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私、幸せになります~美少女の異世界放浪記~  作者: メロゆっくりch
幼少期編
2/4

男児の産まれぬ貴族の悩み

閑話みたいな話です

 ラインハルト・メロディアス伯爵の家に二人目の娘が産まれた。

 そのニュースは瞬く間にメロディアス領内に駆け巡った。

 元々、メロディアス伯爵はリリルカ王国内にある貴族達の中でも領民からの印象は極めて好意的だ。


 リリルカ王国内の貴族の中でも、領主の立場を与えられ領土を持つ者の中には、圧政を敷く者も少なくはない。

 リリルカ王国は大陸内でも小さくない国土を持つ国であり、無論、それなりの数の貴族がいて、領土を持つことを許された者も存在する。


 そして中には、そんな立場を利用し、好き勝手する者も存在する。


 圧政を敷き、民を困らせ移住する者を増やす、又は他の貴族や領主に報告し、付け入る隙を与えて国に話が通り、無理矢理領主の立場を剥奪される者。


 それらの二の舞にならぬよう、行き過ぎぬように慎重に考え、行動し、己の立場を守ろうとする者。


 領民のことを気遣い、良き領土にしようと奮闘する者。


 リリルカ王国で一番多いのは、二番目だろう。


 貴族というものは野心家が多く、大半の者はより上の地位に辿りつこうとする者が多い。

 国からの評判を上げ、政略結婚によってより上に行きやすくする。

 領主になるということは、出世コースに乗りやすくするものだ。


 だが、領主になったばかりの貴族や、当主を継いだばかりのボンクラ息子といった人達は、己の実力を過信し、そして地に落ちる。

 だから、一番目に該当する者はいない。いてもすぐにいなくなる。


 逆に、冷静に動ける者は態々自らアキレス腱を作るような真似はしない。


 だから、二番目の者は最も多く、公爵になる確率も高いため、大半はこちらを選ぶ。


 そしてメロディアス領の領主、ラインハルト・メロディアスは、一番目でも二番目でもなく、三番目だった。


 悪徳領主でもなく、計画的な領主でもなく。彼の領主は善政を敷く者だった。


 元々メロディアス領は評判が良い。

 メロディアス家は王家との繋がりは長く、そして強い。

 代々出世など考える人等は少なく、より良い領地を運営することを考えている。


 だからこそ、民からも信頼されているのである。


 一度、話を戻そう。

 

 そんなメロディアス伯爵の家で娘が産まれた。そんな報告を聞けば、領民は皆祝福してくれることだろう。


 他の領内ではあまり見られぬ光景。これこそが、メロディアス家が領民から愛されている証拠であろう。


 だが、問題もある。


 産まれたのが娘であるという問題が。


 ラインハルト・メロディアスの元に産まれたのは二人目。それも二人とも女の子。


 世継ぎが、存在しないのである。


 リリルカ王国。この国には、まだ女性が領主を継いだ事例がなく、また女性が当主になることを、国が認めていない。


 故に、メロディアス家が潰されないようにするには、新たに息子を産むか、婿養子を迎え入れなければいけないのだが。


「ふぅ………」


 二人目の娘、スピカ・メロディアスが産まれた日の夜、ラインハルトは執務室の椅子に息を吐きながら座った。


 出産という一大イベントがあったとはいえ、仕事は待ってくれない。

 昼間に嫁と娘に付き合っていた分の仕事を進めながら、ラインハルトは考え事をする。


 そう。娘のことだ。


 自分たちの元に産まれた子供。二人目の、愛すべき家族。可愛らしい女の子。だが


「父として、個人としてはダメだとわかってるんだけどね………」


 だけども、息子を欲していたのもある。


 無論、娘でも嬉しかった。新たな家族が増えたのだから。

 だが、問題点もある。


 婿養子を迎え入れることが必然になったということが。


 三人目の子供が息子ならば問題は無い。だが、それはあくまでも三人目を産んだ場合だ。


 ラインハルトの嫁、カレンは元々身体がそんなに強くはない。

 二人産んだことすら無茶とも言える行動だったのだ。


 だが、カレンが子供を欲し、渋っていたラインハルトが折れた。だからこそ産まれた子供がスピカだったのだ。


 二人で終わり。三人目は、ない。

 これ以上は、ラインハルトがカレンの身体のことを思い、止めるだろう。


 だからこそ二人の娘には幸せになってほしいのだ。

 だけどそれを〈メロディアス伯爵〉という貴族の血と立場が邪魔をする。


「ままならないものだな、現実は」


 娘を政略結婚の道具になどする気は無い。

 だがせめて、二人の娘が幸せな道を進むことを、祈るしかなかった。


家の存続を考えるなら婿養子を迎えて結婚させるのが一番。

だけどラインハルトはそれをさせる気はなく、させる気は無くとも周りはそれを理解してくれない。


この悩みは「男の子が産まれなくて悲しい」といったものではなく、「娘たちを否が応でも厳しい現実に立ち向かわせてしまうこの世界が憎ましい」といった感情ですね

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