3歳まで成長しました!
GWは毎日投稿!
私の仕事の休みは今日からだから私のGWは今日からって認識で大丈夫だよね?
スピカ・メロディアスがこの世に生を受けてから3年の月日が経過した。
この3年でスピカは無事に成長していた。
3歳と言えば、ある程度の自由意志が生まれ、ある程度の会話が可能になり、意思疎通の可能性が出てくる時期だ。
第一次成長期の真っ只中ということもあり、屋敷にいる全ての人間が気をかけることにより、スピカは大きな怪我も無く、安全に暮らし、スクスクと成長していた。
そんなスピカは今、自室から脱走して屋敷の中を走り回っていた。
「待ってくださいスピカ様〜」
「いや〜!こっちまでおーいで!」
数人のメイドがそんなことを言いながらスピカのことを追いかける声が聴こえる。だが、スピカはそんなことに意を介さず、隠れながら逃げ続けている。
脱走したということは、メイドたち使用人にとっては一大事件だが、お茶目なスピカにとっては、完全にかくれんぼ気分だ。
最も、メイドたちは無理に追いかけて傷つけてはいけないので、色々気を使っているのだが。幼いスピカは、そんなことにも気が付かず、自分が逃げきれていると勘違いしながら、楽しそうに逃げている。
(楽しい!)
それがスピカの心の中を埋め尽くす感情だった。
スピカは貴族令嬢だ。間違っても大怪我をしないように育てられてきた。
実際、この年齢に至るまでスピカは外は勿論、家の中ですら一人で満足に動いた記憶が無い。無論、かなり広い貴族の屋敷の中を二歳三歳の子供が走り回るなんてことは有り得ないしあってはいけないのだが。
「スピカ様!そちらは危険です!」
使用人達が必死に追いかけてくるが、スピカはそれを尽く回避。心配の声すら無視し、遂には
「きゃっ!」
『スピカ様!!』
追いかけてくる使用人に気を取られ、前方に迫っていた階段に気が付かずスピカは転がり落ちようとしていた。
「‘’風よ‘’」
と、その時。落ちようとしていたスピカの身体を風が優しく受け止めた。
使用人はスピカが怪我しないことに安堵し、スピカはいつまで経っても来ない衝撃に疑問を覚え、薄らと目を開き始めた。
「危ないでしょ?大丈夫?」
目を開いた先の光景に居たのは、自分のことを心配そうな顔で見つめてくる、愛すべき姉だった。
「シオンお姉ちゃん!」
スピカは風から解放されると即座にシオンに抱き着いた。
シオンはそんなスピカを優しく受け止め、頭を撫でる。
そしてそんな2人の元に使用人達が駆け寄って来た。
「申し訳ございませんシオン様。シオン様のお手を煩わせてしまい」
「ううん。大丈夫。可愛い妹だもの。助けるのは姉の役目。そして、あなた達の忠告を無視して危険なことをしたスピカも悪いもの」
シオンは使用人にそう言うと、頭を撫でていたスピカに注意をする。
「はい。ごめんなさい、シオンお姉ちゃん………」
「うん。危ないことは、しないでね」
シオンはそう言うと、背中まで回していたスピカの腕を優しく解き、歩き去って行く。
シオンは5歳から本格的に貴族としての教育を受けるようになり、経済学や領地運営の勉強は勿論、貴族としての自衛能力のために剣術や魔術の勉強まで並行して行っている。
そのため、スピカと遊ぶ時間こそ少なかったものの、いつも優しく接してくれるシオンのことが、スピカは大好きなのだ。
「そう言えば、みんなはどうして追いかけて来てたの?」
スピカが屋敷を走り回っていたから。それもそうだが、スピカがある程度屋敷内を走ることは使用人ならみんな知っていることだった。
だからこそ、スピカは疑問を覚えた。
いつも走っていても注意こそすれど微笑ましそうな笑顔で見送ってくれていた使用人たちが。なぜ、あんなにも自分を追いかけていたのだろう、と。
「そうでした。実は………」
使用人の一人が、今日に限って必死に追いかけ続けていた理由を話し始める。
「スピカ様のお父上。ラインハルト様がスピカ様をお呼びです。とても、大事なお話があると」




