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仲間

「強いわね。カリン」


広場の熱気が冷めぬ中でカリンはメアリーさんに褒められていた。その言葉にカリンは耳を動かしながら、小さく飛び跳ね、喜びを表現していた。


しかし、模擬戦でも金が絡むと、人は顔つきが変わるものだ。メアリーさんの咄嗟の判断でスル・メは一命をとりとめたのだが、見せ場なく敗れたスル・メに負けた客達が足蹴にしている。


罵声の中で「おかしい」の言葉が一度だけ聞こえてきた。足蹴メンバーに姫様もいたのだが、まさか賭けに参加していたのだろうか。真相はわからないけど意外な一面を見てしまった気がする。


「やっぱり謎ね。」


「何が?」


「何って、カリン、強いもの。」


なるほど、確かに謎だ。メアリーさんはカリンは檻に入れられて馬車で運ばれていた。おそらく奴隷商人だとは思うが、カリンのこの強さがあれば逃走は容易ではなかったのではと、説明する。


カリンに聞いても、肝心の言葉が化けて理解できない。


「うん。やっぱりカイロ。貴方がカリンのお守役に適任よ。」


謎に対して、意味不明な男が適任だと再度言われたが、正直、魔石集めの仲間ができたのは嬉しかった。


その日の晩、賭け対象の敗者スル・メは牢屋の片隅で、身を潜めていた。どうやら足蹴にされたのが堪えたらしく自身が一番落ち着く檻の中へ自ら入り鍵を閉めたらしい。


「おかしい。」と偶に声がする地下の牢屋。事情を知らない人が見たら、不気味な現場にみえるだろう。


俺とカリンはお昼から夕方前まで東の森の中で魔物狩りをした。二人で魔物狩りは初めてだったがカリンの活躍もあり実に効率の良い魔石集めだった。


明日からは少し奥地に連れて行こう。お尻の怪我から回復した味方オーク面のデデさんを本物オークと勘違いして襲いかかったのには驚いたが、片手で棍棒を止めたデデさんも、やはり実力者だ。お尻の怪我は、調達組がいなければ負わなかったのだろう。やはり団体行動は難しい。


「カイロ。カリン。お疲れ様。」


宿舎から出てきたメアリーさん。理由は知らないが、すこぶる機嫌が良さそうだ。…普通に俺の名前呼んだし。


だから人が多いのか。メアリーさんは旅商人から【温水】のスクロールを購入したらしい。そして、泉から水路を引いてお風呂を造ると意気込んでいる。


「こんな場所でお風呂入れるなんて、ぜ・い・た・く・の極みよ。」


砦内では泉か井戸の水で身体を拭くことくらいしかできないから、確かに贅沢な施設だ。


まあ、俺は別に要らないけど。


姫様は夜空を見て聖剣を探している。初夏の星座にヒントがと言っていたが無事に答えまで辿りついてほしい。答えを俺は知らないが、あの屋根の上で過ごした夜に俺の言葉が彼女にきっかけを与えたと思うと、なんだが誇らしく思えてきた。


「あれは…蛮族の勇者様の流れ星!」


うん。姫様は絶好調だ。今は、放って置くのが一番だろう。そして、なぜ部屋まで一緒なのだカリン。確かに狭い宿舎なのだろう。部屋数は8部屋しかない。しかし、

スル・メは牢屋だ。全5人で、商人と調達組は広場でテントを広げている。だから学がない俺でもわかるぞ。


「カリン。部屋は半分空いているのだ。なぜ一緒の部屋に入るのだ!」


「…………が……い。」


…う〜ん。狭い部屋で両手を広げてアピールされても、

言葉が通じないから、わからない。小さな窓からの隙間風と沈黙が妙に今の状況に馴染んでいる。


「我慢はするが、聖剣を抜く可能性もあるんだ。怖くないのかカリン。」


「……は……ぶ。」


「了解です。」


狭い部屋の狭いベッド。しかし、俺一人なら狭くも感じない。


なぜこうなった。


俺はカリンと共にベッドに入ったがシングルサイズでシングルで寝ている。カリンは…なぜか俺の頭を、アレに乗せて横に寝ている。


これは…最高品質のカリン枕だ。

おそらく俺は…人間として成長している。あの詐欺女神に造られた歪んだ愛情表現。それが普通だと思っていた。しかし、この膨らみがもたらす、柔かき愛情は、聖剣の抜き差し以前に狭い部屋で、安らぎを与えてくれた。だが、ずっと胸に俺の頭を乗せているのは疲れるだろう。カリンは寝ながら少しずつ体勢を変えて最終的に俺の隣りで寝ていた。おかげで…


聖剣の抜き差しのタイミングがきたのかきていないのか。その疑惑に真意に向き合い…寝れぬまま、朝が来てしまった。


いつか行くであろう。マグレシアンさんとの約束の場所、聖剣に守られた街。さぞ立派な、聖剣なのだろうな。俺はまだ聖剣の未熟さを痛感してばかりだ。


訪れた際は、是非に互いの聖剣を輝かせあいたいものだ。

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