物資調達
「できるよね。カイロ。」
砦内の宿舎。大して広くもない宿舎のメインホール。
珍しくメアリーさんに名前で呼ばれた。しかし、扱いは何時もと変わらなかった。
「砦への物資を運ぶから貴方は先行して街道付近で魔物を見つけたら排除しなさい。魔石も取り忘れないように。」
昨日集まった人達はどうやら、砦へ物資を運ぶ人達らしい。ゴザス、デラーズ両地域から同時に物資調達をしたかったらしいが、砦側の人数が4人と少ない為、デデさんが護衛役で俺が先行で街道の安全を確保する。そして
片方の地域から順に物資調達するらしい。時間は倍かかってしまうが、調達係りは不満を漏らす事はなかった。
どうやら報酬が良いらしい。更に俺が先行中に倒した魔物の魔石は調達係り達の追加手当てとなる。
だから俺は知らない人達に、ものすごく期待されていた。裸のくせに。良い業物もってんじゃないか。獣より獣臭いな。頭悪そうだな。他にも色々言われたが、期待されているのを感じ俺は、高揚した。
「お前…さっきから何してんだ。」
「護衛です。」
俺は先行走りをした。特別、魔物と遭遇する事もなかったが、街道を走る馬車を見かけた。知った顔の者などいなかったが、以前、メアリーさんと姫様達を助けた時と同じだと思い。俺は自発的に見知らぬ馬車の護衛をしている。
しかし、今回は姫様達の時と違い、馬車側の奴らが偉く好戦的だった。
護衛した馬車は止まり、ニヤついている男達に囲まれてしまった。短剣に剣、斧に弓。様々な武器を俺に向けて距離を詰めてくる。荷台の荷物に腰をかけ、腕組みをしながら俺を見下す、だらしが無い体つきの男。
おそらく、こいつが姫様だ。
俺は見下す姫様を守る為に魔喰らいのマグレシアンを抜刀し囲む男達を牽制した。
「姫様の邪魔をするなら斬る!」
俺の言葉に、男達は「どっから聞きつけたか知らねえがお前も身体目当てのこそ泥だろうが。」と襲いかかってきた。
しかし、弱い者は何を持っても弱い。
魔喰らいのマグレシアンの振り払いの風圧だけで吹き飛んでしまった男達。吹き飛んだ先で何か叫び声を発していたが若干距離があり過ぎて聞き取れなかった。
そして、逃げた。
別に逃げるなら逃げれば良い。目的は姫様の護衛だからな。
俺は魔喰らいのマグレシアンを鞘に納め、姫様に安心の主旨を伝えようと自分なりに笑顔をつくり、近づいた。
どういう事なのだろうか。助けたつもりの姫様は舌打ちをし、馬車の荷台を切り離し馬に乗って俺の眼の前から逃走した。
鞍のない馬に器用に乗る姫様。体つきはだらしないが、
おそらく体幹は強いのだろう。
あれが…馬乗り姫様か。
さすがの俺も、残された荷台をみてどうしたもんかと悩んだ。しかし、詐欺女神に支配されていた頃とは違い、俺は自分で物事の答えを探せる程までに成長していた。
そして導き出した答えは…
「この荷台の荷物が、物資か!」
俺は馬を失った荷台を手押しで引いた。これは皆の助けになると思い走りたい衝動にかられたが、物資とは大事な物だろうと思い自重した。
こういう考えも成長したと思う。
「………………………い。」「………………いや。」
「……………………だ。」「…………………して。」
やっぱり気のせいではないようだ。
この荷台は人語をあやつる。
初めて話す荷台に遭遇したが、俺は成長しているから、
28歳なりに大人の対応をした。
「ゆっくり運びますので、車輪が痛かったら教えて下さい。」
「……………………ないで。」
「道具が無くて大した役にも立ちませんが、寒かったら教えて下さい。擦りますので。」
「…………………ください。」
2人きりの会話は何方か片方の話力が尽きると静かな気まずい感じになっていく。
結局、会話は盛り上がらず、荷台からの会話は無くなってしまった。
しばらく歩いたが街道沿いをいくら引き返しても、デデさんが警備する物資調達組と鉢合わせることはなく。
とうとう砦の塁壁が視界に入ってきた。
砦に入り、広場に戻るとメアリーさんが腕組みをしながら俺を睨みつけている。
「おい。薬草殺し。何処に行っていた?」
何処?メアリーさんはふざけているのか。指示通り、先行したのだが。
「ゴザス側に先行しました。」
「逆だ!方向音痴未確認理解力無し確認不足の臭。」
メアリーさんは俺にあだ名を命名するのが、好きなんだな。
その日の晩、殺気と疲労感を両立させた物資調達組から
ひたすら、怒られた。デデさんはデスホーンラビットに運悪くお尻を刺されてしまい。絶叫語に「俺も歳だ。」
と言ってお尻を押さえながら倒れてしまった。調達組はデデさんを順番に背負いながら魔物から逃げ砦まで、戻ってきたそうだ。
実に勇敢な調達組の皆さんだ。




