お礼
「どれが良いかな。」
俺はメアリーさんから金貨1枚を渡された。元々、スル・メの最後の隠し財産の金貨1枚なのだが、森エルフの娘の最低限の装備は揃えなさいと渡されたお金だ。
スル・メの隠し財産って、俺の倒した魔物の魔石の利益だから…もう俺のお金じゃないかな。
難しい考えはできないが、この金貨はなぜか遠慮せずに使えると思ってしまった。
武器商人の往来も、勿論あるのだが、在庫は旅商人のためにあまり多くはない。限られた条件で、果たして彼女の武器を購入できれば良いのだが。
彼女は俺の手を握りながら、露店を見ている。エルフ族は長寿と聞いたがこれはまるで親子の買い物だ。
でも言葉がわからないから彼女に選んでもらうしかない。金貨1枚が予算だ。
森エルフは狩猟族なのだろう。俺は短剣、もしくは弓が候補かと思ったのだが…
まさか、棍棒だとは…
彼女は俺に自分で選べと言われると、樽に纏められている剣や槍をかき分け黒みがかった棍棒を手にした。
悪くない。実際、魔物との戦闘で剣や槍は弾かれてしまう事があるし、やみくもに斬りつけても深手を与える事は難しい。ある程度の技量も必要だ。
え?二棍流なの。
棍棒を二本握る彼女。二刀流は見た事はあるが…
マグレシアンさんの鍛冶屋は殆ど剣だったし、偶に槍やメイスも制作していたけど、棍棒はゴブリンやオークなどの魔物が持っているが…二本持ちは初めて見た。
だろうね。露店の店主も本当に棍棒を二本装備するのか確認している。
まあ俺を見ても、何も答えれないから…
うん。大事だね。彼女は鉄製のレガースも購入した。
脛を守る部分に緑色の石が装飾されていた。私の目と同じ色。そんな事を伝えたいのだろう。何でも自分の目とレガースの石を指差していた。
「嬢ちゃん。そいつはな、リーフバタフライの魔石を付与しているんだ。頑丈だが驚く程、軽いんだぜ。」
なるほど、魔石品か。どうりで銀貨2枚しか残らないわけだ。でも良いレガース何じゃないかな?
俺は皮の穴開き靴だし。羨ましいな。
銀貨2枚…彼女は計算が出来るのだろうか。銀貨2枚で皮の胸当てくらいは欲しいだろうな。
君は…優しい人なんだな。
彼女は銀貨2枚で花輪の髪飾りを購入した。正確には生花ではなく巧妙に模造した花細工の髪飾りだ。
皮の胸当てが良かったと思うけど…女の子だ。花飾りも決して間違いではない。
とりあえず、メアリーさんに見せて報告だ。スル・メみたいに横領して下僕以下にはなりたくないからな。
「どういう…コンセプトかな。姫様はわかるかな?」
俺達の前で首をふる姫様と表情が硬い、メアリーさん。
まず棍棒2つは何?と言われた。俺は彼女の意思を優先したと答えた。
「棍棒ひとつと、小さなラウンドタイプの盾は駄目だったのかしら?」
(俺もそう思います。)
「レガースは上等ね。でも胸当ては買わなかったのはなぜかな?」
レガースを褒められた森エルフの彼女は嬉しそうに、花細工の髪飾りを指差した。メアリーさんは、それが欲しくて皮の胸当ては買わなかったのね。と質問すると、森エルフの彼女は何度も頷いた。
言葉が通じなくても、意思の疎通はできている。
「………で!何で貴方が髪飾りを頭にのせているのよ。この鼻垂れの薬草殺し。」
「わかりません!」
彼女はメアリーさんが怒りだしたのを見て小さく飛び跳ねて笑っていた。さすがのメアリーさんも彼女を見て、仕草が可愛かったのだろうか、怒るのをやめてしまった。
「花細工の髪飾りを装着する28歳。詐欺被害者…」
メアリーさんは、確かに面白いと思い、無駄遣いの罪から許してくれた。
そして姫様の言葉で彼女の真意がわかった。
「たぶん…森エルフさんのなかでは、カイロ様にお礼をしたつもりなんですよ。買いもをお付き合いしてくれたお礼だと思いますよ。」
森エルフは姫様の言葉でまた小さく飛び跳ねた。さすがの姫様も可愛らしさに、抱きつこうか悩んでいる。俺もあの縦横無尽な頂きに抱きつきたいが…我慢する。
「カイロ…お礼は大事にね。」
「もちろんだ!」
裸に年季の入った腰巻きと穴開きの革靴。さすがに俺も少し物足りなさがあったが頭の花飾りで問題解決だな。




