勉強意欲
日付が変わる前だからセーフ。OK?
愛すべき父が領地関係や貴族としての仕事を主にしているのは書斎だ。
主にということは、ラインハルトは他の場所でも仕事はしている。
そしてスピカは今、現在ラインハルトが仕事をしている書斎の前に、連れて来てくれた使用人と一緒に立っていた。
「ねぇ、お父様は本当に今日はここにいるの?」
「はい。確かにそのようにお伺いしておりますが………」
スピカが疑うのも無理はないが、今日は本当に書斎にいるので使用人としても安心して欲しい気持ちでいっぱいだった。
「失礼します。ラインハルト様。スピカ様をお連れしました」
使用人は、扉を軽くノックして、要件を伝えると扉を開けた。
スピカは応じられたままに中に入り
「お父様!!」
仕事をしていた手を止めて、入って来たスピカの姿を見ていたラインハルトの元に走り出した。
「おっと、こんなところで走ったら危ないよ?」
「えへへ」
ラインハルトはすぐさまスピカの走ってくる地点に移動すると、先程のシオン同様、優しく受け止めた。
優しい父の温もりに、スピカは笑みを浮かべる。
「それでお父様、今日はどうしたの?」
そしてスピカはラインハルトに抱き着き、少し上を見上げて質問をする。
ラインハルトは「そうだった」と言いながら書斎の机の上から一枚の紙を取り出した。
「スピカも三歳になったからね。少しづつだけど、勉学の方も進めていこうかなって思うんだ」
「お勉強!」
3歳のスピカは向上心の塊みたいなものだった。姉であるシオンがしている勉強に興味も持っていたし、なんならシオンが昔使っていた簡単な本なら譲ってもらって読んだりしていた。
算数や国語の本。果てには魔術書や剣術指南書まで使用人や母であるカレンにも手伝ってもらいながら。
無論、3歳のスピカが全てを理解することは難しく、算数や国語の本は最初の方だけ。魔術書は初級の魔法を幾つかだけで、剣術に至っては何ひとつわからなかった。
無論、ラインハルトはそのことも聞いている。だが、勉学に意欲を出しているスピカを妨げるどころか応援もしたかったし、協力したかった。
「勉強!勉強はいつからするの!?」
「直ぐには出来ないよ。まずは教えてくれる教師になってくれる人を探さないとダメだからね」
まだ探してなかった理由は、スピカにはまだ早いと感じていたからだろう。実際、シオンが本格的に勉強を始めたのは5歳からだ。なので5歳までは強制させる気はなかった。が、本人に「したい!」という意思があるのなら、ラインハルトとしては勉強を始めるのは吝かではなかった。
無論、ここでスピカが嫌がればこの話しはスピカが5歳になるまでお預けになるところだったが。
「それとね、スピカも大きくなったし、専属の使用人も必要かなってね。最近のスピカはやんちゃだから」
ラインハルトの少し困った顔を見ながら、スピカは最近の行動を反省すると同時に、専属の使用人。即ち新しいお友達との邂逅に胸を踊らせるのであった。




