」
そう言って彼女が選んだのは、目隠しをした聖女
——ゴブリンスレイヤーの“剣の乙女”の衣装だった。
そのまま、白くひらひらした布地に身を包み、銀色の聖なるライフルを構えた。
「ふふ……いまのわたしは、“電通起信子”よ。」アハーン♡
その声は、かつて魂を焼かれたことのあるすべての者を癒す、慈愛の音だった。
三人は、それぞれ異なる時空の“聖女兵装”をまとい——
ゆっくりと、光の差しこむピラミッドの廊下を進み出した。
その背中に、砂嵐がさざめきながらこう囁く。
——これは、時に悪役であることもいとわない聖女たちの物語。
悪役聖女、爆誕である。
更衣室を抜けた先に広がっていたのは、信じられないほど巨大な闘技場——。
そこはまるで古代ローマのコロッセオと、
古典が並ぶ本棚がフュージョンしたような異空間だった。
「なにここ……エモすぎてヤバ……」
理趣子が呆然とつぶやく。
その中央に、三人の屈強な男たちが立ちふさがっていた。
筋肉、スーツ、哲学、理性。……いずれもパンチの効いた“おじさん”たちである。
「こいつらを倒さないと、先に進めないってわけね」
秘密子が、赤い鞭をぺしぺし鳴らしながら不敵に笑う。
そのとき、一人目の男がうなり声をあげて突進してきた。
ロールズ「我が正義を食らうがいい! 無知のヴェール!」
そう叫びながら、男は分厚い布のようなものをばさっと振りかざしてくる。
「ちょ、なにそれ!? 布プレイとか自称正義マンのくせに変態じゃん!」
秘密子はムチムチの太ももでくるりと回転し、鞭をピシィィィンと叩きつけた。
「ムチムチの愛の鞭ですわ!」
布は空を切り、ロールズはそのまま鞭でグルグル巻きにされて地面に沈んだ。
「次っ!」
二人目の男が前へ出る。
サンデル「負荷なき自我ァァァァァ!!」
叫びと同時に、透明な鎖のような概念が空間を縛りつけてくる。
「自我を固定しろ……選好は正義の中でのみ実現される……!」
「うっざ! 何もかも制限してくるの、マジ昭和って感じ!」
理趣子は、黒光りする三節混を構えた。
「この! この! このハゲー!」
バキィッ! ガシィィィンッ!!
透明な鎖はすべて叩き斬られ、サンデルはショックのあまりその場でハゲた。
「最後の一人……なんかバフってない?」
三人目の男は、筋肉がモリモリと膨れ上がりながら叫んだ。
ノージック「自由最高!アナーキー! 国家! ユートピアぁぁぁぁぁ!!」
オーラが爆裂し、筋繊維がズドドドドッと震えだす。
「全然自由じゃないし!てか、なにこの脳筋マッチョ!?」
起信子は、目隠しをしたまま静かにライフルを構えた。
「あなたの自由、ちゃんと愛に向いてますか?」
バンッ。
ライフルから放たれた一発の光は、ノージックの巨大な胸板を貫き
——その中心の、小さな小さなハートを撃ち抜いた。
静寂。
男たちは倒れ、コロシアムには風が吹いた。
「勝った……?」
「うん。悪役聖女って……最強じゃん」
ボヨヨーン。
聖女たちはしなやかに髪をなびかせながら、勝利のポーズを決めた。
——次のステージは、もっとジャスティスな何かが待っているかもしれない。
イメージソング。
乃紫 (noa) 「全方向美少女」。
https://youtu.be/1qxsgGso_sE?si=MySc3kSPG2qasG0c