闇市2
「やるじゃない。スル・メ。」
いきなり資金を手に入れたスル・メにメアリーさんは、手を叩いて喜んでいた。メアリーさんは仕入額0で
利益を出したスル・メをべた褒めしている。
仕入額0の意味がわからないが、寝起きの姫様が、俺の裾を引っ張りながら、おはようございます。利益0さんと挨拶してくれた。
どうやら仕入額0とは俺の事らしい。良くわからないが
少し誇らしく思えた。
ケンモドキスネークって金貨になるのか…
彼奴等は森で偶に見かける。見かけると言っても、木の上から剣のように鋭く俺を突き刺そうとするだけのやつなんだが、勝手に弾かれて消えて魔石になる良くわからないやつなんだが、珍しい魔物なのかな。
どちらにしても、今日も仕入額0をすれば皆、今みたいな笑顔を見せるのだろう。
俺は寝ていないと思いながらも、また森にきた。仕入額0の名に恥じぬ働きをしなければ。
…………
「おう。スル・メ。これで良いか。」
デデは、通行する人達から、何か情報はないかと聞き込みがてらスル・メの商業関連の手伝いをしている。通行人達はデデを見てデラーズ領の騎士様が砦の管理に赴いて来たと勝手に勘違いしカイロが破壊した関所を、通行料が解除されたと思い込んでいる。
結果、デデ騎士団指南役の人望が勝手に上がっていく。
気を良くした通行人達は、警戒心もなく各々が思う事を
ベラベラとデデに話している。
スル・メは魔石闇市を裏メインに、表立った商売を考えている。対して広くはない砦内の広場の中央に、手製の看板を杭に取り付けて地面に打ち込む。
【露店貸出・無料】
〜最低1日砦内に宿泊出来る店主様限定〜
なんてこともない手書きの看板。しかし商売人は食付きながらも無料の罠を探ろうとする。
「借り場無料で宿泊費でピンハネか?。」
スル・メは商人達の質問にひょうひょうと答えていく。
砦内に宿泊だから基本、広場のスペースに素泊まりになる。あくまでも、砦で夜を過ごせるかた。飲料は井戸から各自好きなだけ。しかし、砦側から食料の提供はありません。仲介はしません。
ただ、この砦の噂を旅の先々で広めてほしい。
「なるほど…俺達に宣伝しろと。」
あくまでも、通行人が客で砦は場を設けているだけ。そして、揉め事に関しては、デラーズ王国騎士団から派遣されたデデ騎士団指南役が中心となり対応するが基本は
店と客間での解決してほしい。
スル・メの説明に商人達は、一斉に露店へ向かい各自、準備を始めた。
売れ残っても場所代がタダで仲介料が発生しないなら普段より価格を下げれる。小さな露店市は、たった今から狭い中で価格競争が始まった。
そんな様子を見張り塔から見ているメアリー。活気づく砦内に期待感が膨らんでいく。
王女様は、塁壁の上を歩きながら、木々が揺れ土埃が舞うのを見つけては、
「蛮族の勇者様、頑張ってくださいまし。」と自分なりに声を張り上げ応援していた。
数日後…
俺が魔物から得た魔石は、スル・メの夜な夜な闇市で、面白いように売れた。魔石目当てで数日間、砦内に滞在する商人達も、ちらほら見える。スル・メは売り上げを
見張り塔の地下にある牢屋の一室に綺麗に積み重ね、それを眺めてニヤついている。
「これだから商人は辞められねぇ。」
デデとメアリーは宿舎の一室で見知らぬ集団と、何やら話しをしている。集団と言っても、デラーズ、ゴザスと出身はバラバラのようで初顔合わせの奴らも多く互いに顔色を伺っている。
そして俺は、今日も魔物狩りをしている。そして、ひとつ気がついた。
俺は戦いながら眠る事ができる。デデさんに、戦いながら寝ている時があると相談したら、おそらくその症状は夢遊剣術の可能性があると言われた。
夢遊剣術。千年以上も前に人類と魔族の間が大規模な戦争が勃発した。魔族達は遥か西側の大陸から、この大陸に攻め込んできた。魔族達の操る魔法に人類は女神様の恩恵をもちいて対抗した。しかし、魔法の方が圧倒的に殺しに向いていた。そんな不利な状況で徴兵された農民の中に魔族の首を多数討ち取る青年が現れた。彼は寝る事がなかった。
正確には戦いながら寝ていた。千年前の王政では、徴兵された者は訓練もままならないまま前線へ駆り出される。国の為、故郷の為、大事な人の為に…理由はあれど
戦死率が極めて高い前線での戦。青年は剣技の才があった。それは前線で生き残り続ける彼を見た周りの者達が話した事で、彼自身は止め処無く攻め込んでくる魔族に必死に抵抗していただけ。夜間を好む魔族もいる。いつの間にか彼は睡眠中も剣を振り回し続けた。
そして彼は魔族討伐数の最多の功績とともに剣に取り憑かれた。最期は自身に剣を突き刺し、自らの命を消した。理由は敵も味方も何もかも斬り裂きたい衝動が止まらなかったから。
俺も斬り裂きたい衝動に取り憑かれてしまうのだろうか。もし、取り憑かれたら俺の洗浄で洗い流せたら良いが無理だとは思う。
最安値の人工恩恵スクロールだから。




